第149話 悪役なら新しい住民を迎える
グランディア領。
街の入口。
そこには。
多くの人が集まっていた。
「……。」
俺は少し離れた場所から見る。
人間。
魔族。
獣人。
様々な種族。
以前なら。
考えられない光景だった。
「男爵様。」
リリアが隣に立つ。
「緊張していますか?」
「していない。」
「では。」
「なぜ難しい顔を?」
「……。」
自分でも分からない。
ただ。
この領地に。
新しい人たちが来る。
その責任を感じているだけだ。
「アルベルト様。」
セレナが資料を渡す。
「今回の移住者。」
「元々別々の場所で暮らしていた方々です。」
「理由は。」
「人間と魔族が一緒に暮らせる場所を探していたからです。」
「……。」
簡単なことではない。
文化。
習慣。
考え方。
違う部分は多い。
しかし。
「だから。」
「話し合う。」
リリアが微笑む。
「はい。」
歓迎式。
代表者が前へ出る。
魔族の男性。
「アルベルト男爵。」
「受け入れていただきありがとうございます。」
「……。」
「我々は。」
「過去。」
「人間の国では居場所がありませんでした。」
「……。」
「ですが。」
「この領地では。」
「新しく始められると思っています。」
俺は少し考える。
「一つだけ。」
相手が緊張する。
「?」
「ここでは。」
「種族で判断しない。」
「人間だから。」
「魔族だから。」
「それで扱いを変えない。」
「……。」
「問題があれば。」
「話す。」
「それだけだ。」
男性は。
深く頭を下げた。
「ありがとうございます。」
その後。
街を案内する。
住居。
仕事。
学校。
少しずつ。
新しい生活が始まる。
しかし。
当然。
問題も起きる。
「男爵様。」
翌日。
報告。
「小さな争いがありました。」
「原因は。」
「食文化の違いです。」
「……。」
思ったより。
平和的だった。
「大きな問題ではありません。」
セレナが言う。
「ですが。」
「最初だからこそ。」
「放置すると大きくなります。」
「……。」
現場へ行く。
人間側。
魔族側。
両方が不満を言う。
「昔からこうだった。」
「いや。」
「こちらでは普通だ。」
聞く。
両方。
最後まで。
「……。」
「つまり。」
「どちらも。」
「自分が普通だと思っているだけか。」
沈黙。
「なら。」
「新しい普通を作ればいい。」
「……。」
全員を見る。
「どちらかが我慢するんじゃない。」
「互いに合わせる。」
「それが。」
「一緒に暮らすということだ。」
数日後。
問題は解決した。
「男爵様。」
リリアが言う。
「また解決しましたね。」
「偶然だ。」
「……。」
絶対に違うという顔。
夜。
屋敷。
庭。
「……。」
静かだ。
しかし。
遠くから。
街の声が聞こえる。
人間。
魔族。
笑い声。
「……。」
昔。
悪役になろうとしていた自分が。
今。
こんな場所を作っている。
不思議だった。
その時。
空から。
一通の手紙。
「……。」
嫌な予感。
開く。
『王国より』
『グランディア領を』
『新たな国際交流都市として認定したい』
「……。」
俺は空を見る。
「領地が。」
「勝手に大きくなっていく。」
リリアが笑う。
「男爵様のせいですね。」
「……。」
否定できなかった。
第149話を読んでいただきありがとうございます!
今回はグランディア領が、人間と魔族が共に暮らす場所として成長していく回でした。
アルベルトは本人の意識とは関係なく、世界の変化を「制度」ではなく「日常」から作っています。
次回、国際交流都市となったグランディア領で新たな展開が始まります!




