第147話 悪役なら変わった領地を見る
グランディア領。
朝。
「……。」
街へ出る。
珍しいことだ。
昔の俺なら。
必要がなければ屋敷から出なかった。
しかし。
今は。
「男爵様!」
「ありがとうございます!」
「魔族の商店が増えて便利になりました!」
声をかけられる。
「……。」
慣れない。
未だに。
「人気者ですね。」
リリアが笑う。
「違う。」
「?」
「俺はただ。」
「問題を解決しただけだ。」
「それを。」
「皆さんは感謝しているんですよ。」
セレナが言う。
街を見る。
以前。
人間だけだった場所。
今は。
魔族の職人。
人間の商人。
獣人の旅人。
普通に暮らしている。
「……。」
不思議だ。
数年前。
こんな光景を想像したことはなかった。
「男爵様。」
小さな子供が近付いてくる。
「これ。」
渡されたもの。
手作りの飾り。
「ありがとう。」
受け取る。
子供は笑う。
それだけ。
なのに。
なぜか。
少し嬉しかった。
「……。」
リリアが微笑む。
「今。」
「笑いました?」
「気のせいだ。」
「はい。」
絶対に信じていない顔。
その後。
領主館。
「報告があります。」
執事が書類を持ってくる。
「魔族交流学校。」
「建設予定地が決まりました。」
「……。」
また。
新しい変化。
「問題は。」
「あります。」
セレナが答える。
「反対する者も少数ですが存在します。」
「……。」
昔なら。
面倒だと思った。
今も。
面倒ではある。
しかし。
「話を聞く。」
リリアが驚く。
「男爵様から?」
「ああ。」
「昔なら。」
「力で終わらせていましたよね。」
「……。」
否定できない。
だが。
「それでは。」
「また同じことになる。」
セレナが微笑む。
「変わりましたね。」
「……。」
午後。
反対派の住民と話す。
「魔族を信用できない。」
「昔。」
「家族を失った。」
「……。」
その気持ちを。
否定することはできない。
「怖いなら。」
「無理に好きになる必要はない。」
相手が顔を上げる。
「だが。」
「知らないまま判断するな。」
「……。」
かつて。
俺も。
人と距離を置いていた。
知らないものを避けていた。
「少しずつでいい。」
「それだけだ。」
帰り道。
リリアが言う。
「優しいですね。」
「違う。」
「?」
「必要なことをしただけだ。」
いつもの言葉。
でも。
昔とは違う。
屋敷へ戻る。
庭。
紅茶。
「……。」
静かだ。
今度こそ。
本当に。
そう思った時。
空から。
一羽の鳥が降りてくる。
足には。
王家の紋章。
「……。」
手紙。
開く。
『アルベルト男爵へ』
『王国より相談があります』
「……。」
リリアが覗き込む。
「また事件ですか?」
「……。」
手紙を読む。
『新たな貴族制度改革について』
「……。」
事件ではない。
しかし。
面倒ではある。
「これは。」
「断れないやつですね。」
「……。」
静かな生活。
完全ではない。
でも。
悪くない。
第147話を読んでいただきありがとうございます!
今回は大きな戦いではなく、アルベルトが変えた世界の日常回でした。
以前なら「関わらない」が正解だったアルベルトが、今では「話を聞く」という選択をするようになっています。




