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第146話 悪役なら最後の願いを答える

 王都。


 世界平和記念式典の夜。


 庭園。


 静かな場所。


 俺の手には。


 世界管理システムからの通知。


『あなたは』


『この世界で何を望むのか』


「……。」


 昔なら。


 答えは決まっていた。


 何もいらない。


 誰にも関わらない。


 静かな場所で暮らす。


 それだけ。


 でも。


「男爵様。」


 リリアが隣にいる。


「答え。」


「もう決まっていますよね。」


「……。」


 セレナも微笑む。


「昔のアルベルト様なら。」


「迷わず一人の生活を選んだでしょう。」


「……。」


 否定できない。


 俺は空を見る。


「望み。」


「か。」


 考える。


 名誉。


 権力。


 世界を変える力。


 そんなものはいらない。


 だけど。


「……。」


「平和。」


 口に出す。


 全員が見る。


「意外ですね。」


 リリアが言う。


「違う。」


「?」


「世界全体の話じゃない。」


「……。」


「俺の周りが。」


「安心して暮らせること。」


 それだけ。


 屋敷。


 領地。


 仲間。


 大切な人たち。


「それで十分だ。」


 その瞬間。


 通知が光る。


『回答確認』


『願望内容』


『周囲との共存』


『登録完了』


「……。」


 イリスが読む。


「これは。」


「何だ。」


「世界管理システム上。」


「最も予測困難な願望です。」


「?」


「通常。」


「強大な力を持つ存在は。」


「自分自身のための願いを選択します。」


「しかし。」


「あなたは。」


「自分の世界を選びました。」


「……。」


 意味が分からない。


 ただ。


 それが欲しかった。


 翌日。


 グランディア領へ戻る。


 屋敷。


 いつもの庭。


 紅茶。


 静かな時間。


「……。」


 やっと。


 戻ってきた。


「男爵様。」


「何だ。」


「手紙です。」


 リリアが渡してくる。


「またか。」


 開く。


『新しい魔族交流学校の設立について』


『相談したい』


「……。」


 燃やそうとする。


 しかし。


 止まる。


「……。」


 昔なら。


 間違いなく捨てていた。


 でも。


「分かった。」


 リリアが笑う。


「行くんですか?」


「違う。」


「?」


「話を聞くだけだ。」


「はい。」


 庭を見る。


 静かな生活。


 完全な何もない生活ではない。


 誰かが来る。


 問題が起きる。


 それでも。


 悪くない。


 俺は。


 悪役として生きるつもりだった。


 嫌われるために。


 恐れられるために。


 でも。


 いつの間にか。


 守りたいものができていた。


「……。」


「まあ。」


「悪くない人生だった。」


 その言葉を。


 誰にも聞こえない声で呟いた。

第146話を読んでいただきありがとうございます!


アルベルトが最後に望むものが明らかになりました。


最初は「孤独な静かな生活」を求めていた彼が、今では「大切な人たちと共にある静かな生活」を選ぶようになりました。


次回、最終章へ向けた最後の日常編へ進みます。

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