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第145話 悪役なら世界平和記念式典へ行く

 王都。


 世界平和記念式典。


 ……。


 来てしまった。


「……。」


 俺は会場を見る。


 大勢の人。


 各国の代表。


 報道関係者。


 そして。


「アルベルト男爵!」


「世界を救った英雄!」


「こちらをお願いします!」


「……。」


 帰りたい。


 リリアが隣で笑う。


「顔に出ていますよ。」


「何が。」


「帰りたいって。」


「当然だ。」


「でも。」


「来てくれました。」


「……。」


 確かに。


 昔なら。


 絶対に来なかった。


 しかし。


 今回は。


 断れなかっただけだ。


 ……たぶん。


「男爵様。」


 セレナが声をかける。


「各国の代表が挨拶を希望しています。」


「多いな。」


「世界規模の英雄ですから。」


「違う。」


 俺は否定する。


「俺は。」


「面倒な問題を解決しただけだ。」


 近くにいたカイル王子が笑う。


「それを世界では。」


「英雄と言うんですよ。」


「……。」


 理解できない。


 式典が始まる。


 各国の代表が言葉を述べる。


 人間国家。


 魔族領。


 獣人国家。


 かつて争っていた者たち。


 今は。


 同じ場所にいる。


「不思議ですね。」


 エリシア王女が言う。


「以前なら。」


「考えられなかった光景です。」


「……。」


 俺も見る。


 確かに。


 変わった。


 でも。


 自分が原因だとは思えない。


「アルベルト。」


 レオンハルトが言う。


「一言くらい話せ。」


「断る。」


「もう壇上が用意されている。」


「……。」


 いつの間に。


 逃げ道がない。


 仕方なく。


 壇上へ向かう。


 大勢の視線。


 昔なら。


 耐えられなかったかもしれない。


 しかし。


 今は。


 知っている顔がある。


 リリア。


 セレナ。


 仲間たち。


 領民。


 だから。


 少しだけ。


 口を開く。


「……。」


 静かになる。


「俺は。」


「世界を救おうと思ったわけではない。」


 会場がざわめく。


「ただ。」


「目の前で困っている人間を。」


「放置したくなかっただけだ。」


 沈黙。


「結果として。」


「多くの人間が協力した。」


「それだけだ。」


 俺は下がろうとする。


 しかし。


 会場から。


 拍手。


 一人。


 二人。


 そして。


 全体へ広がる。


「……。」


 意味が分からない。


 リリアが笑う。


「それが。」


「男爵様らしい答えです。」


 式典終了後。


 夜。


 王都の庭園。


 静かな時間。


「珍しいですね。」


 セレナが言う。


「何が。」


「逃げずに最後までいました。」


「……。」


 確かに。


 昔なら。


 途中で帰っていた。


「少し。」


 考える。


「慣れた。」


 リリアが嬉しそうに笑う。


「それだけでも大きな変化です。」


 その時。


 空から。


 一通の光が落ちてくる。


「……。」


 拾う。


 古代文字。


 イリスが反応する。


「これは。」


「何だ。」


「世界管理システムからの最終通知です。」


「……。」


 嫌な予感。


『アルベルト・フォン・グランディアへ』


『あなたの観測を終了します』


「……。」


 続きがある。


『ただし』


『一つだけ確認したいことがあります』


『あなたは』


『この世界で何を望むのか』


「……。」


 俺は空を見る。


 答えは。


 もう決まっていた。

第145話を読んでいただきありがとうございます!


世界平和記念式典で、アルベルトが自分の言葉で想いを語る回でした。


本人は英雄扱いを否定していますが、周囲から見れば「目の前の人を助け続けた結果、世界を変えた存在」になっています。


次回、アルベルトが最後に望むものが明らかになります。

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