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第14話 婚約者候補

王女が帰ってから数日。


 俺はようやく静かな日常を取り戻していた。


「……やっと帰ったか。」


 王族とは二度と関わりたくない。


 悪役としては相性が悪すぎる。


 何を言っても勝手に良い方向へ解釈される。


「坊ちゃま。」


 レオンが珍しく険しい表情で部屋へ入ってきた。


「少々、問題が起きております。」


「今度は何だ。」


「王都で噂が広まっております。」


「どうせまたくだらない話だろ。」


「……その。」


 レオンは少し言いづらそうに咳払いをした。


「坊ちゃまと王女殿下が婚約されるのではないか、と。」


「…………。」


 俺は数秒固まった。


「は?」


「舞踏会でのお話、王女殿下のご訪問、それらを見た貴族たちが……。」


「待て。」


「はい。」


「なんでそうなる。」


「私にも分かりません。」


「分からないなら言うな。」


 頭が痛い。


 俺は王女を追い返そうとした。


 冷たく接した。


 断った。


 それなのに。


 婚約者候補?


「最悪だ……。」


 その時だった。


 コンコン、と部屋を叩く音が響く。


「坊ちゃま。」


 執事だった。


「王城より使者がお見えです。」


「またか。」


「はい。」


 嫌な予感しかしない。


 使者が部屋へ入り、一通の封筒を差し出した。


「王女殿下からです。」


 また手紙だった。


 開く。


『先日はありがとうございました。


 また近いうちにお会いできれば嬉しいです。


 それと、王都では少し変な噂が流れているようですが、私はあまり気にしておりません。


 どうか男爵様もお気になさらないでください。』


「…………。」


 最後まで読む。


『ですが。


 少しだけ、悪い気はしませんでした。』


「……。」


 無言で手紙を閉じた。


「坊ちゃま?」


「レオン。」


「はい。」


「帰る。」


「領地へ、ですか?」


「ああ。」


 もう十分だ。


 これ以上王都にいたら、何を言われるか分からない。


「すぐ馬車を用意しろ。」


「承知いたしました。」


 その日の午後。


 アルベルト一行は急いで王都を出発した。


 一方その頃。


 王城では。


「殿下。」


 侍女が小さく笑う。


「男爵様、王都を出られたそうですよ。」


「そうですか。」


 王女は窓の外を眺めながら微笑んだ。


「逃げられてしまいましたね。」


「追いかけますか?」


「いいえ。」


 王女は首を横に振る。


「またお会いできます。」


 その笑顔には、不思議と確信があった。

第14話を読んでいただきありがとうございます!


王都編はひとまず一区切りとなります。


少しずつ登場人物も増え、アルベルトの勘違いは領地の外へまで広がり始めました。


「面白い!」「続きが気になる!」と思っていただけましたら、ぜひブックマーク、★★★★★評価で応援していただけると嬉しいです!


感想やレビューもお待ちしております!


次回もよろしくお願いいたします!

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