第139話 悪役なら自分自身と向き合う
白い空間。
世界の境界。
観測者の少女が。
俺たちの前に立っていた。
「最後の試験です。」
「……。」
嫌な予感しかしない。
「今度は。」
「何をする。」
少女は答える。
「あなた自身を見る試験です。」
「?」
空間が変化する。
目の前に。
巨大な鏡が現れる。
「これは。」
リリアが見る。
「鏡……?」
「はい。」
観測者は頷く。
「映るのは。」
「あなたが本当に望んでいる未来です。」
「……。」
鏡を見る。
そこに映ったのは。
屋敷。
庭。
静かな時間。
誰も来ない。
何も起きない。
一人で過ごす生活。
「……。」
これだ。
最初から望んでいたもの。
静かな生活。
邪魔されない日々。
「選んでください。」
観測者が言う。
「この未来を。」
「あなた一人で手に入れることができます。」
「……。」
「世界の問題。」
「全てから離れることができます。」
リリアが驚く。
「男爵様……。」
鏡の中。
理想の生活。
誰にも邪魔されない。
何も起きない。
完璧。
「……。」
しかし。
何か違う。
静かすぎる。
「アルベルト。」
声。
振り返る。
リリア。
セレナ。
レオンハルト。
みんながいる。
「これは。」
観測者が聞く。
「あなたが望んだものでは?」
「……。」
確かに。
昔なら。
これを選んだ。
面倒なことから逃げる。
誰とも関わらない。
それが一番楽だった。
でも。
「違う。」
観測者が少し驚く。
「なぜですか?」
「静かな生活は。」
「欲しい。」
「……。」
「でも。」
鏡を見る。
「誰もいない場所は。」
「もう違う。」
リリアが目を見開く。
「男爵様……。」
「騒がしい。」
「面倒だ。」
「問題ばかり起きる。」
「……。」
「でも。」
「悪くない。」
観測者は黙る。
「あなたは。」
「孤独を望んでいた。」
「はい。」
「しかし。」
「今は違う。」
鏡が砕ける。
代わりに。
屋敷の庭。
仲間たちと過ごす未来が映る。
「これが。」
「今の俺の望みだ。」
少女は微笑む。
「合格です。」
「……。」
「あなたは。」
「自分の願いを否定しなかった。」
「でも。」
「変化したことも認めた。」
イリスが呟く。
「未来変動。」
「最大値。」
「……。」
観測者は空を見る。
「この世界は。」
「あなたを中心に変わった。」
「ですが。」
「あなた自身も。」
「この世界によって変わった。」
「……。」
その時。
世界の境界に亀裂が走る。
「?」
観測者の表情が変わる。
「これは。」
「予定外です。」
「何だ。」
少女は答えない。
イリスが警告する。
「危険。」
「未知存在。」
「接近。」
白い空間の向こう。
巨大な影。
今までの存在とは違う。
「観測者。」
少女が初めて警戒する。
「あなたたちが来るとは。」
「……。」
声。
「世界を観測する者よ。」
「そろそろ。」
「観測ではなく。」
「管理を始める時だ。」
観測者が呟く。
「管理者……。」
「まさか。」
世界の外側。
さらに上位の存在。
「アルベルト。」
「最後の試験は。」
「変更されました。」
「……。」
「今度は。」
「この世界を守るかどうか。」
俺はため息を吐く。
「またか。」
そして。
新たな敵が現れた。
第139話を読んでいただきありがとうございます!
アルベルト自身の試験回でした。
最初に望んでいた「完全な静かな生活」と、今のアルベルトが大切にしている「人との繋がり」が対比されました。
そして、世界外側編はさらに大きな存在へ進みます。




