第138話 悪役なら世界外側の侵入者と戦う
白い空間。
世界と世界の境界。
そこに。
巨大な影が現れた。
「……。」
見上げる。
大きすぎる。
山。
いや。
それ以上。
「これは……。」
レオンハルトが息を呑む。
「存在そのものが魔力なのか。」
イリスが分析する。
「名称。」
「未登録。」
「世界外部生命体。」
「危険度。」
「測定不能。」
「……。」
観測者の少女は。
少し離れた場所で見ている。
「これが。」
「次の試験です。」
「試験?」
リリアが振り返る。
「こんなものを放っておいて?」
少女は首を傾げる。
「はい。」
「世界が。」
「自分たちの力で守れるか。」
「それを見るためです。」
「……。」
セレナが杖を握る。
「随分と。」
「厳しい試験ですね。」
観測者は笑う。
「世界とは。」
「そういうものです。」
巨大な存在が動く。
空間が揺れる。
「来ます!」
イリスが叫ぶ。
全員が構える。
魔王軍。
王国騎士。
世界共同調査団。
全ての力を合わせる。
しかし。
攻撃は。
届かない。
「……。」
巨大な存在の表面。
傷一つない。
「効いていない?」
カイル王子が呟く。
エリシア王女も驚く。
「これほどの力が……。」
「無意味なのですか。」
観測者が言う。
「この存在は。」
「通常の戦闘では倒せません。」
「……。」
なら。
方法を変える。
「イリス。」
「はい。」
「解析。」
「開始します。」
イリスが目を閉じる。
「……。」
「存在構造。」
「確認。」
「この生命体は。」
「敵意によって動いていません。」
「?」
「目的。」
「侵食。」
「ただ。」
「存在しているだけです。」
「……。」
つまり。
こいつにとっては。
俺たちが邪魔なだけ。
「なら。」
「戦う必要はない。」
全員が見る。
「え?」
リリアが驚く。
「倒せないなら。」
「別の方法を探す。」
俺は巨大な存在を見る。
「お前は。」
「何を求めている。」
返事はない。
しかし。
魔力の流れが変わる。
イリスが反応する。
「反応あり。」
「意思疎通の可能性。」
「……。」
観測者が初めて驚いた。
「まさか。」
「攻撃ではなく。」
「対話を選ぶのですか。」
「……。」
「その方が早い。」
沈黙。
巨大な存在へ。
魔力を送る。
「敵じゃない。」
「ここにいる人間も。」
「魔族も。」
「ただ暮らしているだけだ。」
巨大な瞳が開く。
世界全体を見下ろすような目。
そして。
声が響いた。
『……』
『小さき存在。』
『なぜ恐れない。』
「面倒だからだ。」
『……。』
「戦うより。」
「話した方が早い。」
巨大な存在。
しばらく沈黙。
そして。
『理解不能。』
『しかし。』
『興味を持った。』
空間の揺れが止まる。
観測者が呟く。
「また。」
「予測外。」
「……。」
リリアが笑う。
「男爵様らしいですね。」
「何が。」
「世界最大級の存在にも。」
「いつも通りです。」
しかし。
巨大な存在は言う。
『我は。』
『この世界を観測する。』
『だが。』
『一つ確認したい。』
「何だ。」
『なぜ。』
『お前は世界を救っても。』
『何も望まない。』
「……。」
また。
同じ質問。
俺は答える。
「帰りたい場所があるからだ。」
「……。」
『理解した。』
『この世界は。』
『面白い。』
世界外側から来た存在は。
敵ではなく。
新たな関係を選んだ。
しかし。
観測者は。
まだ終わりを告げていなかった。
「最後の試験があります。」
「……。」
俺はため息を吐く。
「まだあるのか。」
「はい。」
少女は微笑む。
「あなた自身の試験です。」
第138話を読んでいただきありがとうございます!
世界外側から来た存在との遭遇でした。
圧倒的な力を持つ相手に対して、アルベルトはいつものように「倒す」ではなく「解決する」道を選択しました。
次回、観測者が用意する最後の試験へ進みます!




