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第130話 悪役なら静かな生活を始めたい

 グランディア領。


 久しぶりの屋敷。


 庭。


 紅茶。


 誰にも呼ばれない時間。


「……。」


 完璧だ。


 これだ。


 俺が求めていたもの。


「男爵様。」


「……。」


 振り返る。


 リリア。


「なぜいる。」


「侍女ですから。」


「……。」


 隣には。


「私もいますよ。」


 セレナ。


「なぜ。」


「魔法研究の報告です。」


「屋敷でする必要はあるのか。」


「あります。」


 即答。


「……。」


 静かな生活。


 開始数分で終了。


 しかし。


 以前ほど。


 嫌ではなかった。


「アルベルト様。」


 窓の外。


 領民たちがいる。


「最近。」


「街の様子が変わりましたね。」


 リリアが言う。


「何が。」


「魔族の方々が来るようになりました。」


「……。」


 世界連合の影響。


 人間と魔族の交流。


 少しずつ。


 日常になっている。


「最初は。」


「怖がっていた人もいました。」


 セレナが続ける。


「でも。」


「今では一緒に働いています。」


「……。」


 俺は庭を見る。


 魔族の商人。


 人間の職人。


 普通に話している。


「不思議ですね。」


 リリアが笑う。


「何が。」


「男爵様が始めたことなのに。」


「本人が一番興味なさそうです。」


「……。」


 否定できない。


 俺はただ。


 問題を片付けただけだ。


 その時。


 屋敷の門が開く。


「アルベルト!」


 声。


「……。」


 嫌な予感。


 入ってきたのは。


 魔王レオンハルト。


「なぜいる。」


「遊びに来た。」


「帰れ。」


「冷たいな。」


「普通だ。」


 さらに。


「失礼します。」


 カイル王子。


「……。」


「お前もか。」


「外交の相談です。」


「……。」


 そして。


「こんにちは。」


 エリシア王女。


「……。」


 俺は空を見る。


「これは。」


「静かな生活なのか?」


 リリアが笑う。


「賑やかな生活ですね。」


「……。」


 全員が庭に集まる。


 以前なら。


 絶対に避けていた光景。


 しかし。


「アルベルト。」


 魔王が言う。


「世界が変わったな。」


「……。」


 確かに。


 昔。


 悪役として生きるつもりだった。


 嫌われる。


 恐れられる。


 それでいいと思っていた。


 だが。


 今。


 周囲にいる人間を見る。


 信頼。


 笑顔。


 繋がり。


「……。」


 悪くない。


「男爵様?」


 リリアが覗き込む。


「何でもない。」


 いつもの言葉。


 しかし。


 少しだけ。


 声が柔らかかった。


 その日の夜。


 一人で庭に出る。


「静かだ。」


 やっと。


 今度こそ。


 そう思った瞬間。


 空から。


 一通の手紙が落ちてきた。


「……。」


 拾う。


『緊急連絡』


『未知の魔力反応を確認』


「……。」


 俺は空を見る。


「もう少し。」


「静かにできないのか。」


 しかし。


 手紙を燃やすことはしなかった。


 翌朝。


 俺は準備を始める。


 また。


 新しい問題へ向かうために。

第130話を読んでいただきありがとうございます!


世界を救った後のアルベルトの日常回でした。


本人は「静かな生活」を望んでいますが、いつの間にか多くの人が集まる場所になっています。


次回、新たな未知の魔力反応について調査が始まります!

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