第129話 悪役なら世界の未来を選ぶ
古代文明の塔。
崩壊する内部。
暴走した魔法装置。
世界中から集められた魔力が。
制御を失っていた。
「……。」
中心部。
そこへ俺は立っていた。
『警告』
『魔力暴走まで残り時間わずか』
機械のような古代文字が浮かぶ。
「……。」
面倒だ。
本当に。
最後まで。
しかし。
後ろを見る。
リリア。
セレナ。
レオンハルト。
カイル王子。
エリシア王女。
そして。
これまで出会った人たち。
全員が。
俺を待っている。
「アルベルト!」
リリアの声。
「無茶しないでください!」
「……。」
昔なら。
聞かなかった。
一人で終わらせていた。
だが。
今は違う。
「セレナ。」
「はい。」
「魔力の流れを教えろ。」
「!」
セレナが驚く。
「頼ってくれるんですね。」
「必要だからだ。」
「はい。」
彼女は笑う。
「解析します。」
「リリア。」
「結界を維持できるか。」
「もちろんです。」
「レオンハルト。」
「魔力の逆流を頼む。」
「任せろ。」
全員が動く。
以前なら。
俺だけでやろうとしていた。
でも。
今は。
それが一番早い。
アステルは。
少し離れた場所から見ていた。
「……。」
「不思議ですね。」
彼は言う。
「あなたは。」
「最初から変わっていたわけではない。」
「?」
「ただ。」
「出会った人々によって。」
「変わっていった。」
「……。」
否定できない。
「俺は。」
「何も変わっていない。」
「そうですか?」
アステルは微笑む。
「昔のあなたなら。」
「この場所で。」
「全てを壊して終わらせたでしょう。」
「……。」
そうかもしれない。
「でも。」
「今のあなたは。」
「壊す前に。」
「残すものを考えている。」
「……。」
魔法装置。
中心部。
最後の核。
「見つけた。」
セレナの声。
「ここです!」
「魔力供給を逆転させれば。」
「止められます!」
俺は手を伸ばす。
しかし。
最後の瞬間。
黒い魔力が残っていた。
「……。」
アステルの計画。
最後の抵抗。
「まだ。」
「終わっていない。」
アステルが呟く。
「この世界は。」
「また争うかもしれない。」
「……。」
「また。」
「同じ失敗をするかもしれない。」
俺は答える。
「そうだろうな。」
「……。」
アステルが驚く。
「認めるのですか?」
「ああ。」
「人間も。」
「魔族も。」
「間違える。」
「でも。」
魔力核へ触れる。
「だから。」
「変わる意味がある。」
「……。」
白い光。
黒い魔力を包む。
「完了。」
世界を覆っていた魔法陣が。
少しずつ消えていく。
空が晴れる。
長い戦いが。
終わった。
「……。」
アステルは空を見る。
「本当に。」
「変わるのですね。」
「知らない。」
「……。」
「でも。」
「変わろうとする奴はいる。」
アステルは目を閉じる。
「なら。」
「この世界を。」
「もう少し見てみたい。」
こうして。
世界を作り変えようとした計画は。
終わった。
しかし。
翌日。
王城。
新聞。
『世界を救った英雄』
『アルベルト男爵』
「……。」
俺は新聞を置く。
「またか。」
リリアが笑う。
「今度は世界規模ですよ。」
「最悪だ。」
セレナも微笑む。
「でも。」
「帰る場所はあります。」
「……。」
窓の外。
自分の領地。
静かな屋敷。
少しだけ。
悪くないと思った。
その時。
新しい手紙が届く。
『アルベルト男爵へ』
『新たな問題について相談したい』
「……。」
俺は手紙を閉じる。
「まだ終わらないのか。」
第129話を読んでいただきありがとうございます!
世界規模の事件がついに決着しました。
アルベルトは最後まで「静かな生活のため」と言い続けていますが、周囲との関係によって少しずつ変化していました。
次回、世界を救った後の新たな日常編へ進みます!




