第128話 悪役なら理想を否定する
古代文明の塔。
世界の未来をかけた戦い。
アステル。
世界を苦しみから救おうとする者。
そして。
俺。
静かな生活を望むだけの男。
「……。」
白い魔力が迫る。
アステルの攻撃。
正確。
無駄がない。
「あなたの力は。」
アステルが言う。
「本当に不思議だ。」
「?」
「破壊するためではない。」
「支配するためでもない。」
「ただ。」
「守るために使われている。」
「……。」
俺は攻撃を避ける。
「それが。」
「理解できない。」
「なぜです?」
「力を持つ者なら。」
「もっと大きな目的を持つべきだ。」
「……。」
また。
同じ話だ。
「お前は。」
「大きなものばかり見ている。」
「……。」
「世界。」
「未来。」
「理想。」
「でも。」
俺は拳を握る。
「そこにいる人間を見ていない。」
アステルの魔法を打ち消す。
「例えば。」
「お前が救おうとしている世界で。」
「一人の人間が。」
「今。」
「笑っているのか。」
「……。」
アステルが止まる。
「何を。」
「言っている。」
「苦しみをなくせば。」
「皆が幸せになる。」
「本当に?」
俺は聞く。
「悲しみも。」
「失敗も。」
「悩みも。」
「全部消して。」
「それを幸せと言えるのか。」
「……。」
アステルは答えない。
その瞬間。
塔の外から声が響く。
『アルベルト男爵!』
通信魔法。
リリア。
『世界各国の魔力供給が安定しました!』
『でも……』
『一つ問題があります!』
「何だ。」
『魔法装置を止めるには。』
『中心にいる人が選ばなければいけません!』
「……。」
つまり。
アステル自身が。
止める必要がある。
「アステル。」
俺は見る。
「聞いたか。」
「……。」
アステルは静かに笑った。
「やはり。」
「あなたは甘い。」
「?」
「私に選択を求める。」
「倒せばいいものを。」
「……。」
「それが。」
「あなたの弱さです。」
「違う。」
「?」
「それが。」
「俺のやり方だ。」
アステルの表情が揺れる。
「……。」
そして。
魔法生命体が暴走する。
「アステル!」
塔全体が崩れ始める。
「危険です!」
セレナの声。
「全員避難を!」
しかし。
アステルは動かない。
「私は。」
「間違っていたのか。」
「……。」
俺は答える。
「知らない。」
「え?」
「お前が考えたこと全部が間違いとは思わない。」
「……。」
「苦しむ人を減らしたい。」
「その気持ちは。」
「間違っていない。」
アステルを見る。
「でも。」
「方法が違う。」
「……。」
沈黙。
アステルは目を閉じる。
「あなたは。」
「本当に。」
「変な人ですね。」
「よく言われる。」
「……。」
初めて。
アステルが少し笑った。
「なら。」
「最後の判断を。」
「あなたに任せます。」
白い魔力が消える。
残ったのは。
暴走する魔法装置。
「……。」
俺は中心へ向かう。
最後の役目。
「男爵様!」
リリアが叫ぶ。
「戻ってきてください!」
「……。」
俺は振り返る。
「分かっている。」
「?」
「帰る。」
「……。」
「静かな生活に戻るためにな。」
そして。
世界を変える魔法装置へ。
最後の一歩を踏み出した。
第128話を読んでいただきありがとうございます!
アステルとの思想の対立が決着へ向かいます。
彼の理想そのものを否定するのではなく、「方法」と「守るもの」の違いが描かれる展開になりました。
次回、世界を変える魔法装置の結末へ進みます。




