第126話 悪役なら真の黒幕と話す
未所属地域。
古代文明の塔。
その最深部。
そこにいた男。
「私は。」
「この世界を救う者です。」
「……。」
俺は黙って見る。
白い服。
穏やかな表情。
今までの敵とは違う。
怒りも。
憎しみもない。
ただ。
自分が正しいと思っている顔。
「名前は。」
男は微笑む。
「アステル。」
「世界再生機関の代表です。」
「……。」
世界再生機関。
聞いたことがない。
「お前が。」
「黒魔法を使っていたのか。」
「ああ。」
あっさり認めた。
「しかし。」
「誤解しないでほしい。」
「私は破壊しているのではない。」
「救っているのです。」
「……。」
また。
同じだ。
「何が目的だ。」
アステルは塔の中心を見る。
巨大な魔法装置。
「この世界は。」
「何度も失敗してきました。」
「戦争。」
「差別。」
「争い。」
「それを繰り返している。」
「だから。」
「一度。」
「全てを作り直す。」
「……。」
リリアが険しい顔になる。
「作り直すって……。」
「人々の意思を消すということですか?」
アステルは首を振る。
「違います。」
「苦しみを感じない世界にするだけです。」
「……。」
セレナが言う。
「それは。」
「自由を奪うことでは?」
「自由。」
アステルは少し笑う。
「人間は。」
「自由があるから苦しむ。」
「なら。」
「苦しむ原因を消せばいい。」
「……。」
なるほど。
今までの敵より。
厄介だ。
本人は本気で救おうとしている。
「アルベルト。」
魔王レオンハルトが言う。
「どうする。」
「……。」
俺は塔を見る。
巨大な魔法陣。
世界中から集めた魔力。
「止める。」
アステルが少し驚く。
「なぜです?」
「あなたも。」
「苦しむ人を減らしたいのでしょう?」
「……。」
「なら。」
「同じ目的ではありませんか。」
「違う。」
俺は答える。
「お前は。」
「人を見ていない。」
「……。」
「世界。」
「未来。」
「そういう大きなものばかり見ている。」
アステルは黙る。
「でも。」
「目の前にいる人間を。」
「どうするか。」
「それを決めていない。」
「……。」
アステルの表情が少し変わる。
「あなたは。」
「不思議ですね。」
「?」
「力を持っているのに。」
「世界など変えようとしない。」
「……。」
「ただ。」
「自分の周りを守っている。」
「それが。」
「結果的に世界を変えている。」
「……。」
意味が分からない。
「止める。」
俺は魔法装置を見る。
「この魔法陣は。」
「壊す。」
アステルは悲しそうに笑った。
「残念です。」
「あなたなら。」
「理解してくれると思っていました。」
「……。」
塔全体が揺れる。
「なら。」
「あなた自身を使って。」
「世界を救います。」
「……。」
魔法陣が光る。
黒い魔力。
白い魔力。
両方が混ざる。
「アルベルト!」
リリアが叫ぶ。
「来ます!」
アステルの背後。
巨大な魔法生命体が現れる。
「これは。」
セレナが息を呑む。
「世界の魔力を集めた存在……。」
「……。」
また。
巨大な敵。
俺はため息を吐く。
「本当に。」
「最後まで面倒だな。」
アステルは笑う。
「始めましょう。」
「世界の未来を決める戦いを。」
最終決戦の幕が。
上がった。
第126話を読んでいただきありがとうございます!
ついに真の黒幕、アステルの目的が明らかになりました。
彼は単純な悪ではなく、「苦しみのない世界」を作ろうとする存在。
アルベルトの「目の前の人を守る」という考えと、正面からぶつかります。
次回、世界の未来をかけた戦いが始まります!




