第119話 悪役なら隣国の王族を困らせる
王城。
応接室。
隣国から来た使者。
その前に。
俺は座っていた。
「……。」
嫌な予感しかしない。
なぜ。
隣国との会談に。
俺がいるのか。
「アルベルト男爵。」
使者が頭を下げる。
「お会いできて光栄です。」
「そうか。」
終わり。
俺は紅茶を見る。
帰りたい。
しかし。
「今回。」
「我が国は正式な要請があります。」
「……。」
「あなたとの同盟関係を築きたい。」
「断る。」
即答。
部屋が静まる。
「……。」
リリアが小声で言う。
「まだ内容を聞いていません。」
「必要ない。」
「なぜですか?」
「面倒そうだからだ。」
セレナが額に手を当てる。
「判断が早すぎます。」
使者は少し驚いた後。
笑った。
「噂通りですね。」
「?」
「普通なら。」
「自分を良く見せようと交渉するところです。」
「ですが。」
「あなたは全く取り繕わない。」
「……。」
褒められている。
違う。
ただ面倒なだけだ。
「内容を聞く。」
仕方なく。
使者は書類を広げた。
「我が国では。」
「魔族との関係改善。」
「そして王国の改革。」
「その中心人物であるあなたに。」
「協力を求めたい。」
「……。」
なるほど。
狙いは。
俺ではなく。
変化した王国そのものか。
「なぜ俺だ。」
使者は答える。
「あなたが。」
「人間と魔族の対立を終わらせるきっかけになったからです。」
「……。」
違う。
俺はただ。
面倒な問題を片付けただけだ。
その時。
隣国の王子が部屋へ入ってきた。
「失礼する。」
若い男。
堂々とした雰囲気。
「私は第一王子。」
「カイル・フォン・レイヴェル。」
「アルベルト男爵。」
「直接話したかった。」
「……。」
王子。
嫌なタイプだ。
真面目そう。
つまり。
面倒な話を長くするタイプ。
「一つ聞きたい。」
カイル王子が言う。
「あなたは。」
「本当に国を変えるつもりなのか?」
「……。」
質問の意味が分からない。
「違う。」
即答。
王子が目を細める。
「では。」
「なぜ?」
「人間と魔族のために動いた?」
「……。」
少し考える。
「邪魔だったからだ。」
「邪魔?」
「争いがあると。」
「静かに暮らせない。」
沈黙。
王子は。
突然笑った。
「なるほど。」
「面白い人だ。」
「……。」
リリアが呟く。
「また好印象になっています。」
「なぜだ。」
「分かりません……。」
会談は続いた。
しかし。
途中で。
俺は気付く。
隣国の資料。
経済。
軍事。
魔法技術。
「……。」
「問題がある。」
全員が見る。
「何ですか?」
「この条約。」
「隣国側が不利すぎる。」
「え?」
カイル王子が驚く。
「こちらは利益を得る内容になっています。」
「だが。」
「長期的には。」
「隣国が反発する。」
「……。」
「それでは。」
「同盟ではなく支配だ。」
使者たちは黙る。
しばらくして。
カイル王子が頭を下げた。
「ありがとうございます。」
「修正します。」
「……。」
まただ。
普通に指摘しただけなのに。
評価される。
その夜。
王城。
国王が笑っていた。
「アルベルト。」
「また隣国から高評価を受けたな。」
「……。」
「なぜだ。」
国王は答える。
「君が。」
「自分の利益より。」
「相手との関係を見ているからだろう。」
「違う。」
「?」
「面倒な争いを避けたいだけだ。」
国王は笑う。
「それを。」
「多くの者はできないのだ。」
「……。」
翌朝。
さらに新しい知らせ。
『隣国第二王女が来訪予定』
「……。」
俺は手紙を見る。
「今度は王女か。」
静かな生活。
また遠ざかった。
第119話を読んでいただきありがとうございます!
外交編が始まりました。
アルベルトは政治的な野心など全くありませんが、相手の立場まで考えた発言が結果的に信頼へ繋がっています。
次回、隣国王女との出会いが描かれます!




