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第113話 悪役なら反対派を敵に回す

 人間魔族交流機関。


 設立から一週間。


 順調……。


 とは言えなかった。


「反対派が動いています。」


 王城の会議室。


 セレナが報告書を見る。


「一部の貴族が。」


「魔族との交流を認めない声明を出しました。」


「……。」


 予想通り。


 人間と魔族。


 長い間争っていた。


 簡単に変わるわけがない。


「なら。」


 俺は書類を置く。


「無視する。」


 全員が止まる。


「え?」


 リリアが驚く。


「話し合わないんですか?」


「必要ない。」


「でも。」


「反対している奴らを説得しても。」


「時間がかかる。」


 悪役なら。


 敵対する。


 嫌われる。


「直接言う。」


 翌日。


 反対派貴族の集会。


 豪華な屋敷。


 集まった貴族たちは。


 俺を見るなり険しい顔をした。


「これはこれは。」


「英雄様がお越しとは。」


 嫌味。


「魔族と手を組むなど。」


「王国の伝統を壊す行為です。」


「……。」


 俺は周囲を見る。


 反対派の資料。


 魔族への偏見。


 昔の戦争記録。


「くだらない。」


「なっ……!」


 空気が凍る。


 よし。


 悪役らしい。


「過去の話だけで。」


「今いる者を判断するのか。」


「しかし!」


 貴族が立ち上がる。


「魔族は危険な存在です!」


「なら。」


 俺は聞く。


「お前は。」


「今の魔族を見たのか。」


「……。」


 沈黙。


「魔王領へ行ったことは?」


「ない。」


「魔族の街を見たことは?」


「ない。」


「魔族と話したことは?」


「……。」


 答えはない。


「なら。」


「知らないものを恐れているだけだ。」


 貴族たちがざわめく。


 その時。


 一人の老人が前へ出た。


「だが。」


「息子を魔族との戦争で失った者もいる。」


「……。」


 空気が変わる。


「簡単に忘れろとは言えん。」


「……。」


 その言葉。


 間違っているとは思わなかった。


 憎しみには理由がある。


「なら。」


 俺は言う。


「忘れなくていい。」


「?」


「過去は残せ。」


「だが。」


「同じことを繰り返す理由にはするな。」


 老人は黙る。


 そして。


「……。」


「若いのに。」


「妙なことを言う。」


「褒めていない。」


「分かっている。」


 その後。


 反対派の一部は態度を変えた。


 完全な賛成ではない。


 しかし。


 話を聞くようになった。


 帰り道。


 リリアが言う。


「男爵様。」


「今日は。」


「少し怖かったです。」


「?」


「怒らせるような言い方でしたから。」


「……。」


 セレナも頷く。


「ですが。」


「必要なことでした。」


「あなた。」


「相手を否定するだけではなく。」


「理由まで見ています。」


「違う。」


「?」


「面倒な争いを減らしたいだけだ。」


 二人は顔を見合わせる。


 そして。


 笑った。


「はい。」


「そういうことにしておきます。」


「……。」


 その夜。


 新たな報告が届く。


『交流機関への襲撃予告』


『差別組織による犯行声明』


「……。」


 俺は手紙を見る。


「今度は。」


「外からか。」


 静かな生活。


 また遠のいた。

第113話を読んでいただきありがとうございます!


王国改革編では、戦いとは違う「人の考えを変える難しさ」が描かれていきます。


アルベルトは相変わらず厳しい言葉を使いますが、相手の事情まで見た上で向き合っています。


次回、交流機関への襲撃事件が始まります。

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