第112話 悪役なら会議を台無しにする
人間魔族交流機関。
名前だけ聞けば。
立派な組織だ。
しかし。
「……。」
俺の目の前には。
大量の書類。
会議予定表。
式典一覧。
「多すぎる。」
即答。
リリアが苦笑する。
「まだ始まったばかりですよ?」
「だからだ。」
「?」
「始まる前から面倒だ。」
セレナは書類を見る。
「確かに。」
「会議が多すぎますね。」
「だろう。」
魔王レオンハルトも頷く。
「魔族側も似たような状況だ。」
「……。」
なら。
悪役らしく。
全部壊す。
「必要ない。」
「え?」
全員が見る。
「この会議。」
「半分にする。」
「待ってください。」
王国側の役人が慌てる。
「伝統的な手続きが……。」
「不要だ。」
「しかし。」
「話し合うために集まっているのに。」
「話す時間より。」
「準備の時間が長い。」
沈黙。
誰も反論できない。
「……。」
リリアが小声で言う。
「また正論ですね。」
「違う。」
「正論です。」
翌日。
最初の合同会議。
人間側。
貴族。
魔族側。
魔族代表。
緊張した空気。
「では。」
「最初の議題。」
「交流祭の日程について――」
「後回しだ。」
俺が言う。
全員が止まる。
「……。」
「まず決めることがある。」
「人間と魔族。」
「互いに何を恐れているか。」
静かになる。
「表面的な祭りや交流より。」
「そこを解決しろ。」
魔族側の代表が少し驚く。
「……。」
「人間は。」
「魔族を恐れている。」
「魔族は。」
「人間を信用していない。」
「なら。」
「先にそこを話せ。」
会議室。
誰も声を出さない。
そして。
一人の魔族代表が口を開く。
「……。」
「確かに。」
「我々は。」
「人間がいつか裏切ると思っている。」
人間側の貴族も続く。
「こちらも。」
「魔族が突然襲ってくるのではと。」
「……。」
少しずつ。
本音が出始める。
数時間後。
予定していた議題は。
ほとんど進まなかった。
しかし。
会議が終わった時。
「今日は。」
魔族代表が言う。
「意味のある時間だった。」
「……。」
役人が記録を見る。
「予定表とは。」
「全然違いますが。」
「問題ない。」
俺は立ち上がる。
「必要なことはした。」
外へ出る。
リリアが追いかける。
「男爵様。」
「はい。」
「今日の会議。」
「成功でしたね。」
「違う。」
「?」
「予定を壊しただけだ。」
セレナが笑う。
「でも。」
「その結果。」
「皆が本音を話せた。」
「……。」
また。
変な評価をされる。
その夜。
王都の新聞。
一面。
『アルベルト男爵』
『形式を打ち破る改革者』
「……。」
新聞を見て。
俺はため息を吐いた。
「悪役になりたいだけなのに。」
しかし。
世界はまた。
別の意味で受け取っていた。
第112話を読んでいただきありがとうございます!
王国改革編、最初の会議回でした。
アルベルトは「面倒な手続きを減らしたい」だけですが、その結果、人間と魔族が本音で話し合うきっかけになります。
次回、交流機関を巡る反対派との対立が始まります。




