第106話 悪役なら古代魔王の復活を見過ごす
魔王城。
緊急会議。
魔族の幹部たちが集まっていた。
「古代魔王の封印が弱まっている。」
魔王レオンハルトが告げる。
「このままでは。」
「数日以内に完全復活する可能性がある。」
室内がざわめく。
「そんな……。」
「数千年前の存在が……。」
「復活すれば。」
ルシアが続ける。
「魔王領だけではありません。」
「世界全体が危険になります。」
「……。」
俺は椅子に座る。
面倒な話だ。
古代魔王。
世界の危機。
勇者みたいな展開。
普通なら。
関わりたくない。
「帰る。」
全員が固まる。
「え?」
リリアが驚く。
「男爵様?」
「俺の仕事は終わった。」
「仮面の男の計画も。」
「魔王領の調査も。」
「ここから先は魔族の問題だ。」
「……。」
悪役なら。
ここで離れる。
そういうものだ。
しかし。
「本当に?」
魔王が聞いた。
「ああ。」
「君が?」
「古代魔王を放置して?」
「……。」
少し沈黙。
「関係ない。」
そう答える。
その時。
「アルベルト様。」
小さな声。
振り返る。
鉱山で助けた魔族の子供だった。
「……。」
「お兄ちゃん。」
「ありがとう。」
「……。」
「魔王様がいなくなったら。」
「この街はどうなるの?」
「……。」
言葉に詰まる。
卑怯だ。
子供を出すのは。
悪役が断れなくなる。
俺はため息を吐いた。
「……。」
「分かった。」
魔王が微笑む。
「ありがとう。」
「勘違いするな。」
「?」
「魔王が復活すると。」
「また騒がしくなる。」
「だから。」
「先に片付けるだけだ。」
リリアが嬉しそうに笑う。
「はい。」
セレナも頷く。
「それで十分です。」
翌日。
魔王軍。
王国騎士団。
王立魔法学院。
合同作戦会議が行われた。
「人間と魔族が協力するとは。」
クラウス隊長が言う。
「昔では考えられませんでしたね。」
魔王も頷く。
「時代が変わる時なのだろう。」
「……。」
俺は地図を見る。
古代魔王の封印地。
世界の地下深く。
そこへ向かう必要がある。
「問題は。」
セレナが言う。
「復活を完全に止められるか。」
「だ。」
魔王が答える。
「封印が解けた今。」
「完全な復活前に倒すしかない。」
「……。」
俺は立ち上がる。
「行く。」
全員がこちらを見る。
「男爵様。」
「何だ。」
「本当に。」
「行くんですね。」
「……。」
少し考える。
「静かな生活のためだ。」
リリアは笑う。
「はい。」
「そういうことにしておきます。」
「……。」
そして。
世界の命運をかけた戦いへ。
俺たちは向かう。
本人だけは。
最後まで。
「早く終わらせたい。」
そう思っていた。
第106話を読んでいただきありがとうございます!
古代魔王復活を前に、人間と魔族が初めて本格的に共闘することになりました。
アルベルトは最後まで「面倒だから」という理由ですが、その存在が両陣営を繋ぐきっかけになっています。
次回、古代魔王の封印地へ向かう旅が始まります!




