第104話 悪役なら魔族の街を守らない
魔王領西部。
魔力鉱山。
かつては魔族にとって重要な資源地だった場所。
しかし。
今は。
「酷いですね……。」
リリアが周囲を見る。
鉱山の入口。
魔力結晶は黒く変色。
働いていた魔族たちは避難していた。
「黒い魔力。」
セレナが結晶へ触れる。
「王都で見たものと同じです。」
「……。」
やはり。
同じ敵。
「調査する。」
俺は鉱山へ入る。
「待ってください。」
ルシアが止める。
「中は危険です。」
「だから?」
「だから……。」
ルシアは少し困る。
「普通は警戒するところです。」
「面倒だ。」
「……。」
魔王軍四天王でも困らせるらしい。
鉱山内部。
奥へ進む。
魔力反応。
複数。
「敵がいます。」
セレナが言った。
次の瞬間。
暗闇から魔物が現れる。
黒く染まった狼型魔物。
数十体。
「来ます!」
ルシアが剣を抜く。
魔族兵も構える。
しかし。
「下がれ。」
俺は前へ出る。
「また一人でですか?」
セレナが言う。
「今回は。」
「私たちもいます。」
リリアも頷く。
「一緒に戦いましょう。」
「……。」
少し考える。
以前なら断っていた。
だが。
「分かった。」
魔物の群れが迫る。
「リリア!」
「はい!」
光魔法。
「セレナ!」
「任せてください。」
氷の壁。
「ルシア!」
「了解しました!」
魔族剣技。
それぞれの攻撃が重なる。
黒い魔物たちは次々と倒れていく。
「……。」
悪くない。
一人でやるより。
楽だ。
その時。
「きゃあ!」
奥から声。
振り返る。
鉱山作業員の子供だった。
逃げ遅れていたらしい。
背後に巨大な魔物。
「危ない!」
リリアが叫ぶ。
しかし。
俺の方が早かった。
魔物の攻撃を止める。
「……。」
小さい。
震えている。
「大丈夫か。」
「……。」
子供は頷く。
そして。
「ありがとう。」
小さな声。
「……。」
俺は立ち上がる。
「帰れ。」
「え?」
「ここは危険だ。」
子供は走っていく。
その様子を見て。
ルシアが呟いた。
「魔王様が言っていました。」
「?」
「あなたは。」
「自分では悪人だと思っている。」
「でも。」
「行動だけを見るなら。」
「誰よりも魔王らしい、と。」
「……。」
意味が分からない。
「魔王らしい?」
「はい。」
ルシアは笑う。
「力を持つ者が。」
「弱い者を守る。」
「それが本来の魔王の姿だと。」
「……。」
違う。
俺はただ。
静かな生活を邪魔されたくないだけだ。
その時。
鉱山最深部。
巨大な魔法陣が光る。
「……。」
全員が警戒する。
魔法陣の中央。
一人の影。
「また会ったな。」
「アルベルト。」
仮面の男。
以前王城で逃げた男だった。
「君は本当に。」
「どこへ行っても邪魔をする。」
「……。」
俺はため息を吐く。
「お前がいるからだ。」
「?」
「静かにできない。」
仮面の男は笑う。
「なら。」
「ここで終わらせよう。」
魔力が膨れ上がる。
「君の存在を。」
「消す。」
「……。」
また面倒な戦いが始まる。
第104話を読んでいただきありがとうございます!
魔王領での調査が進み、ついに黒幕との再会となりました。
アルベルトは「邪魔だから」という理由で動いていますが、魔族側からも少しずつ信頼され始めています。
次回、仮面の男との第二戦が始まります!




