第102話 悪役なら魔王からの招待を断る
魔王領。
その名前を聞いた瞬間。
普通の人間なら。
恐怖する。
そう思う。
だが。
「断る。」
俺は手紙を机へ置いた。
「……。」
リリアが固まる。
「まだ内容を全部読んでいませんよ?」
「必要ない。」
セレナがため息を吐く。
「魔王からの正式な招待状ですよ。」
「だからだ。」
「だから?」
「面倒だ。」
即答。
王城。
北部。
今度は魔王領。
静かな生活からどんどん離れている。
「しかし。」
王女が静かに言う。
「魔王領で何か問題が起きているようです。」
「……。」
「魔族と人間の関係にも影響する可能性があります。」
「……。」
また。
そういう話か。
放置すると。
後でさらに面倒になる。
「内容を見る。」
仕方なく手紙を開く。
『アルベルト・フォン・グランディアへ』
『突然の招待を許してほしい』
『我が領地で発生している異変について』
『君の力を借りたい』
『魔王 レオンハルト』
「……。」
魔王自ら。
しかも。
頼み事。
「珍しいですね。」
エリオットが言う。
「魔王が人間へ助けを求めるなんて。」
いつの間にか来ていた。
「なぜいる。」
「王国代表として同行を頼まれました。」
「……。」
増えた。
また。
人数が増えた。
「男爵様。」
リリアが笑う。
「楽しみですね!」
「違う。」
「?」
「楽しみではない。」
数日後。
魔王領との国境。
巨大な門。
黒い石で作られた城壁。
そこに。
一人の魔族が待っていた。
「ようこそ。」
「アルベルト・フォン・グランディア様。」
黒い角。
赤い瞳。
長い銀髪。
魔王軍の幹部らしい女性だった。
「私は。」
「魔王軍四天王。」
「ルシア・ヴァルハート。」
「……。」
四天王。
いかにもだ。
「案内します。」
門を抜ける。
魔王領。
想像していたものとは違った。
荒れた土地。
危険な魔物。
そんなものではない。
普通に街がある。
商店。
学校。
家。
「……。」
リリアが驚く。
「人間の街と変わらないですね。」
「当然です。」
ルシアが答える。
「我々も生活していますから。」
「……。」
少し意外だった。
その時。
「来たか。」
声。
城の入口。
一人の男が立っていた。
黒髪。
赤い瞳。
圧倒的な魔力。
「魔王。」
全員が緊張する。
しかし。
男は。
「アルベルト。」
「君に頼みがある。」
そう言った。
「……。」
魔王。
世界の敵。
その存在が。
「助けてほしい。」
頭を下げた。
第102話を読んでいただきありがとうございます!
新章「魔王領編」が始まりました!
敵だと思われていた魔族の国にも、人間と同じような生活があることが分かり始めます。
そして魔王自らアルベルトへ依頼。
新たな関係が動き出します。




