第101話 悪役なら英雄扱いを拒否する
王都。
事件から三日後。
街はいつもの姿を取り戻していた。
壊れた建物は修復され。
黒い魔法陣の跡も消えている。
しかし。
一つだけ変わったことがあった。
「……。」
街を歩くだけで。
視線を感じる。
「あれが……。」
「アルベルト男爵。」
「王都を救った人だ。」
「……。」
最悪だ。
目立っている。
俺は帽子を深く被った。
「男爵様。」
リリアが笑う。
「隠れても意味ないですよ。」
「意味はある。」
「ありません。」
セレナも頷く。
「王都中が知っていますから。」
「……。」
昨日。
王城から正式な発表があった。
『王都防衛の功績により』
『アルベルト・フォン・グランディア男爵へ』
『王国最高位の感謝状を授与する』
余計なものだ。
そのため。
今日は王城へ呼ばれていた。
「また王城ですか……。」
リリアが言う。
「最近多いですね。」
「面倒だ。」
「でも。」
セレナが少し笑う。
「今回は逃げられませんよ。」
「なぜだ。」
「国民の前で授与式です。」
「……。」
聞いていない。
王城広場。
多くの人が集まっている。
騎士。
貴族。
一般市民。
そして。
玉座の前に国王。
「アルベルト・フォン・グランディア。」
「前へ。」
仕方なく歩く。
国王が微笑む。
「君には何度礼を言っても足りない。」
「……。」
「王都。」
「北部。」
「そして今回の事件。」
「君の功績は王国史に残るだろう。」
ざわめき。
俺は思う。
またか。
また英雄扱いだ。
なら。
悪役らしく。
拒否する。
「不要です。」
広場が静まる。
「……。」
国王が少し目を見開く。
「不要とは?」
「称号も。」
「名誉も。」
「いらない。」
周囲が騒ぐ。
「また拒否したぞ。」
「信じられない。」
「陛下に対して……。」
しかし。
国王は怒らなかった。
「理由を聞こう。」
「簡単だ。」
俺は答える。
「俺は。」
「静かに暮らしたいだけだ。」
「……。」
沈黙。
すると。
国王は笑った。
「やはり。」
「君らしい。」
「……。」
そして。
一枚の書類を取り出す。
「では。」
「名誉ではなく。」
「別のものを渡そう。」
「?」
「君の領地。」
「グランディア領への支援許可だ。」
「……。」
予想外だった。
「君は自分のために動いたと言った。」
「なら。」
「君が守りたい場所を。」
「国も支えよう。」
「……。」
断る理由がない。
「分かった。」
受け取る。
すると。
広場から拍手。
大きな歓声。
「……。」
まただ。
何をしても。
こうなる。
その夜。
王城の客室。
俺は窓から街を見る。
「疲れた。」
その時。
扉がノックされた。
「入ります。」
セレナだった。
「何だ。」
「少し。」
「話したいことがあります。」
「……。」
珍しい。
セレナは少し迷ってから言った。
「あなた。」
「以前より変わりましたね。」
「?」
「最初は。」
「一人で全部解決しようとしていました。」
「でも今は。」
「誰かに頼ることを覚えた。」
「……。」
「そして。」
一拍。
「あなた自身が思っているより。」
「多くの人に必要とされています。」
「……。」
俺は答えない。
ただ。
少しだけ。
窓の外を見る。
「……面倒だな。」
「ふふ。」
セレナは笑った。
「そう言うと思いました。」
しかし。
翌朝。
さらに面倒な知らせが届く。
『魔王領で異変を確認』
『王国へ協力要請あり』
「……。」
俺は手紙を見る。
「今度は魔王か。」
静かな生活は。
まだ遠かった。
第101話を読んでいただきありがとうございます!
王都事件後の回でした。
アルベルトは英雄扱いを嫌がっていますが、周囲からの信頼はさらに強くなっています。
そして新たな問題として、魔王領での異変が発生。
次章へ向けた新たな展開が始まります。




