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星喰いの王と、忘れられた魔女  作者: あーちゃん


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名を捨てた王子

怪物にも、名前があったのでしょうか。


 星を喰らい、記憶を奪い、世界を忘却へ沈めようとする王。


 けれど、その王も最初から王だったわけではありませんでした。


 森の心臓に残された記憶。

 名を奪われた少年。

 王になるために、自分であることを許されなかった王子。


 このページでは、星喰いの王の過去へ触れていきます。

森の心臓の根元で、ユノたちはしばらく休むことにした。


 巨大な星の木は、黒い刃の欠片を失ったことで、少しずつ本来の光を取り戻していた。


 白銀色の幹に走る文字は穏やかに瞬き、葉の星模様も先ほどより柔らかく輝いている。


 森の声は、完全には消えていない。


 けれど、もう誰かを引きずり込もうとする声ではなかった。


 遠くで誰かが名前を呼ぶ。

 それに風が答える。

 葉が揺れ、光がまたたく。


 まるで森が、自分の中に残った名前をひとつずつ確かめているようだった。


 ソラはナギの隣に座っていた。


 まだ身体は薄い。


 腕の輪郭は時々揺れ、光の粒がこぼれる。


 けれど、目には少しずつ意識が戻っていた。


「ソラ」


 ナギが呼ぶ。


「うん」


「ソラ」


「聞こえてるって」


「ソラ」


「姉ちゃん、しつこい」


「しつこくするって言っただろ」


 ナギの声は少し震えていた。


 ソラは困ったように笑う。


 けれど、嬉しそうでもあった。


 カイはその様子をじっと見ていた。


 ソラが名前を呼ばれるたび、カイは自分の胸元を押さえる。


 ネリオ。


 まだ完全には戻っていない故郷。


 父の顔も、母の歌も、全部は思い出せない。


 でも、ソラの名が戻ったように、いつかネリオも戻せるかもしれない。


 そんな希望が、カイの目に少しだけ灯っていた。


 ミアは歌真珠を確認していた。


 さっきユノが森の記憶に沈みかけた時、この真珠が大きな助けになった。


 人魚ミレイアの歌。


 海の底から届いた名前を守る歌。


「これ、すごいね」


 ミアが呟く。


「森の中でも届くなんて」


 リゼは海涙石の容器と王の名の欠片を確認しながら答えた。


「歌は水だけでなく、記憶を伝うのかもしれない」


「じゃあ、ミレイアの歌は今もここまで来てるの?」


「少しだけ」


 リゼは目を閉じた。


「とても遠いけれど、細い糸のように繋がっている」


 ミアは歌真珠を胸元へ戻した。


「大事にする」


「ええ」


 ユノは木の根元にもたれ、深く息を吸った。


 頭の奥には、まだ三つ目の響きが残っている。


 “エ”。


 声にしてはいけない。


 けれど、その音は森の根の奥から今もこちらを見ているようだった。


 ル。

 ナ。

 エ。


 三つの響きは、繋がろうとしている。


 ユノは歯を食いしばり、意識して別々に遠ざけた。


 響きを音として考えるな。


 意味を探るな。


 今は封じる。


 リゼがそれに気づいたのか、静かに近づいた。


「ユノ」


「いる」


「三つ目を考えないで」


「努力してる」


「努力だけでは危ない」


 リゼはユノの前に膝をつき、銀の輪に指先を触れた。


 淡い光が広がる。


 冷たかった頭の奥が、少し落ち着く。


「今は、あなたの名を固定する」


「固定?」


「契約を通して、あなたがユノであることを確認する」


 リゼはまっすぐに言った。


「名前を言って」


「ユノ」


「もう一度」


「ユノ」


「あなたの故郷は?」


「ルグナ」


「一緒にいる者は?」


「ミア、リゼ、カイ、ナギ、ソラ」


「あなたが持つ剣は?」


「星灯りの剣」


「何のために使う?」


「忘却を斬って、名前を呼ぶため」


 リゼは頷いた。


「今はそれでいい」


 ユノは息を吐いた。


 確かに、少し楽になった。


「ありがとう」


「礼より、無茶を減らして」


「善処する」


「それは駄目な返事」


 ミアが横から言った。


 カイも頷く。


「絶対また無茶する」


 ナギまで言う。


「見てれば分かる」


 ソラが小さく手を上げた。


「僕、会ったばかりだけど、そんな気がする」


「ソラまで?」


 ユノは苦笑した。


 少しだけ空気が緩んだ。


 けれど、その穏やかさは長く続かなかった。


 森の心臓が、突然低く鳴った。


 幹に刻まれた文字が青白く光る。


 根がゆっくり動き、地面に円を描く。


 リゼが立ち上がった。


「記憶が開く」


「王子の?」


 ユノが聞くと、リゼは頷いた。


「さっき三つ目の響きに触れたことで、森の心臓が反応している」


 ナギがソラを支えながら言った。


「危険なのか?」


「分からない。でも、見なければ次へ進めない」


 ユノは立ち上がろうとした。


 ミアがすぐに睨む。


「一人で行かない」


「分かってる」


「本当に?」


「本当に」


 リゼがユノの隣に立った。


「全員で見る。ただし、深く入りすぎないこと」


 森の心臓の根元に、光の円が広がる。


 その中心に、少年の影が現れた。


 金色の髪。


 白い衣。


 まだ幼い顔。


 けれど、その瞳はとても寂しそうだった。


 彼は木の根元に座り、膝を抱えていた。


 その周囲には、何人もの大人が立っている。


 王族。

 神官。

 教師。

 護衛。


 誰も少年を名前で呼ばない。


「殿下」


「次期王」


「星冠を継ぐ者」


「器」


 少年は顔を伏せる。


「僕の名前で呼んで」


 小さな声だった。


 けれど、誰も聞かなかった。


 神官の一人が厳しい声で言う。


「王になる者に、個の名は不要です」


 少年は唇を噛む。


「でも、僕には名前がある」


「その名は幼きもの。王位に就く時、捨てるもの」


「捨てたくない」


 大人たちは困ったように顔を見合わせる。


 けれど、誰も少年の味方をしない。


 ユノは胸が痛くなった。


 これは、星喰いの王の過去なのか。


 まだ王ではない少年。


 名を奪われる前の王子。


 ミアが小さく言った。


「かわいそう……」


 ナギは警戒しながらも、視線を逸らせなかった。


 リゼは険しい顔で見つめている。


「名を捨てる儀式……古い王族の習わしに似ている」


「そんな習わしがあったのか」


 ユノが聞くと、リゼは頷いた。


「国によっては、王が個人であることを捨て、国そのものになるという考え方があった。でも、これは……」


 彼女は言葉を切った。


 映像の中で、少年が立ち上がった。


「僕は国じゃない」


 その声は震えていた。


「僕は僕だ」


 神官が冷たく言う。


「その考えが、民を危うくします。王は民のために自己を捨てるもの」


「自己を捨てたら、誰が民を愛するの」


 大人たちは黙った。


 少年は叫んだ。


「名前で呼んでよ!」


 その声が森に響いた。


 けれど返ってきたのは、冷たい沈黙だった。


 映像が揺れる。


 次の場面。


 少年は星の森エルディアへ連れてこられていた。


 森の心臓の前。


 若い魔女が一人、そこに立っている。


 彼女はリゼに少し似ていた。


 銀色の髪。

 穏やかな目。

 だが、リゼの姉ではない。


 もっと古い時代の魔女。


 リゼが息を呑む。


「初代星詠み……?」


 魔女は少年の前に膝をついた。


「あなたの名を、森に預けますか」


 少年は首を振った。


「預けたら、戻せる?」


「本来なら」


「戻せないなら嫌だ」


 魔女は悲しそうに微笑んだ。


「では、預けなくていい」


 周囲の神官が声を荒げる。


「なりません! この子は王になる者です! 名を森に預け、個を捨てねば!」


 魔女は静かに振り返る。


「名を奪われた者は、王にはなれません。ただの空の器になるだけです」


 ユノはその言葉に息を呑んだ。


 空の器。


 星図盤の予言が頭をよぎる。


 星を照らす剣は、持ち主の心を器にする。

 器が満ちれば、名は溢れ、己は沈む。


 リゼが小さく言う。


「この魔女は分かっていたのね。名前を捨てる危険を」


 映像の中の神官は怒りを抑えて言った。


「では、どうすれば王となれるのです」


 魔女は少年を見る。


「名を持ったまま、王になるのです」


「そんな王は弱い」


「名を持たない王の方が危うい」


「王が個であれば、私情に揺れる」


「王が個でなければ、民を人として見なくなる」


 魔女の声は静かだった。


 だが強かった。


 少年はその言葉をじっと聞いていた。


 初めて誰かが、自分の名を守ろうとしてくれた。


 その目に、小さな希望が灯る。


 しかし、その希望は長く続かなかった。


 映像がまた変わる。


 夜。


 森の心臓の前に、少年が一人で立っている。


 周囲には誰もいない。


 いや、ひとつだけ影がある。


 黒い影。


 星喰いの影ではない。


 人の形に近い、けれど顔のない影。


 影は少年へ囁く。


『名前が欲しいのか』


 少年は震える。


「誰?」


『名前を捨てた者だ』


 ユノの背筋が冷えた。


 セレノではない。


 もっと古い声。


 星喰いの最初の囁きなのかもしれない。


『名前で呼ばれたいのか』


「うん」


『ならば、すべての名を集めればいい』


「すべての名?」


『世界中の名を集めれば、誰もお前を忘れない』


 少年は首を振る。


「違う。僕は僕の名前で呼ばれたいだけ」


『同じことだ』


「違う」


『違わない。名は力だ。誰にも奪われたくないなら、先に奪えばいい』


 少年は後ずさる。


「嫌だ」


『では、お前の名は捨てられる』


「嫌だ!」


『誰も呼ばない名など、存在しないのと同じだ』


 影が少年へ手を伸ばす。


 ユノは思わず叫びそうになった。


 でもこれは過去だ。


 変えられない。


 少年は逃げた。


 森の奥へ。


 泣きながら、何度も自分の名前を呟いている。


 だが、その部分だけが聞こえない。


 白く抜け落ちている。


 少年の本当の名前。


 星喰いの王になる前の名。


 そこが、まだ隠されている。


 映像がさらに揺れる。


 王宮。


 儀式の間。


 少年は白い衣を着せられ、王冠を前に立っている。


 周囲の神官が唱える。


「名を捨てよ」


「個を捨てよ」


「王となれ」


 少年は泣いていた。


 けれど誰も止めない。


 初代星詠みの魔女は、その場にいなかった。


 閉じ込められているのか、追放されたのか。


 分からない。


 少年は最後に小さく言う。


「僕の名前を、誰か覚えていて」


 その声は、ユノの胸を貫いた。


 そして儀式が始まった。


 少年の名前が、白い光となって彼の胸から抜かれる。


 それは森の心臓へ送られるはずだった。


 だが、途中で黒い影がそれを喰らった。


 少年は叫んだ。


 その叫びが、三つ目の響きになった。


 ――エ。


 ユノの頭が割れるように痛んだ。


 ル。

 ナ。

 エ。


 三つの音が激しく揺れる。


 リゼが叫ぶ。


「ユノ、聞きすぎないで!」


 ミアの歌真珠が鳴る。


 カイがユノの腕を掴む。


 ナギも叫ぶ。


「戻れ!」


 ソラの弱い声も聞こえた。


「ユノさん!」


 ユノは歯を食いしばった。


 でも記憶は終わらない。


 少年は王になった。


 だが、目は空っぽだった。


 誰も彼の幼い名を呼ばない。


 王。

 陛下。

 星冠の主。


 そう呼ばれるたび、少年だったものの心に空洞が広がっていく。


 そこへ、黒い影が囁く。


『名が足りない』


『もっと集めろ』


『すべての名を喰らえば、失った名も満ちる』


 王は星を見上げる。


 星には、無数の名前が宿っている。


 人の名。

 国の名。

 過去の名。

 未来の名。


 王は手を伸ばす。


 最初の星が消えた。


 星喰いの始まり。


 ユノは叫んだ。


「違う!」


 映像の王が振り返る。


 空っぽの目がユノを見る。


『何が違う』


 ユノは息を呑む。


 これは過去の記憶のはずだ。


 なのに、王はこちらを見ている。


『名前を奪われた者が、名前を求めて何が悪い』


 王の声は、少年の声と重なっていた。


 ユノは震えながら答えた。


「奪われたからって、誰かから奪っていい理由にはならない」


『綺麗事だ』


「そうかもしれない」


『お前もいずれ名を失う。そうなった時、同じことが言えるか』


 ユノは言葉に詰まった。


 星図盤の予言。


 名を集める者、やがて己の名を失う。


 もし本当に自分の名前が薄れたら。


 もし誰にも自分を覚えてもらえなくなったら。


 それでも、誰かの名前を奪わないと言えるのか。


 王の影が近づく。


『鍵よ。お前は私に似ている』


「違う」


『名を背負い、器になり、やがて自分を失う』


「違う!」


『なら証明してみせろ』


 王の影が手を伸ばす。


 ユノの胸元にある三つの響きが引きずられる。


 ル。

 ナ。

 エ。


 三つが繋がりそうになる。


 その瞬間、リゼがユノの前に立った。


「ユノ!」


 彼女は本名を呼んだ。


 森の中で、本名を。


 森がざわめく。


 だが、リゼは迷わなかった。


「あなたはユノ!」


 ミアも叫んだ。


「ユノ!」


 カイも。


「ユノ!」


 ナギも。


「ユノ!」


 ソラも弱々しく。


「ユノ!」


 五つの声が、森の記憶を貫いた。


 ユノの胸の中で、三つの響きが離れる。


 ル。

 ナ。

 エ。


 まだ繋がらない。


 ユノは叫んだ。


「俺はユノ!」


 王の影が歪む。


『覚えていられるものなら、覚えていろ』


 その言葉を最後に、記憶は砕けた。


 ユノたちは森の心臓の根元へ戻っていた。


 誰もが息を切らしている。


 リゼはユノの肩を掴んでいた。


 ミアは歌真珠を握りしめ、顔を真っ青にしている。


 カイは泣きそうな顔でユノを見ている。


 ナギはソラを抱えたまま、震えていた。


「今の……」


 ミアが呟く。


「星喰いの王……?」


 リゼは険しい顔で頷いた。


「王の始まりの記憶。名を奪われた王子」


 カイが小さく言った。


「かわいそうだった」


 誰も否定しなかった。


 かわいそうだった。


 確かに。


 でも、それだけでは終われない。


 リゼが低く言った。


「哀れでも、罪は罪よ」


「分かってる」


 ユノは答えた。


 王子の痛みは本物だった。


 名前を奪われた悲しみも本物だった。


 けれど、彼はその痛みを理由に、世界から名前を奪い始めた。


 星を喰らい、記憶を喰らい、誰かの故郷まで消した。


 かわいそうだから許せるものではない。


 でも、知らなければ止められない。


 ユノはそう思った。


 森の心臓に、新しい文字が浮かび上がる。


 リゼが読んだ。


「名を捨てた王子。三つ目の響きは根に封じられた。次なる響きは、星見の塔に眠る。そこには、王子の幼き名を知る者の記録がある」


「幼き名……」


 ユノは呟いた。


 王の本当の名前。


 それを知ることが、星喰いを止める鍵になるのだろうか。


 ナギがソラを抱えながら言った。


「星見の塔なら、森の北にある。古い塔だ。今は誰も近づかない」


「なぜ?」


 ミアが聞く。


「塔は空に近すぎる。星喰いが最初に触れた場所だと言われている」


 リゼは海涙石の容器をしまい、ユノを見る。


「行くしかないわね」


「ああ」


 ユノは頷いた。


 だが、立ち上がろうとして少しよろめいた。


 ミアがすぐに支える。


「今すぐは駄目」


「分かってる」


「本当に?」


「本当に」


 リゼも言った。


「今日はここで休む。ユノも、ソラも、森の心臓も回復が必要」


 ナギは静かに頷いた。


「森の心臓のそばなら、夜を越せる」


「安全なのか?」


 カイが聞く。


「以前は、森で一番安全な場所だった」


 ナギは木を見上げる。


「今は……たぶん」


 ミアがため息をついた。


「また“たぶん”……」


 それでも、他に選択肢はなかった。


 夜が近づいている。


 森の奥で、星の葉が光り始めた。


 森の心臓は、五人とソラを守るように、根を少し広げた。


 その光の中で、ユノは目を閉じた。


 頭の奥に、王子の声が残っている。


 ――僕の名前を、誰か覚えていて。


 ユノは小さく呟いた。


「覚える。でも、止める」


 リゼが隣で聞いていた。


「ええ」


 彼女は静かに言った。


「知ることと許すことは違う」


「うん」


「でも、知らなければ本当には止められない」


 ユノは目を開けた。


「リゼ」


「何?」


「俺が王に似てるって言われた」


 リゼの表情が少し変わる。


「似ていないわ」


「即答だな」


「ええ」


 リゼはまっすぐユノを見た。


「あなたは名前を奪われる怖さを知っても、誰かの名前を奪おうとはしていない」


「これからそうならない保証は?」


「保証はない」


 リゼは正直に言った。


「だから、私たちがいる」


 ユノは少し笑った。


「そうだった」


 ミアが横から言う。


「忘れたら怒るよ」


 カイも。


「俺も怒る」


 ナギも小さく言った。


「私も、たぶん怒る」


 ソラが弱々しく笑う。


「僕も……元気になったら」


 ユノは胸が温かくなった。


 王子には、それがなかったのかもしれない。


 名前を呼んでくれる人。


 止めてくれる人。


 自分を個人として見てくれる人。


 それがないまま、彼は王にされた。


 そして怪物になった。


 ユノは自分の名前を呼んだ。


「ユノ」


 すぐに、仲間たちが続ける。


「ミア」


「リゼ」


「カイ」


「ナギ」


「ソラ」


 森の心臓が、優しく光った。


 名を捨てた王子の記憶は重かった。


 けれど、ユノたちはその重さを一人で抱えなかった。


 夜が森に降りてくる。


 星の葉が輝き、森の心臓が静かに鼓動する。


 明日は星見の塔へ向かう。


 そこに、王子の幼き名を知る記録が眠っている。


 ユノは目を閉じた。


 怖さはある。


 でも、今は仲間の名前が近くにある。


 それだけで、眠りに落ちることができた。

ここまで読んでくださり、ありがとうございました。


 このページでは、星喰いの王がかつて“名を捨てさせられた王子”だったことが描かれました。


 王子は最初から怪物ではありませんでした。

 自分の名前で呼ばれたいだけの、孤独な少年でした。


 けれど、王になるために個の名を捨てることを強いられ、そこへ忘却の影が入り込みます。


 名前を奪われた痛みが、やがて世界中の名前を奪おうとする飢えへ変わっていきました。


 かわいそうでも、罪は罪。

 けれど、知らなければ止められない。


 ユノたちは王の過去を知り、次に“王子の幼き名”を探すため、星見の塔へ向かうことになります。


 次のページは『星見の塔へ』です。

 森の北にそびえる古い塔へ向かい、第四の響きと王子の名に近づいていきます。

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