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鄙島人形供養の段  作者: さわみずのあん


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2/7

二段目

 二月二十五日。

 試験官をしなさい。

 楽ならば簡単に金を稼げます。

 もし苦でも哲学者になれます。

 僕は富みたくないのです。

 僕はソクラテスにもなりたくないのです。

 僕は、貧乏な豚でいい。

 僕の座右の銘は、座して死を待つより、出でて活路を見いだせ。だ。

 活路活路。と、帰路につく。

 帰路につく。

 足取りが、重い。

 僕には、活路がない。

 生活手段がない。

 就職先がない。

 大学を卒業すれば。

 ノーカラー。

 そして。

 そして、なにより。

 生活目的がない。

 人はパンのみにて生きるにあらず。

 嘘だ。

 人はパンのみにて生きる。

 それも嘘だ。

 人は。

 空のみ。

 トイレに行きたくなると困るから、ほとんど飲まなかった、ペットボトルのお茶を、飲み干す。

 十七時を過ぎても、空はまだ、明るい。

 日が段々と遅くなるのが恨めしい。

 冬が遠くなっていく。

 試験会場で、試験が終わって。

 受験生は、僕を振り返らずに、みな去っていった。

 合格にしろ、不合格にしろ。

 彼らは、春に向かう。

 冬のままでいさせてくれ。

 蕾のままでいさせてくれ。

 桜。咲くな。桜。散るな。

 空は、まだ、明るい。


―――うーー夕方滅入るぅ。うーー夕方滅入る。

   うーー気分がー夜に、深けーていくぅうう―――


 スマホの着信音楽。

「日向さんだ」

 くくっく。なに? 

 僕は声を出しちゃっているんだ?

 嬉しくて? 待ち遠しくて?

 違うさ。

 ため息に似た、ひゅー。と。

 いびきに似た、が。と。

 ちょっと疲れた時に、出しやすい音なだけさ。


―――うーー夕方滅入るぅ。

 『仕事で複数の携帯が必要だからさー、ちょっとでも、携帯代安くしたいんだよ         

ー』と強引に僕と家族割を結んだ、日向さんだ。


             うーー夕方滅入る。

 元々は、上級生で。同級生になって、下級生になって。大学を満期退学して、再受験して。新入生になった、日向さんだ。


   うーー気分がー夜に、

 今回の試験官の仕事を中抜きのない時給で紹介してくれた。謎の島に、謎の荷物を運ぶ仕事を紹介してくれた、日向さんだ。


             深けーていくぅうう―――

『知らせには、二つある。グッドニュースと、バッドニュースだ。俺の着メロ。バッドニュースをお前は聞いて電話に出るんだ。なら、俺からの知らせは、グッドニュースだ』

 と、よく分からない理論で、着メロ(初めて聞いた時は、何の事か分からなかった。そんなことをたまに言う)を設定した、日向さんだ。


―――うーー夕方滅入るぅ。

 スマホの画面を、上にスワイプ。

 僕は応答する。誰からか、分かっているのに、

「たそがれ?」

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