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遊園地・2

 八神姉弟がテーマパーク行きの計画を立てている頃。


 恭と一緒にペアチケットをもらった女子の家では、こんなやり取りがあった。


「おい、大雅(たいが)。一緒にデスティニーランドに行くで」


 ズカズカと部屋に入って来た姉に、弟は「えっ?」とスマホから顔を上げて問う。


「デスティニーランドって、例のフリーパスで? 友だちじゃなくて僕を連れて行ってくれんの?」

「言うとくけど、遊びで行くんちゃうで。うちは八神君を手に入れるため。アンタは八神君にリベンジするために行くんや」


 彼女は後夜祭で「せっかくだから一緒に行っちゃう?」と恭を誘った3年女子の西条天華(さいじょうてんか)だ。


 人前ではおしとやかな標準語だが、実は関西出身で高校進学を機に上京したので、家ではバリバリの関西弁である。


 ちなみに彼女は、男子の人気ランキング2位である西条大雅の姉で、美形モデル姉弟として有名だった。


「八神にリベンジって……確かに人気投票で負けたんは、メッチャ悔しかったけど、テーマパークでどないしてやり返すん?」


 弟の問いに、姉はピラピラとチケットを振りながら答える。


「デスティニーランドのペアチケットやで? 普通は限りなく本命に近い相手を誘うはずや。つまり当日の八神君の連れは、恋人か気になる女の子。それをアンタが横取りできたら、八神君よりイケてるってことやろ?」

「でも友だちと来る可能性もあるんちゃう?」


 それどころか恭が言ったように、チケットを売るか知り合いにタダで譲る展開もあり得るが、姉弟は本人が使うと想定して話を進める。


「まぁ、その場合は普通に合流して遊ぼうや。大雅が友だちの相手をしとる間に、うちは八神君を攻略するから」

「リベンジとか言って、僕を使って八神をフリーにしたいだけやん」


 弟の不満を、姉は高圧的な態度で封じる。


「ぶちぶち言うなや。そんなやからモデルのくせに、素人の八神君に負けるんよ。男やったら、もっと積極的に八神君にぶつかりに行けや!」

「わ、分かったわ。八神の連れが女やったら、僕が奪ってアイツの鼻をあかしたる!」


 人気高校生モデルの西条姉弟は、オシャレで上品な都会っ子に激烈な憧れがある。


 元ヤンかつ庶民的な両親をダサいと、ものすごく恥じているので、自分たちは少女漫画に出て来るような一軍になりたいのだ。


 特に姉の天華は、


『関西が舞台でない限り、関西弁のヒロインやヒーローなんて滅多におらんやろ! つまり関西弁はそれだけで、都会的でオシャレな恋愛から弾かれてしまう不利な属性なんや!』


 と自分たちに流れる関西の血を毛嫌いしている。その努力もあって、周囲にはオシャレ姉弟として認知されていた。


 後は誰もが羨む素敵な恋人を見つけるだけ。と言っても、恭に惹かれる気持ちは本物だ。


 本人は嫌がっているが、彼女たちは元ヤンの両親に育てられた。それも父親は暴走族の総長だったので、金や学歴よりも、強くて硬派で仲間想いの男に弱いのだ。恭は見目もいいので尚更である。


(絶対に、このペアチケットで八神君とお近づきになってみせるで!)


 それから姉弟はそれぞれ休み時間などに、あやめと恭にさり気なく近づいた。


 いつデスティニーランドに行くのか、友人との会話から探るために。


 あやめは恭がシスコンだと思われないように気を遣っているので、学校で遊園地行きの話はしなかった。


 意外と恭のほうが、そういう配慮に欠けるので、


「けっきょく恭は、誰とデスティニーランドに行くの?」


 という陽太の問いに、不本意そうに小声で答える。


「最初は誰かにチケットを売ろうかと思ったけど、姉が連れて行けってうるさいから、アイツと行くことになった」

「なんだかんだ、恭はお姉さんに甘いよな」


 笑顔の槇に、恭は「違う」と即座に反発する。


「アイツには借りがあるから、仕方なく連れて行くだけ」

「それでいつ行くの?」

「今度の土曜日」


 友だちに会いに来たふりをして恭たちの会話を盗み聞きした大雅は帰宅後、さっそく姉に報告した。


「八神がデスティニーランドに行くのは、今度の土曜やって。せやけど彼女とか好きな子とかじゃなくて、姉ちゃんと行くそうや」

「へ~? お姉さんと行くん? せっかくのチケットをお姉さんにあげるってことは、八神君には彼女も好きな子もおらんってことやな!」

「天華ちゃんは喜んどるけど、相手が姉ちゃんじゃ、こっちは八神の女を取る計画が台無しなんやけど」


 ぼやく弟に、姉はサラッと提案する。


「八神君のお姉さんを誘惑したらええやん」

「弟から姉ちゃん奪って、なんの意味があるん? 僕は天華ちゃんの彼氏なんて、犯罪者じゃなきゃ誰でもええで」


 家族なので姉を不幸にしそうな相手なら反対だが、浮気くらいなら流せるレベルだった。


 姉は自分がでしゃばらなくても相手がクソ野郎なら、自力で制裁できるという圧倒的信頼があるからだ。


「八神君にはダメージ無いかもしれんけど、お姉さんは重度のブラコンで『弟は世界一イケメン』って言ってはばからへんらしいで。そんな女を振り向かせられたら、アンタは八神君より魅力的ってことやろ?」


 姉としては当日、恭と話す隙を作るために、弟にはぜひあやめを引きつけておいて欲しかった。


 なので適当な理由をつけて勧めると、大雅は素直に納得した。


「おお、そりゃええ意趣返しやな。よっしゃ、人気投票の腹いせに八神の姉を攻略したろ」

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