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なんの話?

 夏休み明けの2年の教室。槇は後ろの席の恭を振り返って、こんな話をした。


「夏休み中に保護猫をお迎えしてさ。猫を飼いたいって言い出したのは妹なんだけど、なんか俺にいちばん懐いた」


 どことなく自慢そうな槇の報告に、恭より先に陽太が「へー」と反応する。


「うち、犬しか飼ったことない。猫って、どういうところが可愛いの?」

「俺の膝に乗ってゴロゴロ甘えてきたり、顔を近付けると鼻チューしてきたり、夜は布団に入って来たり」


 槇は愛猫の可愛い仕草をデレデレと語ると、さらにこう付け加える。


「誰に対してもそうならなんとも思わないけど、うちの猫が自分から擦り寄るのは、今のところ俺だけなんだ。他の人には距離あんのに俺にだけ懐いてくんの、控えめに言ってメチャクチャ可愛い」


 惚気にも似た槇のペット自慢に、恭が珍しく「分かる」と食いつく。


「おっ、恭も分かる?」


 笑顔で尋ねる槇に、恭は自分の体験を語る。


「抱き着いたついでに頬をくっつけてきたり、小せぇ体で腕ギュッてしたりすんのヤバい」

「あ~、分かる~。猫って飼い主の腕、なぜかホールドするよな~」


 ニッコニコで共感する槇に、恭はやや恥ずかしそうに顔を赤らめ、手で口元を隠しながら続ける。


「自分は好き放題甘えるくせに、気分じゃない時は全く寄って来なくて勝手だなと思うけど、その分、甘えて来る時はメチャクチャ可愛くて、けっきょく気まぐれなところすら好きだなって」


 どちらかと言えば無口な恭にしては珍しく口数が多い。本当に猫が好きなんだなと友人たちは思った。


 気まぐれで甘えん坊な猫にメロメロな友人たちに、陽太は笑顔で感想を述べる。


「2人ともすっかり猫の虜だね。でも恭も猫を飼ってたなんて知らなかったな」

「猫は飼ってないけど」

「えっ? じゃあ、なんの話をしてたの?」


 困惑する陽太に、恭は明後日の方向を見ながら、


「……一般的な猫のイメージ?」


 その回答に、槇は「猫の解像度高」と笑った。そして猫好きなのに飼えないらしい友人を気の毒に思って、


「そんなに猫が好きなら、今度うちの猫を触らせてやるよ」


 と申し出た。


 ところが槇の気遣いを、恭はあっさりと断る。


「いや、別に猫が好きなわけじゃないから」

「じゃあ、さっきのは本当になんの話だったの!?」


 友人の不可解すぎる言動に陽太は思わず叫んだが、けっきょくなんの話かは永遠に謎だった。

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