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蛊真人  作者: 魏臣栋
青茅山
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第八十七節: 態度は心の仮面である

方源ほうげんはこの措置そちうら族長ぞくちょうちいさな試探したんひそむことを看破かんぱしていた。


演武場えんぶじょう見渡みわたすと、族内ぞくない最精鋭さいせいえい三組さんくみならんでいた。族長派ぞくちょうは青書組せいしょぐみ赤脈せきみゃく赤山組せきざんぐみ漠脈ばくみゃく漠顔組ばくがんぐみだ。


普通ふつう塾生じゅくせいならどれかに加入かにゅうすれば強力きょうりょく後見こうけん将来しょうらい約束やくそくされるが、方源ほうげんにとってはぎゃく危険きけんだった。


族上層部ぞくじょうそうぶではすでかれが「何者なにものかの勢力せいりょく」の烙印らくいんされていた。不用意ふようい三組さんくみのどれかにはいれば大問題だいもんだいになる。


たとえば赤山組せきざんぐみ加入かにゅうした場合ばあい赤脈せきみゃく自分じぶん方源ほうげん勧誘かんゆうしていないことをっている。最初さいしょに考えるのは――「方源ほうげんあきらかに他派閥たはばつこまだ。くみひそんでなにたくらむ?」


つぎに――「早期勧誘そうきかんゆうした勢力せいりょく規約きやくやぶった。いま方源ほうげんが我々(われわれ)に接近せっきんするなら、我々(われわれ)が黒幕くろまくだと誤解ごかいされる。そんなぎぬせられるわけにはいかん。方源ほうげん監視かんしき、確固かっこたる証拠しょうこつかんで正体しょうたいあば)かねば!」


しかし実際じっさいには、方源ほうげんにはうし)だてなど存在そんざい)しないのだ!


三組さんくみのどれかに加入かにゅうすれば、三大勢力さんだいせいりょく一角いっかくかたきまわすことになる……絶対ぜったいにまずい。元々(もともと)は江鶴組こうかくぐみひそやかに加入かにゅうするつもりだったが」方源ほうげんいしばる。「江鶴組こうかくぐみ背後はいごには刑堂家老けいどうかろうかげもちらつく。いまここでえら)べば危険きけん)すぎる」


古月博こげつ ひろし)笑顔えがお)ふか)める:「えら)べないなら、わたし))てい)してやろう」


周囲しゅうい)家老かろう)たちは石像せきぞう)のように無表情むひょうじょう)見守みまも)っていた。


強制きょうせい)か」方源ほうげん))ひか)る。「赤山組せきざんぐみ)漠顔組ばくがんぐみ)))むつもりだな」


古月博こげつ ひろし)当然とうぜん)自分じぶん)黒幕くろまく)でないことを)っている。この一手いって)嫌疑けんぎ))らし、政敵せいてき)弱体化じゃくたいか)させ、なぞ)勢力せいりょく)あぶ))す――三つの利益りえき)一挙いっきょ))策謀さくぼう)だ。


)てい)ゆる)せん。雑組ざつぐみ)えら)ぶしか……」方源ほうげん)くち))けようとした瞬間しゅんかん)


人混ひとご)みからこえ)ひび)いた:「うちのくみ)はい)らねえか?攻撃要員こうげきよういん))りねえんだ」


だれ)だ?


視線しせん)あつ)まるさき))っていたのは、浅黒あさぐろ)はだ)病弱びょうじゃく)そうなおとこ)三角眼さんかくめ)するど)ひか)っていた。


病蛇びょうだ)古月角三こげつ かくみ)か」だれ)かがつぶや)いた。


古月博こげつ ひろし)家老かろう)たちの)失望しつぼう)いろ))かべた――背景はいけい)勢力せいりょく)もない雑魚組ざこぐみ)だった。


病蛇びょうだ)古月角三こげつ かくみ)か」だれ)かが身元みもと)あば)いた。


古月角三こげつ かくみ)背景はいけい)勢力せいりょく)もない雑組ざこぐみ)じゃないか!」族長ぞくちょう)家老かろう)たちの)失望しつぼう)いろ))かんだ。


角三かくみ)か……」方源ほうげん)ひとみ)おく)かす)かな暗光あんこう))れた。


かれ)とこの古月角三こげつ かくみ)面識めんしき)もなく、記憶きおく)さかのぼ)っても存在そんざい)すら曖昧あいまい)だった。


なぜ角三かくみ)みずか)こえ))けたのか? たん)考査こうさ)首位しゅい)実績じっせき)ゆえか?


馬鹿ばか)げている! 方正ほうせい)のような青二才あおにさい)ならいざ)らず……」


だが――


角三かくみ)自発的じはつてき)さそ)いは、いま)この状況じょうきょう)突破口とっぱこう)になり)た。


上層部じょうそうぶ)連中れんちゅう)はがっかりだろうな」方源ほうげん)口角こうかく)薄笑うすわら)いが)かび、まぶた))せて眼光がんこう)かく)した。


「ではお言葉ことば)あま)えてくみ)はい)らせてもらう」古月博こげつ ひろし)つづ)台詞せりふ)さえぎ)るように、方源ほうげん)即答そくとう)した。


方源ほうげんあたまがおかしいのか?」

精鋭組せいえいぐみって病蛇組びょうだぐみになんかはいるなんて!」

正気しょうき沙汰さたじゃねえ。角三かくみ性格せいかくったら……ははは」


場内じょうない塾生じゅくせい蠱師こしたちが噂話うわさばなしはじめ、方源ほうげん完全かんぜんに「阿呆あほうあつかい」になった。


族長ぞくちょう家老かろうたちの表情ひょうじょう一斉いっせいくもった。


今日きょう策略さくりゃく古月角三こげつ かくみ台無だいなしにされた!いや……もしかするとこの角三かくみ策略さくりゃくこまかもしれん。いずれにせよ、こいつを徹底的てっていてき調しらべ上げ(あげ)ねば!



三日後みっかご


ゆき一日中いちにちじゅうつづけたあと次第しだいよわまり、しろ雪片せっぺんかぜってっている。


青茅山せいぼうざんふもとから頂上ちょうじょうまで真白ましろころもまとい、落葉樹らくようじゅえだはだかになっているが、まつ青茅竹せいぼうちくだけはゆきかぶりながらも青々(あおあお)とつづけている。


人組にんぐみ雪原せつげんける。


先頭せんとうはし中背ちゅんぜいおとこ――病弱びょうじゃくそうな黄色きいろはだをした古月角三こげつ かくみが、はしりながら沈黙ちんもくまも方源ほうげん横目よこめやわらかくわらった:「方源ほうげん緊張きんちょうするな。はじめての任務にんむだが内容ないよう簡単かんたんだ。見様見真似みようみまねでいい」


「わかった」方源ほうげんは淡々(たんたん)とこたえ、前方ぜんぽう見据みすえたまま表情ひょうじょうえなかった。


本格ほんかく的なふゆおとずれている。


雪上せつじょう疾走しっそうするほど、つめたい冬風ふゆかぜがより一層いっそうつよかんじられる。いきむたび、かきごおりべたようにむねなかこおりつくようだ。



方源ほうげんはだもとよりしろ)かったが、雪明ゆきあ)かりに)らされ一層いっそう)青白あおじろ))えた。はし)つづ)けるなか)小雪こゆき)くろ)短髪たんぱつ)かた)眉尻まゆじり)))なく)もっていく。


以前いぜん)ちが)い、方源ほうげん)衣装いしょう))えていた。


濃紺のうこん)武闘服ぶとうふく)うわ)長袖ながそで)した)長袴ながばかま)すね)には竹板たけいた)脚絆きゃはん)足元あしもと)竹皮草履たけかわぞうり)ひたい)紺碧こんぺき)鉢巻はちまき))め、そのはし)はし)たび)空中くうちゅう)ひるがえ)っていた。


こし)には幅広はばひろ)おび))いている。


臙脂色えんじいろ)おび)正面しょうめん)銅板どうばん)))まれ、「いち)」の文字もじ)きざ)まれていた。


これが蛊師こし)正装せいそう)一転蛊師いってんこし)たるあかし)だ。


じゅく)卒業そつぎょう)したもの)のみがゆる)される装束しょうぞく)。このころも)まと)うことは凡人ぼんじん)階層かいそう))え、とうと)もの)として人類社会じんるいしゃかい)上流じょうりゅう))つことを意味いみ)する。たとえ最下層さいかそう)一転いってん)であれ、いま)凡人ぼんじん)みち)ゆず)敬礼けいれい)せねばならない。


古月角三こげつ かくみ))かす)かにひか)った。この装束しょうぞく)方源ほうげん)無表情むひょうじょう))まって、冷徹れいてつ)洗練せんれん)された気質きしつ)かも))していた。


任務中にんむちゅう)移動いどう)命綱いのちづな)だ。はし)くせ))いてるか?」角三かくみ)いき))らせながらこえ))ける。


問題もんだい)ない」方源ほうげん)最小限さいしょうげん)返事へんじ))ませ、眼角がんかく)角三かくみ)うかが)った。


その柔和にゅうわ)笑顔えがお)は、人祖じんそ)神話しんわ)伝承でんしょう)おも)わせるものだった――


むかし)人祖じんそ)規矩きく)二蛊にこ)使つか)い、ちから)うば)われ知恵ちえ)うしな)ったあと)三匹さんびき))だけがのこ)った――うたが)いとしん)じるこころ)、そして態度たいど))だ。


人祖じんそ)態度たいど))つか)まえた。


態度たいど)))けの約束やくそく)通り(どおり)に降伏こうふく)し、こう)げた:「人間にんげん)よ、わたし)つか)まえたからにはあきら)めるしかないな。今後こんご)、おまえ)ため)使つか)ってやるよ。わたし)かお))ければ効果こうか)発揮はっき)するさ」


態度たいど))仮面かめん)のような姿すがた)をしており、人祖じんそ)かお))てても何度なんど)すべ))ちた。なわ)しば))けてもはず)れてしまう。


「どういうことだ?」人祖じんそ)くび)かし)げた。


態度たいど))わら)う:「)かったぞ、人間にんげん)よ――おまえ)にはこころ)がないんだ。態度たいど)こころ)仮面かめん)だ。こころ)がなければわたし))られないのは当然とうぜん)さ」


人祖じんそ)さと)った――すで)こころ)希望きぼう)ささ)げてしまったのだ。


もはやこころ)などない。


こころ)なきもの)態度たいど)仮面かめん))られない。ぎゃく))えば、こころ)あるもの)態度たいど)とは仮面かめん))ぎない。


古月角三こげつ かくみ)柔和にゅうわ)態度たいど)たん)なる仮面かめん)か……本心ほんしん)なに)だ?」方源ほうげん)思考しこう)めぐ)らせる。


病蛇びょうだ)」と呼ばれる角三かくみ)方源ほうげん)観察かんさつ)する一方いっぽう)で、方源ほうげん)もまたひそ)かにかれ)観察かんさつ)していた。

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