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蛊真人  作者: 魏臣栋
魔头乱世
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第一百七十二節:公子,救我……

(ごう)!!


(ひと)つの(かげ)電光(でんこう)(ごと)(ほとばし)()で、六本(ろっぽん)(うで)重砲(じゅうほう)(ごと)(そろ)()ち、(おお)きな鋼兜蟹(はがみがに)()(くだ)いた。


瞬時(またたき)(うち)に、密室(みつしつ)(なか)血潮(ちしお)()()り、断末魔(だんまつま)四肢(しし)(みだ)()ぶ。


「ははははは!」


潘平(はんぺい)(みだ)()(かみ)全身(ぜんしん)()びた鮮血(せんけつ)肉片(にくへん)(かえり)みず、(あま)(あお)ぎて(くる)おしい(わら)いを(はな)つ。


痛快(つうかい)なり、痛快(つうかい)なり!


()六臂天尸王(ろっぴてんしおう)殺招(さっしょう)(じつ)(すさ)まじき威力(いりょく)よ!


死骸(しがい)(ばい)(かい)()し、力道的(りきどうてき)基盤(きばん)不足(ふそく)(たく)みに回避(かいひ)せり。


(ゆえ)(われ)力道(りきどう)(しゅう)()(わず)かにすると(いえ)ども、縦横(じゅうおう)()()るなり!」


潘平(はんぺい)双瞳(そうどう)(するど)(ひか)り、(ひと)(ごと)ちながら、()()なく()妙味(みょうみ)(もてあそ)ぶ。


(かれ)魔道(まとう)出身(しゅっしん)で、資源(しげん)(とぼ)しく、才覚(さいかく)(おお)くなかったため、これまで殺招(さっしょう)()べるほどの(わざ)会得(えとく)したことがなかった。


しかし、豚肉(ぶたにく)()べたことがなくとも、(ぶた)(はし)姿(すがた)()たことがある。


北原(ほくげん)長年(ながねん)(わた)修羅場(しゅらば)をくぐり()けてきた潘平(はんぺい)は、眼界(がんかい)(ひら)き、()の「六臂天尸王(ろっぴてんしおう)」の殺招(さっしょう)が、(たし)かに以前(いぜん)記録(きろく)(ごと)く──威力(いりょく)絶倫(ぜつりん)なることを()ったのだ!


()れさえ()れば、狼王(ろうおう)(たい)する勝算(しょうさん)一割(いちわり)確実(かくじつ)()す!


狼王(ろうおう)には力道(りきどう)殺招(さっしょう)()ったが、(いま)()れにも()り!


狼王(ろうおう)め、(おご)るな、(おそ)(はや)く、()れが()けた屈辱(くつじょく)倍返(ばいがえ)しして()せてやる!」


潘平(はんぺい)()()(しば)り、()には憎悪(ぞうお)(ほのお)()(たぎ)っていた。


()(ころ)常飚(じょうひょう)(また)()殺招(さっしょう)試験(しけん)(おこな)っていた。


流石(さすが)八十八角真陽楼(はちじゅうはっかくしんようろう)褒賞(ほうしょう)()殺招(さっしょう)(つよ)(だい)さは本物(ほんもの)だ!」


殺招(さっしょう)威力(いりょく)は、(つね)冷静(れいせい)(たも)常飚(じょうひょう)でさえ、(おも)わず(いき)()(ほど)であった。


()不満(ふまん)()えば、()れは容姿(ようし)醜悪(しゅうあく)さくらいのものか……」


常飚(じょうひょう)眼前(がんぜん)(かがみ)(なが)め、(ふか)(しず)んだ眼差(まなざ)しを()ける。


(かがみ)(うつ)()姿(すがた)は、全身(ぜんしん)皮膚(ひふ)青灰色(あおはいいろ)変色(へんしょく)し、口元(くちもと)からは(きば)(のぞ)き、双眸(そうぼう)昏黄(こんおう)(ひかり)(あか)(みどり)()()じった(みだ)(がみ)は、()(もの)背筋(せすじ)(こお)らせる。


(とく)背中(せなか)()えた六本(ろっぽん)異形(いぎょう)(うで)は、(ふと)さも(かたち)(そろ)わず、各々(おのおの)が猟奇(りょうき)(てき)様相(ようそう)(てい)しており、一瞥(いちべつ)しただけでも寒気(さむけ)(はし)(ほど)である。


潘平(はんぺい)魔道(まとう)出身(しゅっしん)日頃(ひごろ)より資源(しげん)(とぼ)しく、生存(せいぞん)こそが最優先(さいゆうせん)


()(ため)外見(がいけん)変容(へんよう)など()(かい)さない。


(しか)常飚(じょうひょう)(おな)じからず。


常家(じょうけ)出身(しゅっしん)とあって、()身分(みぶん)高貴(こうき)なり。


正道(せいどう)()りて顔役(かおやく)として、羽毛(うもう)()しみ、名声(めいせい)(おも)んず。


(かく)(ごと)姿(すがた)(もっ)(ひと)(しめ)せば、()心中(しんちゅう)(すこ)しばかり(おだ)やかならざるべし。


(しかし)れども、容貌(ようぼう)(みにく)しと(いえ)ども、常山陰(じょうさんいん)(たい)(しょ)せんが(ため)には()れを(もっ)てせざるべからず!」


方源(ほうげん)(おも)()かべるや、常飚(じょうひょう)心中(しんちゅう)決意(けつい)(かた)まった。


()(わざ)は、(かれ)力道殺招(りきどうさっしょう)()()ているな。


(かれ)殺招(さっしょう)背中(せなか)より四本(よんほん)(うで)(しょう)じ、(もと)両腕(りょううで)()わせ六臂(ろっぴ)となる。


()()殺招(さっしょう)背中(せなか)より六本(ろっぽん)(うで)(しょう)じ、()わせ八臂(はっぴ)となる。


()れが外形(がいけい)相違(そうい)である。


威力(いりょく)()いても、()殺招(さっしょう)一籌(いっちゅう)()ずる。」


常飚(じょうひょう)心中(しんちゅう)(ひそ)かに比較(ひかく)する。(かれ)方源(ほうげん)殺招(さっしょう)印象(いんしょう)は、(いま)王庭之争(おうていのあらそい)(とき)(とど)まっていた。


突然(とつぜん)常飚(じょうひょう)心中(しんちゅう)霊光(れいこう)(ひらめ)き、(ひと)つの猜想(さそう)()かんだ。


(しから)れども、(すこ)蹊跷(けいこう)である。(ふた)つの殺招(さっしょう)(かく)()ているとは。


もしかすると……()()殺招(さっしょう)こそが原版(げんぱん)であり、常山陰(じょうさんいん)殺招(さっしょう)は、流布(るふ)した欠陥版本(けっかんばんぽん)を、(かれ)が偶々(たまたま)()にしたものかもしれぬ。」


(かれ)(かんが)えば(かんが)える(ほど)()可能性(かのうせい)(たか)いと(かん)(はじ)めた。


常山陰(じょうさんいん)(すで)奴道大師(どどうたいし)たり。奴道(どどう)天賦(てんぷ)()りながら、(どう)して力道上(りきどうじょう)にも天分(てんぶん)()ろうか?


呵呵(かか)将来(しょうらい)(かれ)(ほうむ)(とき)()()殺招(さっしょう)(あら)わせば、常山陰(じょうさんいん)如何(いか)なる表情(ひょうじょう)()せるであろうか?


(まこと)(たの)しみであるな。」


(おも)(いた)()(ところ)に、常飚(じょうひょう)口元(くちもと)(おも)わず(かす)かな()()かんだ。


丁度(ちょうど)()(とき)下僕(しもべ)(はし)()り、潘平(はんぺい)(たず)ねて()たと(しら)せた。


常飚(じょうひょう)(ひと)思案(しあん)し、潘平(はんぺい)来意(らいい)大凡(おおよそ)(さと)った。


(かれ)()書斎(しょさい)案内(あんない)し、()(ちゃ)でもてなせ。


()れは稍後(ややおく)れて(まい)る。」


下僕(しもべ)(めい)じた。


殺招(さっしょう)試験(しけん)(ため)常飚(じょうひょう)衣服(いふく)最早(もはや)()()れ、(やぶ)(ふち)であった。


衣替(ころもが)えを()ませ、書斎(しょさい)(とう)するや、客席(きゃくせき)()わる潘平(はんぺい)茶杯(ちゃわん)(かか)げて牛飲(ぎゅういん)する姿(すがた)()(うつ)った。


()良茶(りょうちゃ)無駄(むだ)なり。」


常飚(じょうひょう)心中(しんちゅう)嗤笑(ししょう)しつつ、拱手(きょうしゅ)して(こえ)()けた。


潘兄(はんけい)()眉宇(びう)には喜色(きしょく)()()ち。


(おも)うに、殺招(さっしょう)試験(しけん)()()()りと()受けたり。」


「ははは、常兄(じょうけい)()推察(すいさつ)(まさ)()たれり。


()殺招(さっしょう)()(たえ)なること毫巔(ごうてん)(きわ)まり、(じつ)強烈(きょうれつ)なり。」


潘平(はんぺい)三声(さんせい)高笑(たかわら)いし、話頭(わとう)(てん)じて()う。


(ただ)し、其中(そのちゅう)(いく)つか関隘疑難(かんがいぎなん)()り。


()三度(さんど)試用(しよう)すれど、毎回(まいかい)殺招(さっしょう)(てっ)した(のち)(はら)(いた)()(がた)し。


()(ひと)(たび)(ごと)()(いた)()し。


(あに)くんぞ()殺招(さっしょう)後遺症(こういしょう)なるや?」


「おや?」


常飚(じょうひょう)()(こと)()き、()()らした。


()症状(しょうじょう)(なんじ)(こと)なり、(はら)(いた)みでは()く、(あたま)眩暈(めまい)(しば)しの眼花失聰(がんかしっそう)である。


(なんじ)()ずとも、()れも(また)(なんじ)(たず)()(こと)(ろん)ぜんとしていた(ところ)であった。」


二人(ふたり)片時(かたとき)議論(ぎろん)したが、(らち)()かぬ。


彼等(かれら)(ひと)つには力道(りきどう)専修(せんしゅ)せず、(ふた)つには煉道(れんどう)造詣(ぞうけい)()し。


所謂(いわゆる)探讨(たんとう)とは()え、()试用体験(しようたいけん)(いき)()ず、根本(こんぽん)深入(ふかい)りすることは出来(でき)なかった。


潘平(はんぺい)提言(ていげん)した。


()(かん)()(とお)した(もの)は、我々(われわれ)の(ほか)に、(さら)三人(さんにん)()る。


(いず)れを彼等(かれら)(まね)き、(とも)探讨(たんとう)せんには()かず。


交情(こうじょう)()うものは、交流(こうりゅう)(なか)から(しょう)ずるもの。


(なさ)けが(じゅく)した()(とき)彼等(かれら)殺狼同盟(さつろうどうめい)()れん!」


潘平(はんぺい)(ひと)仲間(なかま)()()れることを(わす)れず、常飚(じょうひょう)(わら)って、曖昧(あいまい)()った。


()(けん)(すで)手配(てはい)()み。()数日(すうじつ)(ちゅう)効果(こうか)(あら)わると(しん)じておる。」


……


王庭福地(おうていふくち)聖宮(せいきゅう)より千里(せんり)(へだ)てた(ところ)


蒼翠(そうすい)(しげ)密林(みつりん)(なか)一隊(いったい)蛊師(こし)が、小心翼翼(しょうしんよくよく)(すす)んでいた。


「ガサリ」


馬鴻運(ばこううん)(あし)(もと)枯木(かれき)(あやま)って()(くだ)いた。


一行(いっこう)動作(どうさ)戛然(かつぜん)()み、非難(ひなん)眼差(まなざ)しが一斉(いっせい)(かれ)(つど)った。


()間抜(まぬ)野郎(やろう)何度(なんど)()ったら()かるんだ、足元(あしもと)()()けろと!」


隊列(たいれつ)首領(しゅりょう)(こえ)(ひく)()さえ、()見開(みひら)いて叱責(しっせき)した。


「すみません、すみません! わざとじゃなかったんです!」


馬鴻運(ばこううん)(あわ)てて()()った。


(だま)れ! (だま)れ!」


「しっ! (こえ)をひそめろ、()間抜(まぬ)けが!」


(まわ)りの蛊師(こし)たちは(いろ)(うしな)い、馬鴻運(ばこううん)(そば)()(ひと)りは、(あせ)りの(あま)(かれ)(くち)(じか)()さえた。


首領(しゅりょう)表情(ひょうじょう)(おごそ)かで、(かす)かに殺気(さっき)()び、焦燥感(しょうそうかん)(にじ)ませて()った。


全員(ぜんいん)(しず)かにしろ。鉄嘴鳥(てつしちょう)()れを(おど)ろがせたら、我々(われわれ)は万事休(ばんじきゅう)すだ。


今回(こんかい)目的(もくてき)(とり)(たまご)(ぬす)むだけだ。(ぬす)んだら()ぐに撤収(てっしゅう)する。


(だれ)邪魔(じゃま)をしたら、其奴(こいつ)()(さき)始末(しまつ)するぞ!


首領(しゅりょう)()一行(いっこう)唯一(ゆいいつ)三転蛊師(さんてんこし)であり、実力(じつりょく)(つよ)ければ、(おの)ずと(おど)しも()く。


()言葉(ことば)()き、一同(いちどう)(あわ)てて(うなず)()った。馬鴻運(ばこううん)(また)()(なか)(ふく)まれる。


首領(しゅりょう)一巡(いちじゅん)見渡(みわた)し、視線(しせん)馬鴻運(ばこううん)(うえ)(とど)め、(あらた)めて(するど)目付(めつ)けを()びせた。


心中(しんちゅう)(すで)決意(けつい)(かた)める。


()任務(にんむ)()わり次第(しだい)此奴(こいつ)隊伍(たいご)から()()してやる。二転(にてん)実力(じつりょく)()るとて、(なん)()しになる?


ああ、()れも()(くも)っていたよ。


(かれ)()二転(にてん)蛊虫(こちゅう)良質(りょうしつ)(そろ)っているのを()て、仲間(なかま)()りを(ゆる)してしまった。


蛊師(こし)()(ほど)愚鈍(ぐどん)では、蛊虫(こちゅう)()くとも(なん)(やく)()とうか?」


ザアアアッ!


丁度(ちょうど)()(とき)密林(みつりん)(なか)大波(おおなみ)(ごと)轟音(ごうおん)(ひび)(わた)った。


大量(たいりょう)鉄嘴鳥(てつしちょう)が、(つばさ)(はげ)しく()ばたかせ、(えだ)(あいだ)から(そら)()()がる。


()光景(こうけい)()にした蛊師(こし)たちは、(またた)()氷窟(こおりあな)()ちた(ごと)衝撃(しょうげき)()けた。


(なん)たることだ!?」


最悪(さいあく)だ、鳥群(とりむれ)(おどろ)いた! (はや)()げろ!」


馬鴻運(ばこううん)全部(ぜんぶ)貴様(きさま)仕業(しわざ)だ!


此度(こたび)生き()びたら、(かなら)清算(せいさん)してやる!!」


衆人(しゅうじん)(ある)いは恐慌(きょうこう)()られ、(ある)いは怒濤(どとう)(いか)りを爆発(ばくはつ)させた。


()て、鳥群(とりむれ)南方(なんぽう)()()っている。我々(われわれ)が(おどろ)かしたわけでは()い。


看来()るに、常家(じょうけ)()任務(にんむ)()()った(もの)は、(ほか)にも()るようだな!」


首領(しゅりょう)状況(じょうきょう)看取(みと)り、心中(しんちゅう)(おお)いに(よろこ)び、(おも)わず(さけ)んだ


一同(いちどう)()(こと)()き、一斉(いっせい)(なが)めやれば、()たして(しか)り。


(とみ)にして心情(しんじょう)大転回(だいてんかい)す。


(たす)けてくれ、我々(われわれ)を(すく)え!」


一団(いちだん)蛊師(こし)疾走(しっそう)して退却(たいきゃく)し、彼等(かれら)方向(ほうこう)()()んで()る。


密集(みっしゅう)せる鉄嘴鳥(てつしちょう)()れも(また)()()せられ、蠱師(こし)たちは()(みは)りんばかりの驚愕(きょうがく)(さま)である。


()まれ、近付(ちかづ)くな!」


首領(しゅりょう)絶叫(ぜっきょう)する。「()以上(いじょう)(ちか)()けば、貴様等(きさまら)()(さき)()る!」


(かしら)()てください。彼等(かれら)服装(ふくそう)は、常家(じょうけ)(もの)のようですが。」


馬鴻運(ばこううん)躊躇(ちゅうちょ)しながら言上(げんじょう)する。


首領(しゅりょう)瞋目(しんもく)し、(あや)うく()()げんとした。


()間抜(まぬ)けが、(いのち)()るのか?()らねえなら(たす)けに()って()い!」と怒罵(どば)した。


馬鴻運(ばこううん)以前(いぜん)地魁獣群(ちかいじゅうぐん)(けん)(おも)()した。


(かれ)()蔣凍(しょうとう)注意(ちゅうい)(うなが)そうとしただけなのに、(ぎゃく)(おとしい)れられたのだ。


()()運命(うんめい)(つよ)からずんば……」


(おも)(いた)り、(かれ)身震(みぶる)いし、首領(しゅりょう)()う。


(しか)らば、我々(われわれ)は如何(いか)にすべきでしょうか?」


首領(しゅりょう)()()(しば)り、常家(じょうけ)蛊師(こし)警告(けいこく)無視(むし)し、()(みち)()(さま)(にら)()け、(あし)()()らして(さけ)んだ。


(ほか)にどうしようと()うのだ?()()りに()げるしかあるまい!」


衆人(しゅうじん)は蜘蛛の()()らす(ごと)()(まど)い、馬鴻運(ばこううん)一瞬(いっしゅん)呆然(ぼうぜん)とした(のち)(あわ)てて方角(ほうがく)(えら)び、必死(ひっし)(はし)()だした。



殿(との)()れこそ馬鴻運(ばこううん)馬英傑(ばえいけつ)腹心(ふくしん)()(わしま)す」


()(まよ)常家(じょうけ)蛊師(こし)たちは、表向(おもてむ)きは(あわ)てふためいている(よう)()えながら、(じつ)は各々(おのおの)冷静沈着(れいせいちんちゃく)胸中(きょうちゅう)(たの)(ところ)あり。


常家(じょうけ)首領(しゅりょう)——常飚(じょうひょう)腹心(ふくしん)()一人(ひとり)——は馬鴻運(ばこううん)後姿(うしろすがた)(なが)め、一瞬(いっしゅん)呆然(ぼうぜん)とする。


此奴(こいつ)馬鹿(ばか)なのか?移動蛊(いどうこ)()るのに使(つか)わぬとは?」


常家(じょうけ)(さく)(めぐ)らせる以上(いじょう)馬鴻運(ばこううん)に関する情報(じょうほう)(おさ)えており、(かれ)(ゆう)する蛊虫(こちゅう)(ことごと)二転(にてん)であり、()良質(りょうしつ)(そろ)っていることを()っている。


「まずい、()()かれてしまう。畜生(ちくしょう)(なん)彼等(かれら)はあんなに(はや)いんだ?……移動蛊(いどうこ)使(つか)っているからか。あっ!そうだ、(おれ)にも移動蛊(いどうこ)()ったんだ!」


(はし)りながら、馬鴻運(ばこううん)(つよ)(みずか)らの(ひたい)(たた)き、(あわ)てて蛊虫(こちゅう)(さい)(どう)する。()(はや)さは(げき)(ぞう)した。


「やっと(おも)()したか。……あれ? (やつ)何故(なぜ)(ひだり)()げる?」


首領(しゅりょう)(ふたた)呆然(ぼうぜん)とする。


(かれ)()(よし)もない、馬鴻運(ばこううん)方向音痴(ほうこうおんち)で、方向感覚(ほうこうかんかく)(きわ)めて(にぶ)いということを。


以前(いぜん)費家(ひけ)政変(せいへん)(おり)(ちち)()(てい)して()がしたのに、大回(おおまわ)りして(もと)場所(ばしょ)(もど)ってしまった過去(かこ)があった。


馬鴻運(ばこううん)()逃走(とうそう)で、状況(じょうきょう)一層(いっそう)深刻(しんこく)となった。


首領(しゅりょう)(あわ)てて指揮(しき)()る。


「そち、そちとそち、()ぐに馬鴻運(ばこううん)()い、(かなら)ずや保護(ほご)せよ。


(なら)びに常麗(じょうれい)()に、()(まわ)準備(じゅんび)するよう(もう)せ!」


承知(しょうち)いたしました。閣下(かっか)。」


常家(じょうけ)蛊師(こし)は、いずれも精鋭(せいえい)(ぞろ)いとはいえ、馬鴻運(ばこううん)(ほう)(こう)(さだ)めず(はし)(まわ)るため、頻繁(ひんぱん)危険(きけん)(おちい)った。


常家(じょうけ)蛊師(こし)たちは、鉄嘴鳥(てつしちょう)()れを()()けつつ、(あん)がりの(なか)(かれ)(まも)り、(さら)()行動(こうどう)見破(みやぶ)られぬよう(つと)めるのは、(なみ)大抵(たいてい)ならぬ困難(こんなん)であった。


本来(ほんらい)十中八九(じっちゅうはっく)見込(みこ)まれた謀略(ぼうりゃく)も、()(ため)数多(あまた)有能(ゆうのう)(もの)(うしな)結果(けっか)となった。


(たす)けて……お(ねが)い……」


常麗(じょうれい)地面(じめん)(よこ)たわり、(いき)()()え、()(もの)(あわ)れみを(もよお)させる(さま)


()()き、(ゆき)(ごと)(こう)(けん)(あら)わし、(みだ)(がみ)楚楚(そそ)として(あわ)れなる(さま)は、(あた)(おど)(おび)えた小白兎(こしろうさぎ)(ごと)し。


馬鴻運(ばこううん)()(よう)()けて()たが、()前方(ぜんぽう)のみを()つめ、必死(ひっし)(はし)(つづ)ける。


()たして、(かれ)常麗(じょうれい)存在(そんざい)(まった)気付(きづ)かなかった。


常麗(じょうれい)一瞬(いっしゅん)呆然(ぼうぜん)としたが、窮地(きゅうち)機知(きち)(はたら)かせ、馬鴻運(ばこううん)()()()らんとする瞬間(しゅんかん)(あし)()()して()()けた。


「「どすん!」


馬鴻運(ばこううん)地面(じめん)派手(はで)(ころ)がり、()(かえ)って()たその()光景(こうけい)呆然(ぼうぜん)とした。


(なん)(うつく)しい(むすめ)だろう……」


普段(ふだん)愚鈍(ぐどん)(かれ)も、(おも)(した)年頃(としごろ)少年(しょうねん)である。


公子(こうし)何卒(なにとぞ)(わたくし)をお(すく)いくださいませ。」


常麗(じょうれい)の"(うめ)き"(ごえ)は、馬鴻運(ばこううん)(こころ)をくすぐらずにはいられなかった。


「は、はい!」


馬鴻運(ばこううん)(あわ)てて(こた)え、右往左往(うおうさおう)しながら常麗(じょうれい)背負(せお)い、(ふたた)(はし)()した。」











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