表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
蛊真人  作者: 魏臣栋
魔头乱世
562/688

第一百五十七節:贪生怕死因由何?

(あらた)めて()えば、()中洲(ちゅうしゅう)蛊仙(こせん)並大抵(なみたいてい)では()い。()くも八十八角真陽楼(はちじゅうはっかくしんようろう)漏洞(ろうどう)見破(みやぶ)り、()くも見事(みごと)利用(りよう)()たものだ。(あき)らかに、彼(あるいは彼女)も煉道(れんどう)大家(たいか)、いや、()(いき)(たっ)する以上(いじょう)(すく)なくとも煉道(れんどう)宗師(そうし)()ぶに相応(ふさわ)しい!」


()くも仙蛊(せんこ)一匹(いっぴき)伝承(でんしょう)(しな)として(のこ)したものだ。()れは(まこと)仙蔵(せんぞう)である!偽物(にせもの)灰白石板(かいはくせきばん)手掛(てが)かりとして(もち)いた発想(はっそう)は、独創(どくそう)匠心(しょうしん)()ち、(じつ)奇抜(きばつ)(かんが)えと()わねばなるまい。如何(いか)なる継承者(けいしょうしゃ)選定(せんてい)せんとしているのか……」


(もっと)重要(じゅうよう)密語(みつご)()けた(こと)で、(かえ)って(あたら)しい疑問(ぎもん)()()がってきた。


方源(ほうげん)(かる)(くび)()り、脳裏(のうり)渦巻(うずま)雑多(ざった)思考(しこう)(はら)()とした。


(いず)れにせよ、()伝承(でんしょう)仙蛊(せんこ)(かか)わる。()()でも(こころ)みる価値(かち)がある。(つぎ)関連(かんれん)する蛊虫(こちゅう)準備(じゅんび)()()からねばなるまい。()れには(すく)なくとも半月余(はんつきあま)りは(よう)するだろう……」


地中(ちちゅう)(ひかり)()み、(ぼう)万丈(ばんじょう)(たか)く、百里(ひゃくり)(てん)(あそ)び、梅雪(ばいせつ)()(うた)う——


()四句(しく)言葉(ことば)簡素(かんそ)ながらも、方源(ほうげん)煉道(れんどう)大師(たいし)としての基盤(きばん)()ければ解読(かいどく)できなかったであろう。


現時点(げんじてん)方源(ほうげん)理解(りかい)した成果(せいか)(もと)づけば、八十八角真陽楼(はちじゅうはっかくしんようろう)偉力回流(いりょくかいりゅう)()りて神秘(しんぴ)仙蛊(せんこ)煉成(れんせい)するには、二百余(にひゃくよ)りもの蛊虫(こちゅう)必要(ひつよう)であり、其中(そのなか)四转(してん)五转蛊(ごてんこ)だけで二十八匹(にじゅうはっぴき)(およ)ぶ。


()れは()(まで)一回限(いっかいかぎ)りの成功(せいこう)想定(そうてい)した場合(ばあい)数量(すうりょう)である(こと)(わす)れてはならない。


方源(ほうげん)煉蛊(れんこ)準備(じゅんび)(ととの)えるには、(すく)なくとも三倍量(さんばいりょう)必要(ひつよう)だ。何故(なぜ)なら煉成(れんせい)過程(かてい)での失敗(しっぱい)により煉蛊(れんこ)頓挫(とんざ)する(こと)(ふせ)がねばならず、失敗時(しっぱいじ)には予備(よび)蛊虫(こちゅう)必須(ひっす)となるからである。


十六日後(じゅうろくにちご)


大殿(たいでん)(なか)で、黒楼蘭(こくろうらん)は「(こく)暴君(ぼうくん)」の風範(ふうはん)遺憾(いかん)なく発揮(はっき)し、獰猛(どうもう)咆哮(ほうこう)し、(こころ)(いか)りを(ほしいまま)爆発(ばくはつ)させていた。


黒楼蘭(こくろうらん)訓斥(くんしょく)されて(あたま)()げられず、(なか)には拳打蹴蹴(けんちしゅうしゅう)(くわ)えられる家老(かろう)たちも、(みな)(こえ)()せず(ふる)()がっていた。


黒楼蘭(こくろうらん)王庭福地(おうていふくち)(はい)って以来(いらい)性格(せいかく)日増(ひま)しに狂暴(きょうぼう)さを()していた。八十八角真陽楼(はちじゅうはっかくしんようろう)(ひら)かれてからは、(さら)拍車(はくしゃ)がかかり、火薬(かやく)(たる)のような性格(せいかく)()り、(いささ)かの(こと)配下(はいか)罵倒(ばとう)殴打(おうだ)するようにまでなった。今日(こんにち)(いた)るまで、(すで)三人(さんにん)黒家(こくけ)家老(かろう)重傷(じゅうしょう)()い、(いま)病床(びょうしょう)()せったままである。


族長様(ぞくちょうさま)(けっ)して我々(われわれ)が(おこた)っている(わけ)ではございません。()七十八関(ななじゅうはっかん)(じつ)難関(なんかん)(きわ)まりません。(まも)りを(かた)める金白虎虚像(きんぱくこきょぞう)実力(じつりょく)強靭(きょうじん)で、(すで)荒獣(こうじゅう)三割(さんわり)(ほど)(ちから)(ゆう)しております。此方(こちら)(ただ)凡人(ぼんじん)()全力(ぜんりょく)()くしても、(かろ)うじて攪乱(かくらん)できるのみで、強力(きょうりょく)攻撃手段(こうげきしゅだん)()けております。()(うえ)(ひと)たび金白虎(きんぱくとら)攻勢(こうせい)(てん)じれば、此方(こちら)蛊師(こし)たちには(ふせ)(よう)がございません。」


家老(かろう)筆頭(ひっとう)である黒沛(こくはい)は、黒楼蘭(こくろうらん)(いか)りが一息(ひといき)ついた(ころ)見計(みはか)って、(つつ)ましく進言(しんげん)した。


黒楼蘭(こくろうらん)(かれ)(にら)みつけ、罵倒(ばとう)した。「()()(こと)は全て戯言(たわこと)だ!金白虎虚像(きんぱくとらきょぞう)攻勢(こうせい)(たし)かに(つよ)いが、我々(われわれ)が一丸(いちがん)となり、犠牲(ぎせい)(いと)わなければ、(かなら)制限時間(せいげんじかん)(ない)(たお)()げられる!()れなのに貴様等(きさまら)(なん)(おそ)れて(まえ)(すす)まず、()黒家(こくけ)勇武(ゆうぶ)()()()としている!」


家老(かろう)たちは罵声(ばせい)(ちぢ)()がり、(まゆ)()れて、誰一人(だれひとり)として(くち)(ひら)こうとしなかった。


黒楼蘭(こくろうらん)()(ぶん)は、実際(じっさい)(てき)(かんが)えれば一理(いちり)ある。


金白虎虚像(きんぱくとらきょぞう)への対処(たいしょ)は、(はじ)めての(こと)ではない。


()本気(ほんき)犠牲(ぎせい)(いと)わず、(すす)んで(だれ)かが(たて)となれば、仮令(たとえ)金白虎虚像(きんぱくとらきょぞう)(つめ)(もと)()ったとて、(ほか)(もの)時間(じかん)(かせ)(こと)出来(でき)るのである。


黒家(こくけ)者共(ものども)攻勢(こうせい)は、綿々(めんめん)と(ちから)()きが(ごと)くに()えても、時間(じかん)さえ十分(じゅうぶん)()れば、(ちり)()もって(やま)()り、(かなら)ずや群蟻(ぐんぎ)(ぞう)()むが(ごと)く、金白虎虚像(きんぱくこきょぞう)()(たお)(こと)出来(でき)よう。


(しか)るに現実(げんじつ)は、金白虎虚像(きんぱくこきょそう)一旦(いったん)攻撃(こうげき)開始(かいし)すると、(みな)()(おそ)れて()()びんとし、尻込(しりご)みする(ため)黒楼蘭(こくろうらん)八十八角真陽楼(はちじゅうはっかくしんようろう)()けた攻略(こうりゃく)()(せき)(あし)()みし、一歩(いっぽ)前進(ぜんしん)できずにいる。


大殿(たいでん)(ちゅう)には、黒楼蘭(こくろうらん)咆哮(ほうこう)が轟々(ごうごう)と反響(はんきょう)していた。


()(とき)(いか)(くる)えば六親(りくしん)とも()()さない()(こく)暴君(ぼうくん)(さか)らおうとする(もの)一人(ひとり)もいない。


黒楼蘭(こくろうらん)(ひと)しきり鬱憤(うっぷん)()らした(のち)(くも)った(おも)()ちで主座(しゅざ)()いた。


(かれ)心中(しんちゅう)には鬱積(うっせき)した(いきどお)りが渦巻(うずま)いていた。(とく)に、(こえ)()てずに(だま)()家老(かろう)(たち)(なが)めれば、腹立(はらだ)たしさが一層(いっそう)(つの)るのであった。


(いか)りの(ほか)に、(かれ)には無奈(むだい)(ねん)もあった。


王庭之争(おうていのあらそい)においては、此等(これら)黒家(こくけ)家老(かろう)たちは各々(おのおの)勇奮(ゆうふん)争先(そうせん)し、勇猛(ゆうもう)無畏(むい)であっ た。(しか)るに此処(ここ)(いた)っては、(おく)(びょう)(ふう)手足(てあし)(ちぢ)め、胆力(たんりょく)何処(いずこ)()()せたのか?


(じつ)()えば、黒楼蘭(こくろうらん)内心(ないしん)では理解(りかい)していた。


王庭之争(おうていのあらそい)では、賞罰(しょうばつ)公明(こうめい)で、人々(ひとびと)は(きそ)って奮戦(ふんせん)した。(すべ)ては名利(みょうり)(ため)(つよ)きを(もと)める(ため)生存(せいぞん)(ため)であった。八十八角真陽楼(はちじゅうはっかくしんようろう)(いた)っては、(せき)突破(とっぱ)する褒賞(ほうしょう)(ことごと)族長(ぞくちょう)()()す。当然(とうぜん)、人々(ひとびと)の闖関(ちんかん)への積極性(せっきょくせい)(ひく)くなる。


(もっと)重要(じゅうよう)一因(いちいん)は、王庭之争(おうていのあらそい)(すで)勝利(しょうり)し、生存(せいぞん)危機(きき)最早(もはや)()く、聖宮(せいきゅう)以外(いがい)にも数多(あまた)伝承(でんしょう)存在(そんざい)する。()()期間(きかん)(やす)らかに()ごせば、王庭福地(おうていふくち)()(のち)には、(かなら)ずや一層(いっそう)(かがや)かしい未来(みらい)()っているからである。


(おの)身命(しんめい)(なげう)って(たて)となり、(ほか)()する(よう)真似(まね)は、馬鹿(ばか)げている! 黒家(こくけ)家老(かろう)連中(れんちゅう)は、(ひと)()一人(びと)狸親父(たぬきおやじ)(そろ)いだ。


生命(せいめい)(たも)つこそ最優先(さいゆうせん)()以外(いがい)は、(たと)黒楼蘭(こくろうらん)狗血(くけつ)()びせられる(ほど)罵倒(ばとう)されようが、(なん)影響(えいきょう)があろう? 仮令(たとえ)黒楼蘭(こくろうらん)(なぐ)(たお)され病床(びょうしょう)()こうとも、()(くら)べれば些事(さじ)ではないか?


黒楼蘭(こくろうん)家老(かろう)(ども)腹芸(はらげい)看過(かんか)(はず)()い。


(たと)()れが五转(ごてん)強者(きょうじゃ)(いえ)ども、人心(じんしん)(あやつ)(こと)出来(でき)ぬ。(こころ)離散(りさん)しては、如何(いか)なる(つよ)部族(ぶぞく)(いえ)統率(とうそつ)(がた)し。()むを()ぬ……」


黒楼蘭(こくろうらん)心中(しんちゅう)(ひと)(なげ)き、(くち)(ひら)いた。「(すで)(しか)りとあらば、()れは()()八十八角真陽楼(はちじゅうはっかくしんようろう)開放(かいほう)し、衆知(しゅうち)(しゅう)して(せき)()めん。」


外部(がいぶ)援軍(えんぐん)(まね)くには、来客令(らいきゃくれい)(よう)る。


(しか)るに(いま)王庭福地(おうていふくち)には、黒家(こくけ)以外(いがい)にも、耶律家(やりつけ)馬家(ばけ)など、数多(あまた)黄金部族(おうごんぶぞく)族員(ぞくいん)存在(そんざい)する。


(おも)(えが)くに、一旦(いったん)黒楼蘭(こくろうらん)彼等(かれら)八十八角真陽楼(はちじゅうはっかくしんようろう)開放(かいほう)すれば、()れら族員(ぞくいん)(きそ)って()(あつ)まる(こと)必定(ひつじょう)である。()くして、彼等(かれら)(たて)として利用(りよう)できる(わけ)だ。


家老(かろう)たちは黒楼蘭(こくろうらん)()言葉(ことば)()き、(たが)いに()くばせで暗黙(あんもく)(うち)意思(いし)(つう)()った。()方法(ほうほう)自分達(じぶんたち)第二線(だいにせん)退(しりぞ)けられるが、彼等(かれら)(すこ)しも(この)んでいない様子(ようす)である。


黒沛(こくはい)(だい)家老(かろう)(すす)()言上(ごんじょう)した。「族長様(ぞくちょうさま)()計略(けいりゃく)(こう)みでは御座(ござ)いますが、御油断(ごゆだん)()りませぬ。此等(これら)者共(ものども)は、(たし)かに先祖(せんぞ)()()いてはおりますが、所詮(しょせん)()黒家(こくけ)(もの)では御座(ござ)いません。一旦(いったん)(せき)突破(とっぱ)して利益(りえき)()れば、(おそ)らく()れを()()そうとは(いた)すまいと(ぞん)じます。」


()(よう)御座(ござ)います、殿(との)。」


黒旗勝(こくきしょう)家老(かろう)同調(どうちょう)して(もう)()げた。


()黒家(こくけ)肝胆(かんたん)(くだ)き、(まつりごと)精励(せいれい)し、千辛万苦(せんしんばんく)(すえ)此度(こたび)王庭之争(おうていのあらそい)魁首(かいしゅ)()ました。()八十八角真陽楼(はちじゅうはっかくしんようろう)(ことごと)く我々(われわれ)の(もの)何故(なぜ)外部(がいぶ)(もの)利益(りえき)分配(ぶんぱい)せねばならぬのでござりましょう?」


()(よう)措置(そち)には先例(せんれい)御座(ござ)いますが、歴史(れきし)(ひもと)けば、歴然(れきぜん)として弱小部族(じゃくしょうぶぞく)僥倖(ぎょうこう)にも勝利(しょうり)()(さい)自力(じりき)では(せき)()()れず、(ほか)黄金部族(おうごんぶぞく)動員(どういん)せざるを()なかった事例(じれい)御座(ござ)います。()るに()黒家(こくけ)戦力充実(せんりょくじゅうじつ)人才豊富(じんざいほうふ)何故(なん)として他力(たりき)()必要(ひつよう)御座(ござ)いましょう?」


(ふん)!」


黒楼蘭(こくろうらん)(かす)かに(まゆ)()()げた。


戦力充実(せんりょくじゅうじつ)(もう)すなら、何故(なぜ)一頭(いっとう)金白虎虚像(きんぱくこきょぞう)さえ()(たお)せぬのか?貴様等(きさまら)狗生(いぬ)畜生(ちくしょう)め、一人(ひとり)一人(びと)(おの)身命(しんめい)()しみ、外部(がいぶ)(もの)危険(きけん)(おか)して(はたら)かせようとしながら、()(もの)利益(りえき)()(こと)(おそ)れる。()()に、()(ほど)都合(つごう)()(はなし)()ると思うか?」


家老(かろう)連中(れんちゅう)とは(こと)なり、黒楼蘭(こくろうらん)心中(しんちゅう)には(すで)焦燥感(しょうそうかん)(つの)っていた。


(かれ)大力真武体(だいりきしんぶたい)であり、(かなら)(ひと)つの力道仙蛊(りきどうせんこ)()にしなければ蛊仙(こせん)昇格(しょうか)することは(かな)わない。


(さら)に、(せん)(くらい)(のぼ)って(はじ)めて、生命(せいめい)危機(きき)(だっ)する(こと)ができるのである。


(しか)八十八角真陽楼(はちじゅうはっかくしんようろう)(なか)()たして力道仙蛊(りきどうせんこ)存在(そんざい)するのか? 何層目(なんそうめ)()るのか? ()れらは(みな)未知数(みちすう)である。


(ゆえ)に、(かれ)慣例(かんれい)()(やぶ)り、黄金部族(おうごんぶぞく)協力(きょうりょく)して(せき)()める局面(きょくめん)(うなが)(こと)一心(いっしん)であった。一層(いっそう)攻略(こうりゃく)する(ごと)に、手中(しゅちゅう)楼閣主令(ろうかくしゅれい)昇格(しょうか)し、(さら)なる攻略(こうりゃく)容易(ようい)になるのである。


此度(こたび)(せき)足止(あしど)めを()らい、屡々(しばしば)(たたか)い屡々(しばしば)(やぶ)れてはいるが、黒楼蘭(こくろうらん)()って()れは(むし)好機(こうき)である。


(かれ)()()()じて難題(なんだい)()()け、(ふたた)び堂上どうじょう)で怒号(どごう)(とどろ)かせ(はじ)めた。


怒号(どごう)大殿(たいでん)(とどろ)き、人々(ひとびと)の(みみ)(よう)えさせた。


黒楼蘭(こくろうらん)威勢(いせい)凶名(きょうめい)(はばか)り、家老(かろう)たちは妥協(だきょう)せざるを()なかった。


黒沛(こくはい)大家老(たいかろう)憂慮(ゆうりょ)面持(おもも)ちで言上(げんじょう)した。「八十八角真陽楼(はちじゅうはっかくしんようろう)開放(かいほう)するは、洪水(こうずい)(はな)つに(ひと)しき。一旦(いったん)(いきお)いを()ば、(かなら)ずや惨憺(さんたん)たる損害(そんがい)(こうむ)りましょう。老臣(ろうしん)(もう)()げまするに、()()でも抑制(よくせい)(くわ)えるべし。狼王常山陰(ろうおうじょうざんいん)教訓(きょうくん)は、眼前(がんぜん)出来事(できごと)御座(ござ)います」


()言葉(ことば)は、家老連中(かろうれんちゅう)(ふか)共感(きょうかん)(ただ)ちに()()こした。


()る者は(しぶ)口調(くちょう)()った。「同感(どうかん)だ。狼王(ろうおう)のあの無頼(ぶらい)さと()ったら。利益(りえき)を独り(ひとりじ)めし、(いま)だに閉関(へいかん)したきり。(かげ)(くすくす)(わら)っているに(ちが)いない!」


()る者は軽蔑(けいべつ)したように(はな)(わら)った。「八十八角真陽楼(はちじゅうはっかくしんようろう)は全て()黒家(こくけ)(もの)(かれ)(せき)()めさせたのは、()()けてやったのだ。()結末(けつまつ)()仕打(しう)ちとは。ふん、(なに)北原(ほくげん)英雄(えいゆう)だ、(じつ)(おん)(わす)れた不義者(ふぎもの)(わたくし)()る!」


()る者は(つめ)たい()()った。「私見(しけん)では、此度(こたび)八十八角真陽楼(はちじゅうはっかくしんようろう)開放(かいほう)には、常山陰(じょうさんいん)()必要(ひつよう)()い。(ひと)教訓(きょうくん)(あた)うべきだ!」


黒楼蘭(こくろうらん)()ややかに(はな)()らした。常山陰(じょうさんいん)()()いに(たい)し、勿論(もちろん)(かれ)(おお)いなる不満(ふまん)(いだ)いている。假令(たとえ)(ほか)(もの)であれば、とっくに()(くだ)していた(ところ)だ。


(ただ)常山陰(じょうさんいん)(ひと)ならぬ存在(そんざい)で、王庭決戦(おうていけっせん)での(たたか)姿(すがた)(いま)だに(ふか)(こころ)(きざ)まれている。()れを(いだ)いてないと()えば、それは虚偽(きょぎ)(うた)(こと)である。


しかし(あき)らかに方源(ほうげん)排斥(はいせき)するのは、得策(とくさく)とは()えない。度量(どりょう)()いと()なされる(うえ)万一(まんいつ)狼王(ろうおう)(おこ)らせれば、常山陰(じょうさんいん)(みずか)()(くだ)さずとも、天青狼群(てんせいろうぐん)()()けられる(おそ)れがある。


黒沛(こくはい)(だい)家老(かろう)()(ほう)から()提言(ていげん)()した以上(いじょう)(くわ)しく()べてみよ。」


黒楼蘭(こくろうらん)()(おろ)した。


黒沛(こくはい)(かす)かに()みを()かべ、理路整然(りろせいぜん)()()えて(むす)んだ。「明日(あした)より、八十八角真陽楼(はちじゅうはっかくしんようろう)開放(かいほう)されよ。(ただ)入楼(にゅうろう)(さい)しては、(だれ)であれ費用(ひよう)(おさ)めしむべし。一日(いちにち)八百名(はっぴゃくめい)のみ入楼(にゅうろう)(ゆる)し、()費用(ひよう)順位(じゅんい)(おう)じて逓増(ていぞう)せしむ。同時(どうじ)毒誓蛊(どくせいこ)(もち)い、()たる褒賞(ほうしょう)五割(ごわり)()黒家(こくけ)()(ぞく)せしむべし。」


一息(ひといき)()いて、(さら)(つづ)けた。「(よそ)(もの)は、(ろう)()らんと(ほっ)すれば、高値(たかね)にて我々(われわれ)の来客令(らいきゃくれい)(こう)(にゅう)せしむべし。」


()言葉(ことば)に、居並(いなら)家老(かろう)たちは()(かがや)かせ、口々(くちぐち)に賞賛(しょうさん)した。


黒楼蘭(こくろうらん)視線(しせん)一巡(いちじゅん)させ、上体(じょうたい)(うし)ろに()()かると、(ゆる)やかに双眼(そうがん)()じた。「()かろう。()(けん)貴様(きさま)(まか)せる。黒沛(こくはい)。」


黒沛(こくはい)(おお)いに(よろこ)び、「族長様(ぞくちょうさま)英明(えいめい)神武(しんぶ)()(たび)御認(おんみと)(いただ)(まこと)有難(ありがた)仕合(しあわ)せで御座(ござ)います」と(うやうや)しく謝辞(しゃじ)()べた。


八十八角真陽楼(はちじゅうはっかくしんようろう)開放(かいほう)(しら)せが(つた)わるや、聖宮(せいきゅう)(ない)(またた)くうちに大騒動(おおそうどう)()()こった。


数多(あまた)の人々(ひとびと)が申込(もうしこ)場所(ばしょ)殺到(さっとう)し、一方(いっぽう)で「黒家(こくけ)族人(ぞくじん)黒心臓(こくしんぞう)め、()くも()(ほど)入楼料(にゅうろうりょう)()()げるものだ」と罵倒(ばとう)しつつ、他方(たほう)では(きそ)って財布(さいふ)(ひも)(ゆる)め、入楼(にゅうろう)名額(めいがく)(めぐ)っては(たが)いに乱闘(らんとう)(えん)じた。


方源(ほうげん)冷眼(れいがん)(もっ)傍観(ぼうかん)し、心中(しんちゅう)ひそかに(よろこ)んだ。


(いま)(かれ)にとって、地丘伝承(ちきゅうでんしょう)継承(けいしょう)する(こと)こそが焦眉(しょうび)(きゅう)である。


假令(たとえ)黒楼蘭(こくろうらん)(みずか)(すす)んで協力(きょうりょく)(もと)めて(きた)とも、(かれ)(かなら)ずしも()()では()い。(いま)(ほか)(もの)(みな)八十八角真陽楼(はちじゅうはっかくしんようろう)()()られている。(まさ)伝承(でんしょう)着手(ちゃくしゅ)する絶好(ぜっこう)機会(きかい)である!














評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ