488.本選トーナメントで対峙しました
全国探索者覇勇戦四日目。
予選終了後は一日のインターバルがあり、いよいよ今日から本選となる。
二日間で決勝まで進み七日目に決勝を迎えるわけだが・・・まさかこういう組み合わせになるとは思っていなかった。
「この感じで行くと準決勝で岩城さんと氷室さんのどちらかと当たるんだね」
「まぁ順当に勝ち上がればそうなるな」
「手の内がわかっているだけに戦いづらいですね」
「仮にそれを勝ち上がっても決勝で待ってるのは月城さん達、以下にスキルを温存するかと考えていたけど、どうやらそういうわけにはいかなさそうだ」
トーナメントの組み合わせは完全にランダム、しかも事前準備をさせないように発表は当日の朝と言う念の入れよう。
で、その結果がこれ。
途中で当たるならまだよかったんだが、連戦となるとスキルの補充が間に合わないのでかなりシビアな戦いを迫られることになる。
それもまた運なんだろうけど・・・でも厳しいものがあるよなぁ。
「そもそも本選トーナメントでそこまで勝ち上がる前提なのが面白いよね」
「なんとなく行ける気がしないか?」
「なんとなくではなく、行くんです!」
「ここからはリルちゃんも一緒ですし、次の対戦相手は確実に行けるんじゃないでしょうか」
「相手は九州のBランク旅団、情報は無しか」
「遠隔攻撃を得意にしているみたいですよ」
「次からはオブジェクトも追加されるし、後ろに隠れられると厄介かもね」
桜さんはやる気十分、相手の情報はなさそうだけど決して勝てない相手ではないはずだ。
問題があるとすれば予選までの何もないリングから、本選用の巨大リングへと場所が変わる事。
そこには岩あり山あり罠ありと、広い中にも色々と仕掛けが施されているらしい。
それをかいくぐりながら相手に近づき対処しなければならないわけで。
今までのように突進で一気に!と言うわけにはいかない分、それぞれの連携が重要視されるというわけだ。
しかも初戦は俺達、開始まであと三十分しかない。
「ま、やるだけやるしかないだろ。みんな、気合入れていくぞ!」
「「「「おー!」」」」
「これより全国探索者覇勇戦本選トーナメント第一回戦を開催します!」
大歓声の中本選トーナメントがスタート、巨大なリングには大小さまざまな岩が設置され、その後ろに隠れることが出来るようだ。
なんだろう、サバゲーを彷彿とさせるけど要は倒せばいいんだろ?
「予選みたいにルナが敵を引き付けてっていうわけにはいかない、各自周囲を警戒しつつ攻める時に攻める感じで行こう。先行は俺とリル、ルナはゆっくり近づきつつ攻撃を引き受けて七扇さんと須磨寺さんは遠距離攻撃でよろしく。桜さんは抜けてきたやつの対処をしてくれ」
「了解!」
「罠もあるらしいので気を付けてくださいね」
「出来れば氷系の魔法を撃ちこんできてくれるといいんだけどなぁ」
「それは期待しすぎじゃないですかね」
遠距離攻撃を得意としているのなら魔法だって十分にあり得る、炎はブレスで対応できるけど氷系の魔法なら冷気耐性でほぼほぼスルー出来るので一気に接近できそうだ。
まぁ、氷のつぶてはかなり痛いので完全にノーダメージというわけにはいかないけどな。
「それでは、はじめ!」
上空に炎の魔法がはなたれ、それを合図に行動を開始。
【ビッグムルシェラゴのスキルを使用しました。ストックは後九つです】
このために吸収スキルを放棄して代わりにエコースキルを収奪してきた。
これがあればある程度の距離ならば岩の向こうも手に取るようにわかるし、罠だって発見できる。
罠と言ってもトリモチとか浅い落とし穴程度の物だけど動きを阻害されるという意味では非常に厄介、それを防ぎつつ素早く行動できるのは非常にポイントが高いといえる。
「おーっと!白狼の盾は新たにテイムモンスターを投入!あの純白の毛並み、あれが噂のフェンリルか!」
「前に一度話題になった後すっかり忘れていましたが、確かに新明選手はフェンリルとテイムしたっていう噂が流れていましたね」
「それが噂でないことをここで証明して見せたわけですが、しかし早い!まるで岩の向こうに何があるかわかっているような動きです!こんな隠し種を用意していたなんて・・・っとぉ!そこに無数の遠距離攻撃が向かっているぞぉぉぉ!?」
リルと一緒に岩の間を抜けて進んでいると、真上から様々な攻撃が飛んでくるのが見えた。
慌てて左右に散開、岩の後ろに隠れるも頭上から降り注ぐものは避けられない。
【リオーネキングのスキルを使用しました。ストックは後八つです】
このままだと矢の雨に降られてしまう、ということでシャウトスキルを使って矢の勢いを落としつつ魔法をホワイトベアのマントで受け止める。
リルはと言うと、ブレスを空に放って矢を無効化しつつ炎の魔法はかき消すことが出来たようだ。
蒸気が辺りに立ち込め一瞬だが彼らから俺達の姿が見えなくなる。
【スケルトンブッカーのスキルを使用しました。ストックは後五つです】
「くそ!消えたぞ!」
「かまうな撃ちこめ!弾幕を張るんだ!」
相手からは俺が見えなくなるけれど、俺には向こうの位置が手に取るようにわかる。
ランダムに降り注ぐ魔法や矢を避けながら少しずつリングを移動、流石にリルは隠れられないけれど高速移動で敵のヘイトを稼いでくれているおかげで安全に敵陣に入り込むことが出来た。
一抱えもある大きな岩の向こうには敵が二人、七扇さん達の狙撃を受けてなかなか頭を上げられないようだ。
そうこうしているうちにルナが中央付近まで移動、流石に無視することは出来ず他の二人が迎撃しつつリルを監視している。
残りの一人は一番奥で何やら仕込んでいる様子、となると倒すべきはこいつではなく奥か。
先に前の二人を倒す手もあるけれど七扇さん達が上手くくぎ付けにしてくれているのでそれを信じて奥まで行くとしよう。
「圧倒的!フェンリルと言うテイムモンスターを従え数的優位に立った白狼の盾が敵陣深く切り込んでいきます!」
「しかしリーダーの姿が見えませんね」
「何か隠密系のスキルを使用しているのでしょうか。いやはや、一体いくつスキルを持っているのやら」
「ギルド情報によると何やら珍しいスキルを取得しているそうです。詳細は不明ですが、それを使って複数のスキルを使用していると思って間違いないでしょう」
何やら俺のことが噂されているけれど、あれこれ手の内を晒すつもりはまだない。
出来るだけ最小のスキルで相手を倒したい所、エコースキルが切れる前に何とか敵陣の最奥へと移動した俺の目に飛び込んできたのは、詠唱を続ける魔術師の姿だった。
気圧されるぐらいに濃い魔力が辺りを支配している、今まで詠唱を続けていたとなるとかなりの強さになることだろう。
流石にこれを撃たせるわけにはいかない。
「詠唱完了!全員一気にいk・・・」
「やらせるかよ!」
「しまった!」
「なんと!ここで新明選手が姿を現した!狙うは最奥で詠唱を続けていた魔術師!だが向こうも詠唱は完了済みだ!」
このまま攻撃しても魔法が放たれるのは確実、となれば行動そのものをキャンセルさせる必要がある。
【リオーネキングのスキルを使用しました。ストックは後七つです】
シャウトスキルの効果範囲かどうかは半ば賭けではあったけど、魔法が発動する前に動きが止まったのを確認すると間髪を入れず突進スキルを発動、棒を伸ばして相手を吹き飛ばすと凝縮された魔力が一気に溢れものすごい上昇気流が巻き起こった。
「キャンセル成功!あのタイミングでスタン系のスキルを使用するとは、素晴らしい判断です!」
「切り札の魔法を封じられ残りは四人、これは勝負ありましたね」
「いえいえ、彼らもまた本選までたどり着いた猛者ですからねそう簡単にはやられないでしょう」
「今度はフェンリルが氷を吐きながら突撃を開始!強い!強すぎる!」
「これは・・・すさまじい強さです」
切り札を封じられ、更にはリルによって戦線を崩されたら勝負は決まったも同然。
いくら遠距離攻撃が得意でも数的アドバンテージは覆せず、結局そのままリルの手によって残りの四人も倒されてしまった。
圧倒的強さ。
試合終了の合図とともにリルの遠吠えが会場中に響き、彼女の強さを知らしめるのだった。




