487.本選出場を決めました
試合開始と同時に五人全員がこちらに突っ込んでくる。
一応後衛らしき姿は見えたけれども、最初のやり取りで完全にそっちに振り切ってしまったようだ。
幸い俺も含めて四人が前衛としてやっていける。
だが、須磨寺さんだけはあくまでも後衛。
運搬人のまま大会に出ているのはあれだけど、そこを弱点と思っているのだろう。
「全員近接戦闘準備、タイマンで行くぞ!」
「わかりました!」
「はい!」
「綾乃ちゃん、頑張って!」
「仕方ないなぁ、僕の華麗なマチェットさばきを見せてあげるよ!」
だがそうは問屋が卸さない。
なんせ七扇さんにマチェットの使い方を教えたのは彼だからな、身体機能は落ちていても後衛相手なら倒せなくてもそれなりの戦いが出来る。
だがそれを知っているのは俺達だけ、できるだけ敵の油断を誘って
「ルナはメインアタッカー、桜さんはサブを頼む!俺と七扇さんで残りの二人、どう見ても後衛のあいつは任せたからな!」
「今の僕には最高の相手だね。でも早く来てよ!」
「綾乃ちゃんしっかり!」
「おーっと!開始早々両社一斉に向かっていった!だが、相手はあのジャックTHEリッパー!白狼の盾に勝ち目はあるのか!?」
「リーダーや前衛はともかく後ろの二人は厳しいものがあるのではないでしょうか。何か秘策があるなら別ですが・・・おや?」
まずはルナがメインアタッカーと先頭を開始、それから遅れて桜さんや俺もそれぞれ担当する相手と向かい合う。
残ったのは七扇さんと須磨寺さん、てっきり別々に突っ込んでいくのかと思いきや途中で合流し向こうは二対にでやり合うつもりらしい。
【トイアーミーのスキルを使用しました。ストックは後九つです】
【スケルトンジェネラルのスキルを使用しました。ストックは後九つです】
【コンビネーションが発動、拡散攻撃力アップ(小)を使用しました】
それぞれのメンタルと攻撃力を補助、とりあえず今はこれでしのいでもらおう。
いざとなればリルを出せばいい話だが、彼女達的には二人で何とかなるという判断の様だ。
「よそ見とはいい度胸だ!」
「生憎と時間がないんでね、一気に行かせてもらおうぞ!」
そして俺が対するは向こうのサブアタッカー、とはいえ情報によればこの人がかなりの曲者の様で乱戦になるとデバフ付きのナイフで場をかき回していくらしい。
使用するナイフは毒と麻痺それと遅延、ようは一撃も喰らうなってことなんだろう。
というわけなのでこっちも棒を構えて距離を取りつつ、まずはこいつを倒してしまおう。
そうすればすぐに七扇さん達を助けに行ける、そう考えていたもののそう甘くないのは同じだったようだ。
「くそ、早い!」
「おいおい、そんな遅い動きじゃこの先やっていけないぜ!」
「うるせぇ、余計なお世話だ」
棒を振り回し、突き、薙ぎ払うも相手に当たる気配がない。
そう、スピード型は俺が一番苦手とする相手。
魔物ならそれなりに何とかなるけれど、人間の狡猾な感じが出ると先読みされてしまい中々決定打を与えられないでいた。
どうやら他の二人も同じようで、格上相手に苦戦を強いられているらしい。
ルナはともかく桜さんは防戦一方、これがBランクの実力なのか・・・。
「おっと、よそ見は厳禁だぞ!」
「しまった!」
つい目線を逃した隙を見逃すはずもなく相手が一気に懐に入って来た。
ナイフが無防備なわき腹へと突き刺さるかと思われた次の瞬間、確かに当たるはずのソレが空を切った。
「何!?」
【アンテロープのスキルを使用しました。ストックは後九つです】
「お返しだ!」
ステップスキルで攻撃を回避、更に向こうからきてくれたタイミングを逃さず棒を捨てて拳を構える。
「くそ!」
「逃がすかよ!」
【シャドウタッカーのスキルを使用しました。ストックは後九つです】
素早い相手だけに俺の拳が届く前に逃げるのは必然、だがそれを許さないのが俺の収奪スキルだ。
「くそ、なんだこr・・・」
足元に黒い影が絡みつき、一瞬だけ動きが遅れる。
強い力で引っ張れば剥がれるバインド、だが今の俺にはその一瞬でも十分な時間だった。
「おーーっとーー!!ここで新明選手の右ストレートが炸裂ぅぅぅぅ!きりもみ回転しながら場外まで吹き飛んで行ったぁぁぁ!」
「あのタイミングなら確実に回避できたはずですが、何かのスキルでしょうか」
「こちらからでは確認できませんでしたが、なんにせよ新明選手は多彩なスキルを使いこなしますからね。そのうちの一つなのかもしれません」
「ですがこれで四対五、一人浮けばあの運搬人を助けに・・・いかない!?」
「向こうは向こうで膠着していますからね。あの身のこなしにお互いをフォローする剣捌き、あれはかなりのものですよ」
「確かにロングソードよりかは振り回しやすいとはいえ、攻防一体とはまさにこの事。マチェットの見方が変わる戦い方です」
アイツに拳をぶち込んだ後、急ぎ七扇さんと須磨寺さんの二人の方を見たのだが予想に反してかなりいい感じの戦いをしていた。
恐らく事前に練習していたんだろう、倒せなくても時間を稼ぐことはできる。
そんなお互いを補い合う動きで受け持った二人を翻弄していた。
それならば苦戦している方に助太刀するのが定石、というわけで二人にはそのまま頑張ってもらって桜さんの方へと急ぐ。
相手はロングソードと魔法を駆使して戦う魔法戦士タイプ、メイスを使って戦う中量級の桜さんには少々部の悪い相手だった。
いくらスキルで物理攻撃を自動でカバーできるとはいえ、襲い来る魔法まで対処するのは難しい。
幸いマントのおかげで何とかなっているようだけどメイスを振るよりも早く逃げられてしまうせいで防戦一方という感じだった。
「桜さん左はまかせた!」
「はい!」
【恒常スキルを使用しました。突進、次回使用は十五分後です】
突進スキルで一気に接近、もちろん相手は逃げるけれども反対側から桜さんが襲い掛かる。
「タイマンじゃなかったのかよ!」
「一人終わればこうなるのはわかってるだろ!」
「くそ、かくなる上は・・・」
対人戦がタイマンである必要はない、いきなり劣勢になった相手がバックステップで距離を取りつつ懐から何かを取り出した。
運営に認められたアイテムの使用は認められている。
使えるのは非殺傷能力のあるものだけではあるが、このタイミングで使う物と言えば・・・。
「桜さんさがれ!」
「え?はい!」
危なくラッシュを使用しそうになっていた桜さんが慌てて後ろに下がりつつマントで顔を覆うと同時に、まばゆい閃光が瞼の向こうから襲って来た。
使うとすれば煙玉か発光虫の鱗粉を使った閃光玉。
毒系も考えたが自分も巻き込まれることを考えればその二つ、どうやら後者だったらしい。
分かっていても瞼越しに襲う光には対処が出来ず、一瞬相手を見失ってしまった。
その隙を逃すわけもなくどこからか俺を襲ってくる気配を感じる。
桜さんもすぐには動けないはず、となるとフォローは期待できないわけで。
【シルバーウルフのスキルを使用しました。ストックは後七つです】
「な、いない!」
「悪いがそれは残像だ」
今度はステップではなく残影で回避、ステップは目に見える攻撃を回避できるけど残影なら仮に死角からの攻撃でも受ける可能性が減る。
相手からすれば一撃必殺を狙った攻撃、だがそれを回避されたことで出来た隙を桜さんが見逃すはずがなかった。
「逃がしません!」
相手がロングソードで受け止めるもそれをへし折りながら見事に命中。
苦悶の表情を浮かべて後ろに下がる彼に容赦なく追い打ちをかけ、見事に地面に叩きつけた。
「よし!七扇さん達は任せた!」
「はい!」
これで三対五、こうなれば後は俺達のペースだ。
仮に格上しかも対人戦に特化していたとしても俺達なら大丈夫、それを実感させてくれる素晴らしい好敵手だった。
「試合終了ぉぉぉぉぉ!第三ブロック予選トーナメント突破は白狼の盾に決まりました!皆様盛大な拍手をお願いします!!」
かくして無事に予選トーナメントを突破し、次はいよいよ悪鬼羅刹のはびこる決勝トーメント。
決勝で待つ月城さん達と戦う為にも、今まで以上の戦いを強いられることだろう。




