482.大会前にスキルを集めました
全国探索者覇勇戦まであと一週間。
中之島ダンジョンを走破した後、対人戦にシフトした俺達は木之元主任の勧めで大会に参加しない旅団を巡って道場破り・・・じゃなかった、腕試しをすることに。
もちろん、いきなり行くと大変なことになるので木之本主任にアポを取ってもらってからだが皆さん思っていた以上に前向きで、気持ちよく実戦経験をつけさせてもらった。
主にC~Bランクの旅団を相手にしたのだが、正直な所C級では相手にならず後半はBランクをメインに経験を積ませてもらい非常に有意義な時間を過ごすことが出来たと思う。
Bランクともなると未走破ダンジョンを走破しただけあってイレギュラーな攻撃にもしっかり対応してくるし、何度か危ない場面にも遭遇した。
俺達は強い、それは間違いない事実だが経験不足から押し込まれる場面も多かったので魔物とは違う動きにしっかりと対処する必要がある。
その辺を詰めていけば全国探索者覇勇戦でもかなりいい所まで行けるんじゃないかってのが、木之本さんの評価だ。
そんな事を続けながら気づけば一週間前、戦い続けた体をいたわるべく久々のオフを取ることにした。
「和人君、何度も言うけど一人でB級ダンジョンとか潜らないでよ」
「わかったからさっさと行けって」
「絶対だからね!」
女性陣は例によって例の如く買い物と食い倒れにいそしむらしく、昨夜からどこで何を食べるかについて念入りな調査をしていた。
もちろん俺は不参加、桜さんは残念そうな顔をしていたが俺には俺でやることがあるのでそっちに注力させてもらおう。
【現在のスキルレベルは14】
久方ぶりにスキルレベルを確認するとこの間の探索でレベルが上がっていたようで、気づけば14にまでなっていた。
10を超えてコンビネーションが取れるようになった後はあまり意識していなかったけれども、あれから色々ダンジョンを走破しているだけに当然の結果ではある。
本当はあと1レベル上げて15に出来れば新しい恒常スキルの他に更なる補充やコンビネーションのような新しい技を手に入れることが出来るかもしれないけれども、残念ながら例の本はもうないし一週間で上げられる自信はない。
となれば今あるカードで戦うまで、レベル14という事は15種類のスキルをストックできるという事になる。
恒常スキルは突進と鑑定で固定、問題は残りをどうするかだが正直使用することが決まっているスキルが多いせいであまりトリッキーなスキルを入れる隙間が無かったりもする。
「攻撃力アップと防御力アップ、それと鼓舞はバフで必須。剛腕、スマッシュは攻撃で使うし残影とステップは回避用。あとはシャウトとかバインドも行動阻害系のデバフとして優秀だよな。後は硬化と狙撃、麻痺液なんかも案外使えるし、吸収とか反射はいざという時に重宝しそうだ・・・って、この時点で14個ハウスを入れたらこれが限界か・・・やっぱり少ないなぁ」
本当は魔法系のスキルも入れたいところだが、必要な物を描きだした時点でもうはいる隙間がない。
麻痺液を外してそっち系を入れてもいいけど打ち消される可能性を考えたら状態異常系が重宝するだろう。
それも毒じゃなく麻痺、これは中々防ぎづらい。
本当はタイムシフトを入れたんだが、あいつをマラソンするのは流石に厳しいので今回は除外することにした。
スキルを書き出し、その横に回収できるダンジョンを記入。
めんどくさいやつもいるけれど、全国探索者覇勇戦で結果を残すのであればそれを惜しんでいる場合じゃない。
「よし、とりあえず近場から攻めるか。一週間あれば十分回収できるし、後はどれを重点的に使うかを考えていこう」
基本的に補充スキルが1日三回使えるので、それで使用した分を増やせば問題はない。
今回の大会はトーナメント制なので連戦ではないけれども、ほぼ毎日戦う事を考えるとあれこれ使い過ぎると補充が追い付かなくなる可能性が高くなる。
基本はバフ三種に補充を使いながら、相手の強さを考えながらスキルを使用する必要があるだろう。
他の探索者ならスキルを使いたい放題なのでそこはちょっとうらやましいが、その分複数のスキルを使用できるのでバランスで言えば俺の方が上になる。
手数は正義、特に個人戦の場合はどれだけ相手を手数で上回れるかが重要なのでスキルが多ければ多い方がアドバンテージになる。
その点パーティー戦はそこまで使用しなくてもバフだけでも十分やっていけるというのはこの間の模擬戦で感じた部分、タンクが機能しているだけでも安心できるのに後衛が前衛にスイッチできると全員が一気に攻撃できるのでその勢いで相手を追い込むことが可能。
力こそパワー、それを地で行くのも案外悪くない戦法だ。
そんな感じで取得スキルが決まれば後はそれを回収するまで。
ひとりで行ける場所は一人で、助けが必要な場所はみんなで移動しながらスキルを確保。
流石にスキル取得の為に北の大地まで飛ぶことは出来ず、反射スキルはあきらめるしかなかったけれども代わりにハイディングスキルを収奪し、トリッキーな戦い方が出来るようにしてみた。
気づけばもう全国探索者覇勇戦前日。
最初はそうでもなかったのに全国探索者覇勇戦が近づけば近づくほど、会場のある神戸の街は盛り上がり始めた。
今やどこを歩いてもその話題ばかり、街を歩けば参加者と思しき探索者がそこらじゅうを歩いている。
「すごい人だねぇ」
「日本中の探索者が集まっているからな、そりゃ盛り上がるだろ」
「皆さん強そうです」
「そう見えるだけで案外そうでもないかもよ。実際予選に出るのはCランクが多いし、BとかAランクの探索者こんなところ歩いたりしないもの」
「そうなのか?」
「今頃連盟の用意したホテルでゆっくりしているか、接待を受けているんじゃないでしょうか。初日の予選会に出るのはCランクまでですから」
なるほどなぁ。
一応全国探索者覇勇戦へはEランクからでも参加できるようになっているけれども、まともに戦えるのはCランクになってから。
まずはそこで実力のない旅団をふるい落とし、そこからシードのBランクやAランク旅団が出てくるというわけだ。
組み合わせは当日発表、木之本さん曰くは月城さん達とは決勝まで当たらないような組み合わせになるそうだけど、他にも名だたる旅団はたくさんいるわけで。
日本三大ダンジョンのうち二つのある東京は実力者ぞろい、ある意味今回の大会は東西対決とも名高いので俄然やる気が違っているらしい。
「いいな~今頃美味しいご飯食べてるんだ」
「俺達だって毎日うまいもの食ってるだろ」
「それとこれとは話が違うんだよ。素敵な場所で食べるからこそ美味しく感じるんだから」
「つまり我が家では物足りないと」
「あ、拗ねちゃった?」
「いや、出禁でもいいかなと思っただけだ」
「わー!ごめん、ごめんって和人君!この通り!」
なんとも適当な平謝りを聞きながらも、大会前日にも拘らず特に緊張もなく過ごしていることに驚いている。
なんだろう、負けないから大丈夫とかそういうのではなくここまでやったんだからという達成感がすごい。
皆でやれるところまでやったんだ、後は本番で実力をしっかり発揮するだけ。
例え相手が強くても俺達なら大丈夫、そんな自信が全員から感じられる。
「それでは私達も美味しいご飯を食べに行きましょうか」
「ん?」
「お父様が素敵なお店を予約してくれたんです。本人は月城さん達と御飯に行かれているそうですから、気楽に食べられますよ」
「やった!」
「そういう事ならありがたく使わせてもらおうか。ただし、食い過ぎてお腹壊すなよ」
「そんなことしないよ子供じゃないんだから」
「とかいって前にお腹壊したの綾乃ちゃんだよね?」
「凜ちゃん、それは言わないお約束だよ」
全国探索者覇勇戦前日。
今日の夜はいつもよりも長くなりそうだ。




