480.ダンジョン走破を報告しました
「と、言うわけで無事に中之島ダンジョンを走破してきた。これがまとめた資料になるから確認してくれ」
翌日。
Cランク旅団『白狼の盾』として兵探連へと向かった俺達は、木之本さんそして大道寺社長へ須磨寺さんがまとめた資料を提出した。
中には各階層に出てくる魔物の種類と大まかな倒し方、そして各階層のギミックなどが記載されている。
今後はこの資料を基に他の探索者がダンジョンに潜り、より情報を正確なものにしていくことになる。
最後のボスなんて力押しもいい所だ、次はもっと実力のある旅団が潜るっていう話だったからそこで正しい倒し方が解明されることだろう。
でもまぁこれでBランクに上がる条件は無事に達成、後は木之本さん達から正式に全国探索者覇勇戦への参加が打診されるっていう流れのはずなんだが、どうも様子がおかしい。
二人とも資料を手に固まったまま。
何かおかしい事でも書いてあるだろうか。
「・・・」
「ん?どうかしたのか?」
「君達、この資料を見てなんとも思わなかったかい?」
「え?別に今まで通りだし、特におかしい所は無いと思うけど・・・」
「私も確認しましたが、一般的なギルド報告書と何ら遜色ありません。もちろん不確実な要素は残っていますが、それは未走破ダンジョンではよくあることですし特に問題はないと思いますが」
基本的に須磨寺さんが資料を作ってくれているけれども、七扇さんも元ギルド職員の立場からしっかりとアドバイスしてくれているので、正直他の旅団が出す報告書よりも詳細な物であるという自負はある。
にも拘らずこの二人が苦言を呈すなんて、よっぽどダメな部分があるのだろうか。
「いや、報告書自体は素晴らしい出来栄えだよ。このまま提出して掲載しても何ら問題ない、流石元ギルド職員のチェックだね。でも我々が驚いているのはそこじゃないんだ。新明君、僕は前にどんな話をしたかな」
「あー、Bランクに上がるためには未走破ダンジョンの走破が条件だったよな?そしてその為に大道寺社長が今回のダンジョンを紹介してくれた、という認識をしているんだが。違うのか?」
「そこは問題ない。実際そのつもりで君達にダンジョンを紹介し、見事走破して見せた。これで晴れて娘も含めて全員がBランクになることだろう。だが、そこではない」
「ん?」
「全国探索者覇勇戦での活躍をもってBランクへの昇格するだけの実力を世間に知らしめる。これだけの実力があるんだから、後は条件さえそろえばBランクに上がっても問題ない。という流れにもっていきたいという話をしていたと思うんだけど・・・」
それはもちろん理解している。
初めからそういう話だったし、参加することも皆に伝達済み。
未走破ダンジョン走破の条件に関しても伝えたからこれでBランクに上がれるはずなんだが・・・それがまずかったか?
「もちろんだ。だから全国探索者覇勇戦への参加についても伝達しているし、個人だけでなく団体での参加も検討している。今後はそれに向けて連携を強化するつもりだし、装備についても対人戦に向いたものを手配する予定になっている」
「和人さん、もしかしてダンジョンの走破が早すぎたんじゃないですか?」
「ん?」
「あぁぁぁ!そういう事か!僕も分かった!」
「なるほど、確かに今これを出すと色々とめんどくさいことになっちゃいますね」
なんだろう、俺以外の面々は理解しているみたいだが俺にはさっぱりわからない。
ランクアップ条件は整ったし後は大会でそれなりの成績を取るだけ、そうすれば文句を言うやつもいなくなる・・・あ、違う。
卵が先か鶏が先かじゃないけれど、どうやら順番を間違えていたようだ。
「つまり大会が終わってから走破しろってことだったのか」
「そもそも未走破ダンジョンを二か月もかからず走破することがおかしいのだ。資料を見れば階層こそC級だが魔物の強さは明らかにB級。別の探索者が調査した後になるがこのダンジョンの等級は間違いなくB級とされるだろう。それをわずか一カ月そこそこで走破するなど前代未聞、こんな結果を出してしまっては嫌でもランクアップさせねばならないし、それではまたよからぬ噂を立てられかねん。まったく、実力があるのも考え物だな」
「まったくです。ともかく走破おめでとう、でも流石にこれを今受け取ることはできないから悪いけど全国探索者覇勇戦が終わってから受理させてもらうよ」
「そうしてもらえると助かる」
「でも、皆にそれだけの実力があるという事がわかっただけでも収穫だね。今年は名だたる実力者が勢ぞろいだから新明君には個人戦だけでなく団体戦でもしっかりと実力を見せつけてもらって、誰にも文句を言わせない昇格を果たしてもらわないと」
「桜よ、しっかりと精進するのだぞ」
「はい!」
俺の誤解により面倒なことになりそうだったが、何とか事前に対処出来そうだ。
臨時ギルドへの報告はあくまでも素材の買取と鑑定のみ、走破がどうのってのはここでの管轄になるのでまだ何とかなるだろう。
まぁ、木之本さんの事だから裏で何とかしてしまいそうな気もするけれど、とりあえず無事に走破できたしランクアップの道筋も出来たので後はしっかり結果を残すだけ。
二人にお礼を言って兵探連を出た後は一度臨時ギルドに行って装備と買取金を回収、その足でドワナロクへと向かった。
「これはこれは新明様、皆さま、よくお越しくださいました」
「こんにちは鈴木さん」
「桜様もお元気そうで何よりです。随分と良い顔をされるようになりましたな」
「そうですか?」
「最初の頃とは別人でございます。して、今日はどうされましたか?」
「装備の査定と対人用の装備をいくつか見繕ってもらいたい。それと、例のグローブだが正式に買わせてもらおうと思ってな」
ドワナロクに来たのは全国探索者覇勇戦で使う装備を調達する為。
対人戦と対魔物戦となると使用する武器だけでなく防具も違ってくる。
流石に全部を新調するわけにはいかないけれども、汎用性の高い防具を購入しておけば別のダンジョンなどでも使い道があるはずだ。
その中でも一番変えなければいけないのはやはり武器、殺傷能力を高めるというよりもいかに取り回しがきくかを重要視する必要がある。
付与されている効果も切れ味などではなく状態異常や軽さなどに特化するのが基本、特に麻痺系は人気が高く常に高値で取引されているけれども対処方法も確立されているので、出来れば別の奴があればいいんだがなぁ。
そして当たり前のように使っていたグローブは借り物、いつまでも借りておくわけにもいかないし、なにより自分の物にしておきたい。
「それはありがとうございます。対人戦装備という事は全国探索者覇勇戦に出場されるのですね?」
「今回は個人戦と団体戦も検討しているから人数分頼みたい。査定に出す奴は支払いの足しにするつもりだ」
「かしこまりました。それでは皆様の装備と、お預かりする装備の査定を進めてまいります。ご希望の武器などはございますか?」
「スリング!」
「スリングですか、また通な物を。ですが団体戦となるとそういう武器が案外有効だったりするものです。かしこまりました、ちょうどいい物が入荷しておりましたのでそちらを持参いたします。では準備が終わるまで店内でお待ちください」
須磨寺さんの要望がどうやら鈴木さんの商魂に火をつけてしまったらしい。
今回はグローブも買うから出来れば程々の奴でお願いしたいんだが・・・はてさてどうなる事やら。




