479.次なる目標を決定しました
「「「解呪の書?」」」
「わふ?」
「まぁそういう反応になるよな」
鑑定結果を聞いた面々は想定外の結果に思わず首をかしげてしまう。
そうなってしまうのは致し方ない、俺だって同じ気持ちだ。
『どのような呪いでも』という部分がかなりポイントで、もしかすると超レアアイテムと言う可能性もあるけれども一体どこでそれを聞けばいいんだろうか。
スキルブック的な物だったら身内で使用すればそれで終わりだったけれども、こういうのはまず欲しがっている人を探す所からが大変なんだよなぁ。
「あの・・・これって綾乃ちゃんに使えるんじゃないですか?」
「え?」
「そうですよ!綾乃ちゃんは梅田ダンジョンで呪いを受けて今の姿になったんですよね?もしそれが解けるならまた探索者としてやっていけるんじゃないですか!?」
「それはそうかもしれないけど・・・えぇぇぇぇ」
まさかそういう返事が返ってくるとは思わなかったんだろう、いつもはふざけた感じで流すことの多い彼が動揺してしまっている。
なるほど、確かに七扇さんの言うとおりだ。
彼が元々こうなったのも梅田ダンジョンのとあるダンジョンで受けた呪いのせい、それ故にBランク探索者を辞めて運搬人に転向してしまった。
その流れでお兄さんを失い色々と大変な目に合ってしまったんだから、そろそろ報われてもいいんじゃないだろうか。
その為の道具が目の前にある、これが出たのもある意味そういう流れなのかもしれないと思ってしまった。
「うちとしても運搬人兼探索者として活躍してくれれば力強いのは間違いない。若干前衛過多ではあるけれど、その分俺や七扇さんが後ろに回れば対処できるし、下手な人を入れるよりも安心だ。この前の戦いでもう少し戦力を増やすべきかなとは思っていたから、ちょうどいい」
「ちょうどいいって、和人君はそれでいいの?」
「何がだ?」
「僕みたいに呪いで困っている人はたくさんいるんだよ?その中には僕以上の探索者もいるし、お金持ちだって多いはずだからこれを市場に流せばものすごいお金を手に入れられるかもしれないんだよ?それこそマンションのローンだって完済できるかもしれない、そんなものを僕なんかに使って大丈夫なの?」
「別に知りもしない赤の他人が幸せになるぐらいなら見知っている人に幸せになってもらうほうが何倍も価値がある。そりゃローンの支払いが減るのは魅力的だが、人を増やさずに戦力が増えれば必然的に稼ぐ金額も増えるし今まで上に収入も増える。つまり結果は同じだ」
「ポジティブだなぁ・・・。みんなもそれでいいの?」
須磨寺さんが全員の顔を見て回るも答えは同じ、皆静かに首を縦に振った。
ということで満場一致で解呪の書は須磨寺さんに使用する事が決定、具体的にどういう風にするかは追々考えるとして・・・問題はそのダンジョンにどうやって行くかだな。
彼的にはあまり話したくない内容だろう、それでももう一度その恐怖と戦ってもらわなければならない。
その後、今まで聞くことのなかったダンジョンでの出来事を改めて聞かせてもらった。
「そんなことが・・・」
「大変だったね綾乃ちゃん」
「まぁその結果こうやってみんなと一緒にいられるわけだから今となっては悪くないと思っているけどね。なんにせよ向かうのは梅田ダンジョン内ハービスダンジョン、ダンジョンのランクはB級だからまずはそこまで探索者ランクを引き上げないと」
「そういえば、私達まだCランクでしたね」
「Cランクでも入れなくはないけど、誰か上位PTと一緒じゃないと入れてくれないから全員がBランクになる必要があるんだ。和人君はB級として、どうやって上げる?」
全員の視線がこちらに向かってくる。
いや、須磨寺さんは知ってるだろとツッコミを入れたくなってしまったけれどいい感じのフリなのでしっかりと拾っておくとしよう。
「それなんだが、Bランクに上がるには未走破ダンジョンを走破する必要があるらしい。後はいつも通りC級ダンジョンの走破数だけど、それに関しては十分達成しているから今回の成果を報告すれば問題なく上がるんじゃないか?」
「え!そうなんですか!?」
「俺はリル達と宝物庫を走破しているからその実績を認められてBランクに上がる条件は満たしているけれど、皆はそれを達していなかったからな。だが、今回でそれを達成した。もちろんすぐじゃないけれど、後は例の全国探索者覇勇戦でそれなりの成績を残せばって感じか」
「未走破ダンジョンの走破って和人さん知ってたんですか?」
「大道寺社長に口止めされていたんだ。これが条件だってなったら無茶をしてでも先に進もうとするだろ?特にあのボス戦の最中にそれが起きるとよくて大怪我最悪死ぬことだってあり得る。だから今回は余計な事を考えないようにあえて何も言わなかったんだ。黙っていて悪かったな」
「いえ、そういう事でしたら致し方ないです」
理由を説明するとしっかりと納得してもらえたらしい。
なんにせよ、今回の成果で条件はほぼ達成。
後は全員が一斉にBランクに上がることに対して文句を言わせないように、全国探索者覇勇戦でそれなりの戦績を残す必要がある。
最低でもBランク以上の探索者を撃破、目標はもちろん月城さんだ。
「じゃあそこでいい成績を収めたらBランクなんですね」
「そうなるな」
「そしたら綾乃ちゃんの呪いをとけるようになる・・・ってことですよね?」
「実際どういう風に使うのかまでは分からないけど、とりあえず呪いの主を何とかすればいいわけだ。それならば可能性は十分にある」
「でもあそこはかなり危険な場所だから出来れば行ってほしくないんだよなぁ」
「駄目だよ綾乃ちゃん、あの本を私達が見つけたってことは解呪してきなさいってことなんだから」
「それはそうかもしれないけど・・・」
「大丈夫、どんな綾乃ちゃんでも嫌いになんてならないから」
もごもごしている彼の手を七扇さんがそっと包み込み真剣なまなざしで見つめている。
その目からは母性と言うか慈愛と言うか、ともかく何が起きても決して折れない信念のようなものを感じた。
まぁ今の姿も呪いによるもの、それが治れば元の男性に戻ることだろう。
そうなった時に七扇さんがどうなるかを心配しているんだと思うけど、この様子だとその心配はなさそうだ。
「ま、なんにせよ預けているものを受け取りに行かないといけないわけだし明日は臨時ギルドに報告に行って、それから装備のメンテを兼ねてドワナロクだな。大道寺社長にも報告に行かないといけないし・・・忙しくなるぞ」
「全国探索者覇勇戦に向けたの準備もありますしね」
「対人戦かぁ、今まで魔物相手だっただけにそれ用の装備とかもあるんだよなぁ」
「確か使用不可の武器とかもあったはずです、一度ガイドラインを読んだ方がいいかもしれません」
「ということは受取からの兵探連、そしてドワナロクの流れでしょうか」
「なんにせよ色々と行くかなきゃならないってことだ」
「頑張りましょうね」
やることは山積み、それでも確実に前進しているのは間違いない。
なんにせよダンジョン走破は達成したんだ、自信をもって報告しようじゃないか。




