477.無事にダンジョンを走破して
本日書籍版が発売となりました!
よろしければ手に取っていただければと思います。
本編もどうぞお楽しみください。
「リルちゃんすごい!」
戦闘終了後、ドロップ品を回収していると桜さん達が大騒ぎしながら走ってきた。
そのままリルを取り囲み黄色い歓声を上げながらリルを褒め称えている。本人もまんざらではないようで、えへへと可愛らしく笑っていた。
見た目は大人びているのに中身が子供っぽいギャップ、これは人気が出るのも致し方ないよな。
「でも、みんなも、頑張ったよ」
「私なんてまだまだで、結局ルナちゃんみたいに守れないし・・・」
「桜は優しいし、かっこいいよ?」
「本当に?」
なんだかんだ桜さんが一番長く一緒にいるだけに、普段からしっかり見てくれているんだろう。
リルから思わぬ評価をもらい、桜さんの表情が花が咲いたかのようにパッと明るくなった。
「じゃあ僕は!?」
「綾乃はかしこいよ?」
「やった!リルちゃんに褒められちゃった」
「私はどうでしょう」
「凛はおとなしくて、でも強い」
「強い、私が?」
「よかったね凛ちゃん、リルちゃんが強いって」
思わぬ回答に七扇さんは信じられないという感じのようだ。
確かに後衛にいる時はパッとしないかもしれないが、前に出たら須磨寺さん仕込みの戦い方でいい感じに暴れ回ってくれる。
前に出過ぎず冷静に周囲を確認しつつ、出るところは出る。
普段後ろで周りを守る癖がついているからこそできる技、俺もリルと同じ意見だ。
「じゃあルナちゃんは?」
「ルナはお姉ちゃん、安心する」
「ふふ、確かにみんなのお姉さんみたいな安心感はありますね」
「確かに色んな意味で包容力あるよね」
「あの大楯の後ろにいたら絶対に大丈夫って感じがします。では新明さんのことはどう思っているんですか?」
ルナも含め全員の感想だけでお腹いっぱいなのに、七扇さんがまさかの質問をぶっ込んできた。
全員の視線がリルに集中するも本人は特に気にする様子はない。
「和人はね、大事だよ。大事だから、アタシが守るの」
「確かにいつも守ってもらってばかりだからなぁ」
「和人は強い。でも、弱い所もある、そこが好き」
「桜ちゃん聞いた!?ライバル登場だよ!」
「むむ・・・でも、リルちゃんが相手でも負けません」
大事だから守る、か。
強いって言ってもらえるのは嬉しい所だが、弱い所をどうにかしないとなぁ。
別の言葉に桜さん達が大騒ぎしているけれどもあえて聞かなかったことにしよう。
リルにそう思われているのは嬉しいことだが・・・って、あれ?
「リル、お前光ってないか?」
「ん、そろそろ時間」
「え!戻っちゃうの!?」
「あの強さだからなぁ、ずっと維持するってのは無理なんだろう」
「お話しできて嬉しい。みんな、またね」
この状況を特に惜しむわけでもなく、淡々とそれを受け入れているように見える。
俺なら大慌てしそうなものだがそこがリルの凄い所だ。
段々と光が強くなり最初と同じくまばゆい閃光の後、いつものリルが目の前にいた。
「わふ!」
「今日はご苦労さん。そしてこれからもよろしくな」
もふもふの毛並みに得意げな顔、返事の代わりにゴンゴンと頭を俺の肩にぶつけてくる。
正直ちょっと痛いが、これもまた彼女の愛情表現の一つだ。
「リルちゃんが元に戻ったのはいいんだけどさ、プックンは?」
「え?」
「そういえば姿が見えませんね」
「まさか、リルに力を全て与えたから」
そもそも雪の精霊なんて言う曖昧な存在、彼女にあれだけの力を与えたのだから存在が消えてしまってもおかしくはない。
マスコット的な立ち位置ではあったけれども、なんだかんだ回復関係で世話になっただけに・・・。
「あ、いた」
「まぁそうだよな」
リルの背中から飛び出してきたかと思うと、そのままリル頭の上に移動し消えるわけないだろ!と言わんばかりに手足を動かして存在をアピールしている。
あそこで消えてもらったら困るし、今後もリルがあの姿になるためにはこいつの存在が必要不可欠。
流石にすぐに使えるようにはならないだろうけど、定期的に冷気を吸収してまた補充していく必要がある。
とりあえず長かった中ノ島ダンジョンもこれで終わり、後は奥の通路から地上に出るだけ・・・。
「なぁ」
「どうしたの和人君」
「これで終わりだよな?」
「え?そうじゃないんですか?」
「そういえばここは未走破ダンジョン、これで終わりっていう保証はありませんね」
俺の問いに七扇さんが冷静な回答を出す。
そう、ここは未走破ダンジョン。
難易度的にはCかBと言われていて、実際魔物の強さはB級並み。
となるとダンジョン自体もB級である可能性は高く、そうなるとまだあと五階層残っていることになる。
仮にそうだとすると、魔物の数は四体、最後の階層主は三体出てくることになる。
ただでさえいっぱいいっぱいだったのに、これよりもさらに強い階層主が出るって?
それはどう考えても無理だろう。
普通は走破した喜びと宝箱への期待で通路を進んでいくのだが、今回は喜び半分恐怖半分という感じで奥へと向かう。
果たしてこの先に待っているのは・・・。
「見えた!転送装置だよ!」
「ここにあるってことは・・・これで終わりか!」
「奥にちゃんと宝箱もありますね」
「和人さん見てください、金箱ですよ!」
戦々恐々という感じで向かった先にはお馴染みの転送装置、そして金色に輝く宝箱が鎮座していた。
金箱の喜びよりも走破したことの方がうれしくて仕方がない。
皆でハイタッチしながら喜びを爆発させ、それが落ち着いたところでいよいよ宝箱の中身とご対面だ。
「罠、ありません」
「よしそれじゃあご対面と行こうじゃないか」
宝箱は全部で三つ、銀箱二つと金箱一つ。
まずは銀色の方から開けていくと指輪が二つとブレスレットが一つ、それとお馴染みのポーションとクリスタルが五つずつ入っていた。
そしていよいよメインの金箱。
「これは!」
「本、ですかね」
「図書館ですからあり得る話ですけど、一体何の本なんでしょう」
中に入っていたのは古ぼけた本、てっきり装備品を期待していたんだけど全員予想が外れた感じだ。
鑑定するにもまだリキャストが終わっていないのでとりあえず一緒に入っていたポーション類と宝石と一緒にマジックバッグの中にしまっておく。
なんにせよ、これで目的は達成した。
未走破ダンジョンを走破したことにより、晴れて桜さん達もBランクに昇格が決定。
旅団としてもB級旅団として今後は活動できるようになる。
もちろん制約であるとか色々とめんどくさいことは増えるけれども、実力があると認定されればそれだけ美味しい依頼が入ってくる。
ただでさえローンの支払いが大変なだけに、より稼ぎのいい依頼は大歓迎。
まぁ、それに比例するように危険も増えていくけれども俺達なら大丈夫と信じていこう。
「さて、帰りますか」
「だね!」
「帰ったら祝勝会しましょうよ」
「いいね!何食べる?お肉?お寿司?それとも・・・」
「それとも?」
「・・・やっぱお肉で」
「なんだよ、他に何かあるんじゃないのか?」
「いや、ちょっとテンション上がりすぎちゃって残念なこと考えただけ。うん、ここはお肉だね」
勝手に盛り上がり勝手に冷静になられても困るんだが、一体何を考えたんだろうか。
祝いの席と言えば肉に寿司、てんぷらとかウナギとかもあるけれど、まぁここは肉一択だろう。
美味しいお肉に美味しいお酒があれば何もいらない。
かくして無事に中之島ダンジョンを走破した俺達は地上へと凱旋を果たしたのだった。




