334.無事に地上へ帰還しました
【アイスドラゴンのスキルを収奪しました。氷鎖結陣、ストックは後九つです」
あまりにあっけない幕切れに沈んでいくのを見守ることしかできなかったが、すべて沈み切る前に慌ててスキルを収奪、何とかギリギリで確保することができた。
危ない危ない、ここまでやってスキルを確保できなかったら残念過ぎる。
全てが沈み切った後に残されたのは大量の素材たち、流石ドラゴンだけあって数が多い。
鱗・牙・被膜なんかもありその一つ一つがデカい。
こんな時須磨寺さんがいればと思いながらも、マジックバッグを手に入れていたことで何とか全部回収することができた。
マジで優秀だなこれ、いくらでも入るぞ。
レリーズ商会の社長がかなり大きいのを持っていたけど、あれ一つで億の金が動くって言ってたしもしかしなくてもそれぐらいの容量があるんじゃないだろうか。
「なんだこれ」
デカい素材を拾った下から出てきたのは真っ白いオーブ、魔力オーブとも違う冷気を全部封じ込めたみたいな感じの雰囲気がある。
持つだけで冷気耐性があるのにひんやりする感じ、これに関しては上にもっていかないと何とも言えないけどすごい物であるのは間違いない。
なんせドラゴンのドロップ品だ、鱗一つとってもかなりの価値があるんだからこいつに価値がないはずがない。
素材も含めこれ全部売ったらいったいくらになるんだろうか。
最後に残っていたのは一枚の白いマント、今使用しているホワイトベアとも違う雰囲気を醸し出している。
これさえ身に着けていたら何からでも守られるかのような安心感、まるで王様がつけるような分厚さがあるけれど不思議と重くない。
折角の装備品なら武器がよかったなとかちょっと思ってしまったけれど、ドラゴン産の装備に間違いはないはず、それにマントならだれでも着用できるので売れる先はたくさんあるだろう。
いやー、ドロップ品でもすごいのにこれで終わりじゃないんだもんなぁ。
立ち上がれるようになるまでひとまず休憩、リルとルナにも一度中に戻って体力を回復してもらった。
すぐに出ていく必要はないはずなのでリキャストの終わった回復スキルを使いながら何とか動けるところまで持って行くも体中が悲鳴を上げている。
あか早く家に帰ってベッドで寝たい。
「もう大丈夫か?」
「ワフ!」
こくこく。
「あとは宝箱を回収して戻るだけだ。あのドラゴン相手にこの人数で勝ったんだから、ほんとよく頑張ったな」
「グァゥ!」
「は・・・い」
「そんじゃま宝物庫のお宝を確認しに行きますか」
ドラゴンを倒したことで広場の奥に通路が出来ているのはさっき確認しておいた。
階層主を倒した後はよくある流れ、いつもは通路の突き当りに宝箱と転送装置がある感じだけど今回は金属製の扉が待ち構えている。
流石宝物庫、この先がお宝がるぞって演出が中々にかっこいい。
「それじゃあ開けるぞ」
扉に両手を当てて気合を入れると、凍り付ていた扉がゆっくりと開いていく。
奥に見えるは金銀財宝・・・ではなかったけれど、それに近しい物が鎮座していた。
「金箱!しかも銀箱が三つ、大盤振る舞いじゃないか」
扉の向こうに見えるのは祭壇、その一番上に置かれていたのはもちろん金箱。
そしてその下に三つの銀箱が綺麗に整列している。
まさに圧巻、でも昔話でよくある遠慮しないといけないやつとかじゃないよな?
そんな不安にさいなまれながらもゆっくりと金箱へと手を伸ばす。
ここで罠は・・・いや、ないとは言い切れないので慎重にいこう。
棍で箱を叩き、さらに取っ手にあててゆっくりと持ち上げるも反応はなし。
気を取り直して両手でしっかりと持ち上げるとまばゆい光と放つお宝が姿を現した。
「すごい、これが金箱なのか」
箱の中には無数のアイテム、そして装備が入っていた。
一つ一つゆっくりと取り出して祭壇の前に並べていくと、全部で10個も入っていた。
お馴染みのポーション系が二つ、輝きを放つ鉱石が三つ、そして指輪とイヤリングが一つずつに、よくわからない魔道具が二つ最後は槍・・・違う、これは棒か!
鮮やかな銀色、いやどこか青みが勝っているそれは紛れもなく棒。
うーん、ここまで見事にまっすぐな棒が出てきて喜ぶのって世界広しといえど俺ぐらいなもんだよなぁ。
普通は長剣とか斧なんかの仮に自分が使わなくても探索者がメインにする武器が出てくると高く売れるので喜ぶところだが今回は棒、他の人だとせっかくここまでやったのにと絶望するだろうが俺からすればご褒美以外の何物でもない。
金箱から出てきたんださぞ価値のあるものなんだろう、そう信じて大事にリュックにしまい込む。
残りのは銀箱、ここからはクリスタルの他にクロスボウと槍、それとチェインメイルがそれぞれ入っていた。
どれもみなに渡せば喜んでもらえるものばかり、特殊依頼である世界を変えるようなお宝は残念ながらなさそうだけどその辺は出てきた鉱石とかに期待するとしよう。
「さて、回収するものは全部拾ったしそろそろ上に戻るか」
「わふ!」
「今回は大当たりばかりだったからな、素材もかなりの量だしなによりドラゴンの素材はかなり高値で売れる。これを四人で分ければ・・・いよいよタワマン生活も見えてきたぞ」
俺が探索者になったのはこの夢をかなえるため、あのボロアパートから始まっていつか上に上り詰めてやると文字通り死に物狂いで駆け上ってきた結果がすぐ目の前にある。
それまでに桜さんを助けたりリルにあったりと色々なことがあったけど、何をするにしてもこの目標があったから頑張れたんだ。
これも収奪スキルがあったから出来たこと、ほんと感謝しかない。
でも一つだけ不安がある。
もし仮にタワマンを買ったとして、そのあと俺は何を目指せばいいんだろうか。
そりゃ買うだけで終わるはずもなく維持費を考えれば同じぐらい稼がなくちゃダメなんだけど、大きな夢が叶ってしまった後に何を目指せばいいのか正直思いつかないんだよなぁ。
強くなる?
クランを大きくする?
ダンジョンを全部走破する?
やれることはたくさんあるんだろうけど、どれも漫然とした感じで芯になるようなものじゃない。
燃え尽き症候群っていうんだっけか、目標を達成したとたんに何もかもやる気を失ってしまう人がいるけれど自分もそうならないか不安ではある。
「まぁそれも買ってみないとわからないことだけどな」
「わふ?」
「何でもない、独り言だ」
心配そうに俺の足におでこをぶつけてくるリルと、ポンポンと肩を叩いてくれるルナ。
そう、あの頃は俺一人しかいなかったけれど今は仲間がいるんだし困ったら相談すればいい。
皆なら笑うことなく真剣に話を聞いてくれるはず、そう考えると不思議と背中が軽くなったような気がした。
始まってもいないことにおびえることはない、とりあえず今は俺達がやり切ったことを報告しに行くとしよう。
改めて二人に感謝をしつつ忘れ物がないかを確認して転送装置の前へ。
「さぁ帰るか!」
「グァゥ!」
「は、い!」
さぁ凱旋だ!
転送装置に手を伸ばしてスイッチを押す。
こうして宝物庫の新たな扉がまた一つ走破されたのだった。




