335.盛大な歓迎を受けました
一瞬の暗転の後、見覚えのある扉の前に立っていた。
どうやら宝物庫を出ると元の扉の前に戻されるらしい、細い通路の奥には最初に乗って来たエレベーターが見える。
どうやら無事に地上へ戻ってこれたらしい。
後ろ路振り返ると、一緒に出てきたリルとルナがあまりの狭さに変な格好でくっついていた。
「あはは、すごい格好だな」
「わふぅ」
「せ、まい」
「とりあえず下に降りるまで中に戻っておいていいぞ、これから査定やら報告やら色々と忙しくなるから」
最初と違ってかなりの大荷物なので二人には指輪とブレスレットの中に戻ってもらいエレベーターで下へ、外の時間は分からないけど受付前は多くの人でにぎわっていた。
「おい、戻ってきたぞ!」
「雪盲に挑んだ探索者だ!」
「あの装備、まさか走破したのか?」
エレベーターから降りてきた俺を見つけた探索者が反応するや否や、あっという間に取り囲まれてしまう。
この感じ、まるでリルの存在がばれたときみたいだ。
「すまん、通してくれ」
「なぁ、走破したのか?」
「走破した。報告とかあるから道を開けてくれ」
「マジか、走破したってよ!」
「すげぇ、誰も走破できないって言われてた場所だぞ」
「さすが月城さんが応援するだけのことはある、マジでやべぇ!」
勝手に盛り上がってくれるのは結構だが、こっちはドラゴンと戦っていっぱいいっぱいなんださっさとどいてくれ。
探索者をかき分けるようにカウンターへ、そのまま手続きをと思ったんだが余りの人の多さにギルドも気を使ってくれたのか個室へと案内してくれた。
「大変でしたね」
「まったく、自分の事のように喜んでくれるのは嬉しいんだがあまり騒ぎすぎないでほしいもんだ」
「仕方ありませんよ、発見以来誰も走破できないという場所から生きて戻ってきたんですから。それで、中はどんな感じでした?」
「名前にふさわしい地獄だった」
「後日で構いませんので出てきた魔物や部屋の状況について詳しく教えてください。もちろん、情報に対する対価はお支払いしますので」
「了解した。とりあえず仲間が来るまで休ませてもらっていいか?あとは彼女たちに任せてあるから言われた通りに頼む」
「かしこまりました、戻られたという連絡は入れてありますのでどうぞゆっくりとお休みください」
どうやら俺がダンジョンに潜っている間にそう言う話をつけておいてくれたらしい。
桜さん達の事だ、おそらくすぐ近くで待機していることだろう。
俺をはさむようにリルとルナが現れ、その温かさに安堵すると同時に猛烈な睡魔に襲われあっという間に意識を手放すのだった。
「ん・・・」
「あ、和人さん目が覚めましたか?」
それからどのぐらい経っただろうか、心地よい疲れを感じながらうっすらと目を開けるとそこには安堵の表情を浮かべるルナの顔があった。
何やら頭が柔らかい何かの上に乗っている、体を起こそうとするもそのまま胸を押されて戻されてしまった。
「どのぐらい寝てた?」
「私達が来てから二時間ですのでプラス十五分ぐらいですかね」
「マジか、少しのつもりが結構がっつり寝てたな」
「それぐらい疲れていたんだと思います、だってドラゴンと戦ったんですから」
「ほんと、このメンバーだけでドラゴンを倒すとか規格外もいいとこだよ。あれだけ無茶しないでって桜ちゃんに言われてたのに無事だったからよかったものの、いい加減逃げることも考えなよ?」
「もちろん撤退も考えたさ、でもまぁ最終的に何とかなったわけだし許してくれ」
小言を結われるのは百も承知、何度も逃げようと思ったけれどリルたちの頑張りを見ているとそう簡単に判断できるものではなかった。
もちろん俺も最後までやりたかったので、まぁこういう感じになったわけだ。
「査定はどうなってる?」
「和人君が持ち帰ったやつはとりあえず全部見てもらってるよ。とりあえず値段だけ出してもらって、必要な奴を回収する感じでいいんじゃないかな。しっかしあんな大きなマジックバッグが手に入るなんて、さすが宝物庫だねぇ」
「ほかにもすごい物がたくさん、今日だけで億万長者になっちゃうんじゃないですか?」
「そうだといいんだが、まぁマジックバッグなんかは売るつもりもないし装備もみんなで使えるものは売らずに残すつもりだから。ってことは単純に素材だけになるのか」
「その素材が高いんだよ。ドラゴンの素材は引く手あまただからね、鱗一つで一財産って言われてるのをあんなに持って帰ってきちゃって・・・相場が崩れないといいけど」
その辺はギルドが考えて市場に出してくれるだろう。
しばらくしてすべての査定を終えたギルド職員が部屋に戻ってきた。
手には大量の書類、これ全部が査定結果か。
「お待たせいたしました、量が多く時間がかかってしまい申し訳ありませんでした」
「おかげでよく眠れたよ」
「そう仰っていただきありがとうございます。順にご報告したいのですが、よろしいですか?」
「あぁ、よろしく頼む」
「ではこちらの資料をお願いします。こちらが素材関係全般、続いてポーションなどの消耗品、更に魔道具と装備の鑑定結果並びに査定結果となっています。大変勝手ではございますがギルドとしての要望と買取希望価格も併せてご用意させていただきました。もちろんオークションに出す、もしくは皆様でご使用されるのは問題ありません。あくまでもギルドとしてできる最大限の提案だと思ってください」
順を追って出される書類に目を通していくだけなのに、量が多くあっという間に時間がすぎていく。
素材系は予想よりもかなり高く、特にドラゴン系は鱗一つで30万円を軽く超えてきた。
他の素材も珍しい魔物だったのか一つ3万前後を推移、結果素材だけで600万を超える金額の提示、さらにポーションなんかの消耗品で180万、魔装具で250万、この時点で1000万を超えている。
そこに各種装備が加わると・・・うん、もうわけがわからんな。
「以上になりますが、どうされますか?」
「とりあえず槍以外の装備は全部回収させてもらうとして、鉱石系どうする?」
「んー、今後も使う予定がなければ買取でいいんじゃないかな。集めて装備を作るのもいいけど、それを売って欲しいもの買った方が早いしね」
「私も賛成です。魔装具も私たちが使うものじゃないので現金化して別のものを買うのはどうでしょうか。ドラゴンの素材はすごいですけど2度と手に入らないというわけじゃないですから」
「確かにあの鍵があればもう一度戦えるわけだしな」
「和人君、桜ちゃんはそういう意味でいったんじゃないよ?」
「もちろんわかってるさ、だが可能か不可能かで聞かれたら前者だろ?」
「何度も言うけどドラゴンを少人数で倒すのは命知らずのすることだからね?いくら和人君が規格外でも命は一個しかないんだから」
「ういっす」
「あとはドラゴンオーブですけど、これはどうしますか?」
「素材はともかくこれはちょっとねぇ、何に使うんだって聞かれたらアレだけど流石に今すぐは決断できないんじゃないかな」
「ギルドとしては新エネルギーとして是非とも買い取らせていただきたいのですが、無理は言えません」
「じゃあ一旦回収して決まらなかったら買取にしよう。とりあえず素材と消耗品それと魔装具は全買取でよろしく頼む」
「かしこまりました。それでは依頼達成の報酬と共に振り込みますのでライセンスカードをお願いします」
報酬と買取で1500万超え、槍をオークションに出すこともできたけど他の装備を全回収したので今後の関係も考えてギルドで買い取ってもらうことにした。
リルの分はそのまま俺が貰うのでルナに500万を渡して1000万の稼ぎになる。
本当はここにマジックバッグや装備を足していくと軽く3000万ぐらいになるんだから宝物庫ってマジでやばいよなぁ。
言い換えるとそれだけの装備をタダで手に入れたってことになる。
装備は探索者にとって命そのもの、まぁ命をかけているのでただってのはおかしいけれどそれに見合った報酬だったと言えるだろう。
かくして宝物庫探索は無事に終了、ライセンスカードには新たなる実績が書き込まれたのだった。




