333.ドラゴンとの死闘を演じました
「ルナ!」
強烈な突進をルナの大楯が防ぐも勢いが強く嫌な音を立ててへしゃげていく。
【ミノタウロスのスキルを使用しました。ストックはありません】
それでもスキルを使いながらルナの背中を必死に支えながら最後まで耐え抜き、勢いが止まった隙を逃さずリルがサイドから強襲する。
狙うは怒りに燃えるその目。
鋭い爪が瞼の硬い鱗ごとそれを切り裂き、今日何度目かの悲鳴をあげる。
反対側の目はずいぶん前に潰したのでもう使えない、これがうまくいけばもうやつは・・・。
「リル!」
「キャイン!」
暴れ回るドラゴンの腕がリルの後ろ足に命中、そのまま地面に叩きつけられ壁まで吹き飛ばされてしまった。
慌てて彼女の元へ走るも後ろ脚は完全に潰れ、口から血が溢れ出している。
慌てて宝箱から手に入れたポーションを抱きあげながら強引に口の中へ、血を吐きながらもなんとか飲み込ませる。
すると、みるみるうちに足の形が戻り始めるも万全ではないのか足に力が入らず立ち上がることができないようだ。
「よくやった、ここで休んでてくれ」
「わふぅ」
「本当はブレスレットに戻らせたいんだが冷気耐性がなくなるからな、悪いがもうしばらく辛抱してくれ」
何度か彼女の頭を撫でてから再びドラゴンへと向き直す。
狂化により回復速度は上がっているようだけど潰された目が癒えることはなさそうだ。
視界を奪われ闇雲に暴れ回る純白のドラゴン、いやその体の至る所から血が流れもはや白い部分は残されていなかった。
重たい足を引きずってルナの元へ、だが彼女もまた満身創痍で鎧の至る所が変形してまともな部分はどこにもない。
「あとは俺がやるから戻ってていいぞ」
ふるふる。
「いざとなったら出てきてもらうからそれまで休んでいてくれ、大丈夫ちゃんと終わらせる」
ヘルムを被っているのと、実体化していないので表情はうかがえないが間違いなく不満げな顔をしていることだろう。
ここで指輪に戻るのは逃げるのも同じ、だが戻ってもらうほうが彼女自身の体力と装備が修復するので今のうちに少しでも回復してもらいたいところだ。
白い粒子になって指輪に戻るルナ、さぁ最後の戦いと行こうじゃないか。
両方の目がつぶれているとはいえ体力はまだ残っている。
尻尾がないので距離さえとればなんとかなるけど、気を付けるべきは急に吐き出されるブレスだ。
ルナがいなくなった以上あれを回避できるのは自分だけ、回避スキルもほぼほぼ残っていないだけに直撃だけは何としてでも避けなければ。
【恒常スキルを使用できませんでした。回復(小)次回使用は七分後です】
回復スキルもディレイ中、突進は終わっているのでとりあえず一回は使えるはずだ。
【現在のスキルレベルは11。現在所有しているのは炎上が三つ、火炎放射が三つ、攻撃力アップ(小)が三つ。恒常スキルは突進、回復(小)。補充回数なし。通常スキルは残りストック種は八つです。】
ストックは残り二つ、補充スキルも使ってしまったのでこれを使いきったら完全にゼロだ。
「お互いしんどいだろ?そろそろこれで終わりにしようぜ」
正直棍をかまえるだけの筋力も残っていない、カラカラと引きずりながらゆっくりと近づくと向こうもその気配がわかるのか、暴れていたのをぴたりとやめて何かを探るように顔を動かした。
目は見えずとも気配は感じる、満身創痍の顔でこちらを見たそいつは大きく口を開けブレスを吐く準備を・・・。
「って、ノータイムかよ!」
溜めもなく連続で吐き出される凍てつくブレスを左右に走りながら回避、何度も足がもつれそうになるけれどここで立ち止まるわけにはいかない。
必死に連射されるブレスを回避、側面へ回るとぼろぼろになった翼の付け根に向かって棍を振り下ろして肉をえぐると、痛みに耐えながらも巨体を生かしての体当たりを仕掛けてくる。
さっきまでならここでルナがカバーに入ってくれるけどわずかにできた足元の隙間をねらってヘッドスライディングのように飛び込んでかろうじて回避、そのまま後ろを振り向かずに攻撃圏外まで移動してから再び後ろを振り向くとあろうことかこちらに向かってブレスを吐こうとしていた。
今度は溜めを作った完璧な奴、これは突進スキルを使ってでも避ける・・・いや、このままじゃ埒が明かない。
「どっちのブレスが上か勝負しようぜ!」
逃げ続けてもいずれ体力が尽きてしまうの未来が見えている、それならばブレスを吐き終わった無防備な瞬間に今できる一番の技を叩きこむしかない。
【エクスプロージョンのスキルを使用しました。ストックは後二つです】
【エクスプロージョンのスキルを使用しました。ストックは後一つです】
【エクスプロージョンのスキルを使用しました。ストックはありません】
【コンビネーションスキルが発動。フルブレイズを使用しました。】
正面から向かってくるブレスに向かって火炎放射を発動、だが一発だけでは負けてしまうのでストック全てをつぎ込んでコンビネーションを発動させた。
一本だけでは弱くても三本重なれば強くなる。
真正面からぶつかり合う氷と炎、瞬く間に蒸気が周囲に立ち込めドラゴンを見失ってしまうもそこにいるのは分かっている。
【恒常スキルを使用しました。突進、次回使用は十五分後です】
ブレスが勝つか俺のスキルか勝つかはわからない、それでも威力は弱くなっていると信じてスキルを発動、最短距離でドラゴンへ向かう途中わずかに残った氷のブレスを浴びてしまうが全身が凍ろうとも勢いは止まらず白いブレスを抜けたその先に、奴の無防備な口元が見えた。
「吹き飛べ!」
【コンビネーションが発動。攻撃力アップ(中)を使用しました】
勢いもそのままに顎の下へ、攻撃力を底上げした棍を真上に突き上げて上顎へと突き刺すと残っていた魔力をすべて使って火水晶を爆発させる。
「グルァァァァァァァァァァッ!!」
上顎にめり込んだ体内での大爆発、内部から吹き飛ばされた口から大量の血を吐き出すもそれでも絶命はしてくれないようだ。
「しまった!」
爆発の反動で体勢が崩れ思わず棍を手放してしまった、そこに息も絶え絶えというドラゴンが上からのしかかってくる。
ドスンという音共にとんでもない重量がのしかかってきて、肺から酸素が全て出て行ってしまった。
「カハッ・・・」
かろうじて頭はつぶされなかったけど肩から下にドラゴンの頭が乗り、あまりの重量に体中が悲鳴を上げる。
くそ、重すぎだろこいつ!
必死にもがくけれどもびくともしない。
せっかくここまで来たのに、まさかの共倒れとかマジで勘弁してくれ。
引っ張り出してもらうにもリルは厳しいし、ルナもまだ指輪の中。
俺の横に出てきてもらって持ち上げてもらう事も出来なくはないだろうけど、あの体でそれが出来るかどうか・・・。
だがこのままだと圧死は確実、こんなところでやられてたまるか。
【フレアパペットのスキルを使用しました。ストックは後二つです】
【フレアパペットのスキルを使用しました。ストックは後一つです】
【フレアパペットのスキルを使用しました。ストックはありません】
【コンビネーションが発動。灰燼を使用しました。】
残っていたのは自分ごと相手を燃やす炎上スキル、コンビネーションによりさらに威力を増し瞬く間に白いドラゴンが真っ赤な炎に包まれた。
自分が燃える分には火傷をしないとはいえ相手が燃える分は違うらしくどんどんと体が熱くなる。
圧死か焼死かそれとも奴が死ぬのが先か。
「ガウ!」
「リ・・・ル」
その時だ、俺の体めがけて冷たいブレスが吹きかけられた。
そこにいたのは足を引きずりながらも助けに来てくれたリル、肺を潰されてまともに声は出せないけど確かに彼女は俺の声に反応している。
更に、不意にさっきまでの圧力が無くなったかと思ったら満身創痍のルナが四つん這いの格好で俺の上に現れ背中越しにドラゴンの頭をゆっくりと持ち上げていく。
潰された肺が大きく膨らみ酸素が一気に体にめぐる。
真上にはルナの顔、その後ろには燃え上がるドラゴンの体。
「大丈夫か?」
こくこく。
「そのままもう少し耐えてくれるか?」
【恒常スキルを使用しました。回復(小)次回使用は三十分後です】
回復スキルを使いながらなんとかルナの作ってくれた隙間から脱出、ふらふらと立ち上がり燃え上がるドラゴンの横を移動すると顎に突き刺したはずの棍が転がっていた。
それを手に取りゆっくりと顔の横へ移動、気づいてはいるけれどもう体を動かす力もないらしい。
「いい加減くたばれ」
声を張る元気もなく、振り上げた棍を燃え上がる奴の眉間めがけ力なく振り下ろす。
普段ならまともなダメージにすらならなかっただろう、でも今の状況では確実な一撃。
眉間に命中したと思ったらそのままガクンと高さが変わり、棍が地面に突き刺さる。
気づけば燃え上がるドラゴンの体がゆっくりと地面に沈み始めていた。
「おわ・・・った?」
ずぶずぶと沈んでいくドラゴンと前にその場にへたり込む。
なんともあっけない幕切れ、あれだけの死闘があんな一撃で終わりを迎えるなんて誰が思っただろうか。
かくして、スキルを全てつぎ込んだドラゴンとの死闘はギリギリの所で薄氷の勝利で幕を閉じたのだった。




