324.複数の魔物が控えていました
【スノーインプのスキルを収奪しました。投擲、ストックは後五つです】
氷を投げまくっていた小鬼は無事に撃破、収奪できたのは予想通りの投擲スキルだった。
意外と使い道の多い投擲スキル、まだ試していないけれどコンビネーションとかも期待できそうな汎用性の高いスキルなので出来る限りストックを回収しておこう。
リルが大方倒してしまったのでまだ半分しか回収できていないけれども、この感じだとまだまだ出てきそうなのであとで回収しても問題はないだろう。
【フロストブレンダのスキルを使用しました。ストックは後七つです】
加えてさっき収奪したもう一つのスキル、吸温という感じだから魔物から熱を奪うぐらいしか使えないと思っていたけれど試しに足元の雪を掴んでから使用すると見る見るうちに氷の塊へと変化していった。
おそらくは物の温度を下げることができるという事だけど、これって結構優秀じゃなかろうか。
雪を氷にできるだけでも投擲と合わせて飛び道具になるし、熱を帯びてしまった魔装銃を即席で冷やしたりぬるくなった酒をキンキンに冷やしたりできるわけだろ?
まぁ最後のは冗談として、使い方次第では化けるんじゃないだろうか。
「しかし初回から二種類とはなかなか厄介だな」
「わふ?」
「まだまだいけるって?それはかなり心強いけど、あと何種類出てくるんだろうなぁ」
ふるふる。
通常第一階層に出てくる魔物は一種類、稀にイレギュラーで二種類出てくるところもあったけれどもC級ダンジョンでもそれは同じだった。
浅い階層は魔素が薄くて強い魔物が生きられないとか、そもそも一種類しか存在できないとか色々と研究はされているけれども解明されたわけではない。
しかもここは宝物庫という特殊環境、現時点で二種類出てきているわけだしそれが増えないという保証はどこにもない。
「なにより目の前が白すぎて新しいのが出てきてもわからないだよなぁ。しかもどれも真っ白で保護色かって話・・・いや、リルの事じゃないぞ?」
「わふ!」
「でも不思議とリルは白くてもどこにいるかがわかるんだよなぁ・・・とはいえ勝手に遠くまで行かないでくれよ?」
いや、マジでさっきの戦闘でも真っ白いはずなのにどこで戦っているかはすぐにわかったし、戻ってきてもすぐに反応で来た。
これが魔物だと気づかないんだから別の何かで判別しているんだろうなぁ。
改めてリルに警戒してもらいながら雪原を黙々と歩き続ける。
さっきまでのにぎやかさはどこへやら、今度はゴウゴウという吹雪の音しか聞こえてこない。
なんならルナの鎧がこすれる音も間に雪が入るからか非常に小さく、さらに雪を前面に受けるので体がどんどんと白くなって行くせいで気を抜くとどこにいるかわからなくなりそうだ。
うーん、あまりにも白すぎてどのぐらい進んだのかすらわからない。
警戒しすぎて心はすり減り、無駄に体力を消費している感じがある。
あぁ、早く次の階層に行きたい。
それか変化、変化があれば・・・。
「ん?」
今そこの雪山が動いた?
ふと足を止めて目を向けた先にあったのは白い雪の山。
さっきからところどころにある吹き溜まりのような小さな雪の山、別に気にするほどじゃなかったけれどアレだけは何か違和感を感じる。
動くって言ってもゴゴゴゴ!と音を立てて動くわけでもなく、なんとなく左右に揺れたような気がしただけ。
吹雪が吹き付けて揺れている可能性もあるけれど、変わりがない物を見続けているからこそ変わったことに違和感を感じるわけで。
でもリルもルナも反応してないし、疲れて見えた幻覚かもしれない。
「ま、やるだけやればいいか」
【フロストブレンダのスキルを使用しました。ストックは後六つです】
足元の雪を掴んでスキルを発動、氷の塊を作ってこれを雪山に投げつける。
この距離なら投擲スキルを使うほどじゃない、そんな軽い気持ちで投げた塊はそのまま雪山にめり込み爆発するかのように雪が舞い上がった。
「は?」
人間想像していなかったことが起きるとフリーズしてしまうもの、何が起きたのかわからず固まった俺をかばうようにルナが前に飛び出しそれから少し遅れて何かがぶつかる轟音が響き割った。
「くそ、なんだよ!」
その音に我に返り慌ててリルの少し後ろで棍を構えなおす。
現れたのは巨大な雪玉、そいつはルナに激突すると再び後ろに下がってから猛スピードで回転しながら突っ込んでくる。
まるでエンジンをつけているかのような高加速、ぶつかるたびに轟音と地響きが響きルナがこちらへ押されていくのがわかる。
肉体を出せたらあの加速もしっかり受け止めるんだろうけど、この寒さの中肉体を出すのは危険極まりない。
オンオフできるとはいえケガや凍傷が治るかは確認していないので今それを試す必要はないだろう。
その後も何度か突進を繰り出すもだんだんと勢いが無くなり大楯にぶつかったまま停止、すると雪玉から突然手足が生えてきた。
「いや、アルマジロかよ」
まるでこの先にはいかせないと言わんばかりに両手両足を広げて立ちふさがる魔物、これで三種類目か。
動きは止まったもののまたいつ突進してくるかはわからない、ならば先手必勝でこちらも突進スキルで接敵して一気にカタをつけてやる。
【恒常スキルを使用しました。突進、次回使用は十五分後です】
ルナの後ろから飛び出してすれ違いざまに棍を思い切り振りぬくも、ものすごい速さでまた丸くなってしまい固い鱗を叩くだけ。
こいつは中々厄介だな。
背後を取るも向こうも素早く反転、そのまま高速体当たりを繰り出してくるがそれをステップスキルで華麗に回避し再びルナの後ろへと移動する。
このままでは決定打にかける、おそらく腹部は柔らかいんだろうけどそこを狙えるだけの速度が足りない。
固い鱗を攻撃するなら毒か溶解液で溶かすのが今までのやり方だが、残念ながらその両方を今回は収奪してきていない。
ならば燃やすか、はたまた気合で叩き潰すか。
強敵ではあるけれどこれまでの敵ほどじゃない、俺は一人じゃないしスキルを使えば何とかなるはず。
相手とにらみ合う事数十秒、次のスキルを唱えようとしたその時だ。
「なんだ!?」
横の雪山が突然爆発、またこのアルマジロもどきかと思いきや現れたのは背丈以上の白熊だった。
そいつは勢いよく立ち上がり両手を振り上げたお馴染みのポーズでこちらを威嚇してくる。
「おいおいおいおい!いったい何なんだよ!」
正面にアルマジロ、右に白熊。
こんな近くに魔物が二種類、リルはいったいどこ行ったんだ!?
なんにせよどうにかしないと先に進めない、白熊はルナに任せて再びアルマジロと対峙した。
「まったく、お手柔らかに頼むぞ」
棍を構えなおし相手の動きに集中、殴っても効果がないのなら別の手段をとるまでだ。
再び丸くなり高速突進を繰り出すが集中していたこともありスキルなしで回避、即座に反転する奴の攻撃を阻止するべく両手でその体を押さえて別のスキルを発動した。
【フレアパペットのスキルを使用しました。ストックは後九つです】
スキルの発動と同時に俺の手が燃え上がりそれがアルマジロへと延焼する。
【ミノタウロスのスキルを使用しました。ストックは後九つです】
突然体が燃え上がり大暴れするアルマジロを剛腕スキルで強引に動けないようにし、じたばたと暴れるのを押さえつける。
自分の腕も燃えているけれど炎上スキルは不思議とやけどすることはないんだよなぁ。
その横ではルナが白熊と激突しながらすれ違いざまに切り付けてダメージを与え続けている。
白い毛皮が赤く染まり、白ではなくピンクへ変わっていくもまだまだ倒れる気配はない。
まさかの二種同時戦闘、リルがいないのも気になるところだが今はこいつらを何とかしなければ。
流石にこれ以上はいないよな、そう願いながら次の一手を考えるのだった。




