318.魔力の塊をみつけました
激しい水しぶきをあげながら後ろに倒れるシードラゴン。
それを逃さず桜さんとリルが追い打ちをかけているところへ少し遅れて俺が到着。
胸部に突き刺さったままの棍を抜き取る。
動く気配はほとんどない、もちろん油断はしないがおそらくはこれで終わりだろう。
【シードラゴンのスキルを収奪しました。水連弾、ストックは後九つです】
収奪したのは先程から使われていたあの水魔法、無数の水弾が襲い掛かるあれを俺が使えると思うとちょっとワクワクしてしまった。
目的は達したので後は目の前のデカいのをと棍を振り上げて・・・と思ったら、桜さんの一撃が致命傷になったのかそのまま水の下に沈んで行ってしまった。
それと同時に残っていた子シードラゴンも静かに消えていく。
先程までの緊迫した戦いとは対照的に終わりはなんとも静かなものだ。
「終わった・・・のか?」
「みたいですね」
「わふ!」
ドロップ品を咥えたリルが俺のそばにきて嬉しそうに見せてくる。
咥えられていたのは俺達を悩ませていたあのヒレ、その後ろを見ると桜さんが別のドロップ品を回収している。
あれは鱗、それと・・・魔力オーブか!
得意げな顔で高々と魔力オーブを掲げる桜さん、とりあえずリルの頭をなでてヒレを回収しつつ全員が彼女の所へ集まっていく。
「とりあえずお疲れ!それとおめでとう!」
「ヒレとか鱗もうれしいけど、イズミのダンジョンと言えばやっぱりこれだよな」
「ですね!これでまた一歩姿を取り戻せます。ってことで、どうぞルナちゃん」
桜さんが差し出したオーブを申し訳なさそうな感じで受け取り、本当にいいのか?という感じで全員を見回すも誰もが力強く頷いていく。
元々これを回収するために来たようなものなんだから何を遠慮することがあるだろうか。
現状でもそれなりに肉体を取り戻せるようになっているけれど、常時出すのは大変そうなのでこれでまたそれに近づくことになる。
肉体がないほうが色々と便利なこともあるようだけどやっぱり体があるというのはいいことだ。
改めて深々と頭を下げてから両手に抱いたオーブをゆっくりと胸元に押しあてると飲み込まれるように鎧の内側へと消えていく。
そのまま胸に手を当てる彼女を見守ること数十秒、最初と違って急に脱力することもなくゆっくりと顔を上げた。
ヘルムの下では笑顔の花が咲いていることだろう、素顔は見えないけれど間違いなく喜んでいるのが伝わってくる。
「これでまた一歩完全体に近づきましたね」
「なんだよ完全体って」
「完全体は完全体です、ルナちゃんが私達と変わらない肉体を取り戻す日までまだまだ回収を続けますよ!」
「それは構わないが・・・ぶっちゃけ後何個ぐらい必要なんだ?」
「?」
何かメーターがあるわけじゃないし具体的に何個なんてわかるはずがない。
申し訳なさそうな雰囲気を出しながら首をかしげるルナ、ともかく桜さんの言う完全体とやらにまた一歩近づいたという事でいいだろう。
「さて、あとは回収するもの回収して上に戻ろう。ここにはもう泉はないんだろ?」
「チッチッチ、甘いなぁ和人君。最下層なんだからもちろんあるに決まっていてるじゃない」
「決まってるのか」
「そりゃご褒美だからね!宝箱の横にあるからサクッと回収して地上に戻ろう」
「ちなみにそこにオーブがある可能性は?」
「んー、ゼロじゃないかな」
ま、さっき見つけたばかりだしその辺は期待せずに行くとしよう。
最下層なので階段はなし、広いドームの奥へと進むと小さな通路がありそこを頭を下げながら進んでいくと転送装置の横に宝箱と小さな泉が湧き出ていた。
「銀箱!」
「まぁC級だし当然と言えば当然か」
「罠は・・・ありません、大丈夫です」
「中は何かな~、凜ちゃん早く早く!」
「慌てないで今開けるから」
須磨寺さんにせかされながら七扇さんが開けた宝箱の中に入っていたのはクリスタルが一つとポーション系の小瓶それと杖だった。
装備品が出るのはうれしいけれど、ぶっちゃけ今のメンバーは誰も使わないだけに微妙といえば微妙か。
「オーブはなかったみたいだな」
「まぁ仕方ないよ。それよりも杖が出るなんて大当たりだね!」
「そうなのか?」
「杖系はドロップ数が少ない割に需要が多いから高値で取引されるんだ。小瓶の中身も後で確認するとしてクリスタルはどうする?誰か使う?」
「俺はパス」
「私も今ので十分何とかなっていますので」
「ワフ!」
ふるふる。
俺と桜さんは辞退、リルとルナはまぁスルーするとして残るは七扇さんと須磨寺さんか。
「僕もパスかな、この前使わせてもらったし凜ちゃんが使いなよ」
「でも・・・」
「俺達に遠慮しなくていいぞ、売ってもいいけどせっかくなら使わないと」
「もし外れてもまた次回チャレンジしたらいいんです」
「だってさ、だから遠慮なく使ってみたら?久しく使ってないんでしょ?」
「それはそうですけど・・・」
七扇さんの場合はギルド職員をしていたこともあり一時的に探索者を引退していた状態、それ以降クリスタルを使うことはなかっただろうからいいきっかけになるんじゃないだろうか。
何か手に入れば万々歳、手に入らなくても探索者として新たに一歩を進んでいるという事になる。
探索者は常に戦い続ける職業、新しいスキルは新たな戦い方を模索するうえでも必要不可欠なので今後も発見次第順番に使用して活用していくのがいいだろう。
俺の場合は収奪スキルで色々なスキルを手に入れられるので、パーティー全体の事を考えればみんなに使ってもらうほうがいい。
決してこの前の連続失敗を引きずっているわけではない。
全員の視線を一身に浴びながら七扇さんがクリスタルに魔力を込めるも残念ながらスキルを手に入れることはできなかった。
ま、そういうときもあるさ。
「さて、あとは魔力水を回収して地上に戻ろう。ドロップ品もそれなりにあるし、杖次第ではそれなりにいい感じの収入になるんじゃないか?」
「捕らぬ狸の皮算用ってやつだよ和人君、期待はしすぎないでよね」
「へいへい」
「あの、私は!」
「私はいらないはだめだからね凜ちゃん」
「それはそれ、これはこれってことだ」
先手を打たれた七扇さんが更に申し訳なさそうな顔をするけれど、全員がそれを望んでいないので今回も公平に分配することに。
転送装置でダンジョン前に戻り、そこからさらに地上へと移動。
梅田ダンジョンの難点はこの移動だけどそれに見合うだけの収穫があるのでやめられないんだよなぁ。
「それじゃあ諸々の手続きは僕がしとくからみんなはごゆっくり」
「いつも悪いな」
「それが仕事だからね。あれ?ルナちゃんは?」
「さっきまでそこにいたんだが・・・指輪か?」
ギルドでの手続きを須磨寺さんに任せつつそれぞれが更衣室に移動、シャワーやらなんやらを済ませるべく大浴場に向かったんだが生憎と人だらけだったのでしぶしぶ更衣室に引き返した。
水走スキルのおかげでそこまで冷えてはいないけど、汗やらなんやらを流しておきたかったんだけどなぁ。
「お?新明じゃねぇか」
「岩城さん!先日はどうもありがとうございました」
ロッカー前の椅子に腰かけていると大浴場の方からやってきた岩城さんに声をかけられた。
相変わらず体も声もナニもデカいなぁこの人は。
「別に敬語なんて使わなくていいぞ、それよりこんなところに座ってどうしたんだ?」
「大浴場に行ったんだが生憎といっぱいだったんでね」
「あーそりゃ悪いことしたな、ちょうどうちの旅団も戻ってきた所なんだ」
「なるほど」
すぐに引き返してきたんであまりはっきり見てないけど、確かにごつい人ばかりだった気がいないでもない。
どうやらタイミングが悪かっただけ見たいだな。
「どこか潜ってたのか?」
「せっかく半分潜ったから泉のダンジョンの残りを走破してきたんだ。うちはまだランクが低いから実績作りをしとかないと」
「早く上に上がって来いよ、次は月城抜きで新しいダンジョンに潜ろうぜ」
「機会があればその時はよろしく頼む」
「そうだ、お前だけなら貸切風呂を使わせてもらったらどうだ?30分しか使えないが今ちょうど空いてるはずだぞ」
「貸切風呂?」
そんな旅館とかみたいな施設があるのか?
大浴場横にあった扉が入口らしく、他人と風呂に入れないとかそういう事情の人も使えるようにと用意されているらしい。
様子を見に行くと空室の札がかけられている。
桜さん達を待たせるわけにはいかないし折角空いてるなら使わない手はないな。
そんなわけで岩城さんにお礼を言ってから貸切風呂へと移動、ぶっちゃけ期待はしていなかったんだが浴場を見るとなかなかに大きな湯舟があった。
鍵をかけてパパっと服を脱ぎ浴場内へ、かけ湯をしていざ湯船へ・・・と思ったその時だ。
まばゆい光と共にルナの入っている指輪が光り、そこから光の塊が飛び出してきた。




