316.皆を励まして戦いました
泉のダンジョン階層主、シードラゴン。
流石に魔力水で変化したシーサーペントと比べるのはあれだけど、それでもC級ダンジョンの階層主にふさわしい強さを有している。
まずめんどくさいのは水魔法。
足元の水を使って無限に出るんじゃないかってぐらいに水の弾を作成、それが雨のように降り注ぐ中回避しなければならない。
次いで火吐き。
水魔法をかいくぐって何とか接近してもストローのような口から吐き出される火炎放射によって容易に近づくことができない。
幸いこれはリルのブレスで対処できるものの、大事なダメージディーラーを失うことになるので俺がしっかりとダメージを与える必要がある。
その他にも見た目以上に素早い体当たりや毒ヒレを使った麻痺攻撃なんかもあるので油断はできない。
こいつよりもでかいやつと戦えたのもサポートしてくれる人たちがいたからこそ、それぞれが役割をもって戦えているから今の所は何とかなっているけれど歯車が一つでもずれてしまうと一から構築しなおさなければならないだろう。
決して余裕があるわけじゃない。
「ありがとうルナ、助かった」
こくこく。
ドカン!という音と共に奴の巨体がルナの大楯にぶち当たり、そのまま2mぐらい後退するけれどそれでも彼女が倒れることはなかった。
想像以上に素早い体当たり、少しでもルナの後ろに回るのが遅かったら吹き飛ばされていたのは間違いない。
その隙にリルが後ろに回り込み、ヒラヒラと揺れる麻痺毒のヒレを切り落とすけれどもしばらくすると自己再生機能によって復活してしまう。
見た目はそんなに強そうじゃないのに、名前負けしない実力。
流石階層主というところか。
【スケルトンジェネラルのスキルを使用しました。ストックは後五つです】
【トイアーミーのスキルを使用しました。ストックは後三つです】
【トイアーミーのスキルを使用しました。ストックは後二つです】
【コンビネーションが発動、拡散攻撃力アップ(小)を使用しました】
「長期戦になる、みんな無理するなよ!」
「とか言いながら攻撃バフをまいちゃうのが和人君だよね」
「攻撃の手を緩めたらそこで終わりだからな」
「頑張ります!」
「ガウ!」
ルナが攻撃を引き受けてくれている間に体勢を整え、全員のモチベを上げるべく鼓舞スキルと攻撃力バフを使っておく。
少しでも引けば一気に押し込まれるのは間違いない、最悪の場合撤退することもできるけれどとりあえず今は前を向いて戦うのが大切だ。
「水魔法、来ます!」
「全員回避、同じ方向に逃げるなよ。」
ルナへの激しい攻撃の間に水魔法をチャージしたシードラゴン、強烈な体当たりで彼女の体制を崩したタイミングで無数の水弾を発射しそれが須磨寺さんを含めた全員へと降り注ぐ。
同じ方向に逃げると弾幕が厚くなるので散開して密度を薄くするのがポイントだ。
幸いホーミング性能はないので直線的に逃げ続ければ何とかなる、須磨寺さんと七扇さんは左右にリルと桜さんはシードラゴンを左右から挟むように左右斜め方向へと走り出す。
俺?
ダメージディーラーの仕事は突撃あるのみ、奴を正面に見据えてスキルを発動する。
【ファットボアのスキルを使用しました。ストックは後四つです】
ロケットスキルで一気に加速、水弾の降り注ぐ中そのままルナを追い越して奴の腹部へと一気に接敵。
攻撃力アップとロケットの推進力を渾身のフルスイングに乗せてぶち込んでやると、固い鱗が砕け散りそのまま体にめり込んでいく。
手ごたえあり!
【セイレーンのスキルを使用しました。ストックは後六つです】
セイレーンのスキルは簡易弱点看破。
音波を使うことで当たった相手の硬いところや柔らかいところを判別できるのか、視覚的にその部分が表示される感じだ。
エコーは超音波で場所を把握するのでどうやら用途が違うらしい、ともかく弱点がわかればそこを攻撃するだけ、勢いもそのままに棍を二つに分けて連撃を繰り返し、一気にダメージを稼いでいく。
「リルちゃんヒレの根本!」
「グァゥ!」
そこへ水弾を避け終えた桜さんとリルが合流、痛みにもだえて火炎放射が使えなかったのか無防備なったところへ桜さんの指示が飛び邪魔をしていた麻痺毒のヒレを根元から切り裂いた。
加えてブレスを吐きかけることで再生を阻害、落下したヒレはそのまま地面に吸い込まれていった。
「いけるぞ!」
【恒常スキルを使用しました。突進、次回使用は十五分後です】
翼のように一対になっていたヒレが落ち、残るはあと一本。
ここで手を緩めるわけにはいかないと突進スキルで巨体を押しのけ、バランスを崩したところへ桜さんとリルが猛攻を仕掛ける。
ここで剛腕スキルがあればもっとダメージを稼げたけれど、疑似バフがあるのでそれを生かしてやるしかない。
サンドバッグのようにボコボコにされるシードラゴン、このままならいけると思ったその時だ。
「和人さん下がって!」
「おっとぉ!?」
何かを察知した桜さんの指示に攻撃し続けていた俺は即座に反応できなかったが、リルが俺の腕を噛んで引っ張ってくれたおかげで何かが通り過ぎるのを避けることができた。
足元から吹きあがったのは平たい噴水のような何か。
それがシードラゴンを守るように噴き上がり、容易に近づくことができなくなってしまった。
「暴走したか」
「おそらくは」
「C級以上はこれがあるからなぁ、一気に行けると思ったんだがそう簡単にはやらせてもらえないらしい」
「ギルドの情報では暴走すると魔法がかなり強化されるそうです、それと数が増えるとか」
「数が増える?」
「と、聞いています」
ギルドの情報なんだから間違いないと思うんだがどうやって数が増えるんだ?
まさかシーサーペントのように分裂するとか?
今だ水のカーテンは下がらず、俺達も距離を取りながら休憩しつつ様子をうかがう。
カロリーの高い携帯食料をスポーツドリンクを流し込み、準備運動をしながらその時を待つ。
「グァゥ!」
「お、向こうも準備が終わったみたいだな・・・って、おいおい」
「これはちょっと増えすぎでは?」
水のカーテンが下がった向こうから現れたのは、シードラゴンとその子供たち。
大きさは三分の一程度だが、それでも50cmぐらいはありそうなやつが無数に群がっている。
親は麻痺毒のヒレを片方失っているけれど、子供たちのそれは健在。
もしかしてこれを避けながら戦えってか?
確か現実のシードラゴンの中には体の中で子育てするっていうけれど、それを魔物がするとか勘弁してほしいんだが?
「来るよ!」
「動揺してても仕方がない、とりあえずヒレには気を付けながら各個撃破!水魔法が来るタイミングは須磨寺さんに任せた!」
「任せといて!」
「リルはブレスを使って動きを阻害、ルナは親の方を任せた。桜さんと七扇さんはは各個撃破しつつ流れたのが後ろに行かないように注意してくれ」
「和人君は?」
「突撃あるのみ!」
色々スキルがあったとしても、俺にできるのは攻撃することのみ。
波のように押し寄せてくるシードラゴンの子供に向かって棍を構え、スキルを心の中で唱えるのだった。




