ブレスレット【ハルムート視点】
「ないなぁ…。」
僕は周囲を見渡し、溜息をついた。
この広大な庭園で、果たして僕は見つけることができるのかなぁ。
一瞬『諦め』の文字が頭に浮かぶ。だけど僕はそれを無理矢理振り払って、再び整然と並んでいる植木の間や花壇の周りを探すことにした。
僕は今、エリーの屋敷の庭園にいる。
何でって?
それはあれだよ。うん…、僕が投げてしまったあのブレスレットを探す為さ。
漸くちゃんとした外出の許可を得られたからね。
因みにエリーにはすべてを話しているし、捜索の許可も得ている。というか、全てを話した後、僕はエリーに滅茶苦茶怒られた。私たちのことを何だと思ってたの!って。友達じゃなかったの!って。私だって友達として愛しているのに!って、泣きながら怒られてしまった。
そしてそれを見たフェルナンドにまた怒られた。
僕は全く周りを見れていなかったんだなって思ったよ。そして、僕が気づいていないだけで僕を愛してくれている人はいるんだって気づくことができた。気づけたのは勿論ソフィリア嬢のおかげだと思ってる。
それにしてもエリーの怒りは怖かったなぁ。思い出すと背筋が凍りそうだ。まぁ、フェルナンドはそんなところも可愛いと言っていたけれど。
…正直、よくわからない。
ただ、僕はあの後とても後悔したんだ。
ソフィリア嬢に迷惑をかけてしまったことも、傷つけてしまったことも。そして僕の醜い部分をぶつけてしまったことも。正直、ソフィリア嬢を傷つけるつもりではなかったんだ。ちょっとちょっかいをかけて、ルーウェンの悔しがる姿を見れればいいなって…。
いや、今更こんな言い訳はどうでもいいか。
ソフィリア嬢に謝罪は受け入れてもらったけれど、やはり僕が失くさせてしまったあのブレスレットは見つけて返したい。
だから、なにがなんでも探し出す。そう思ってここにやってきたのだけど…。
全然見つからない。
この広大な庭園のどこにいってしまったのか。そもそも僕が投げられる距離なんてそんなに遠くはないだろう。それに、ルーウェンの魔力を辿れば簡単に見つかると思っていたのだけどなぁ。
はぁ…。
少し休憩するか。
花壇に咲くアメジストセージを見ると、ソフィリア嬢の瞳を思い出す。ビロード生地のようにやわらかそうで鮮やかな紫色の花たち。花壇一杯の紫色のその花たちは、風が吹いていないのに風に揺れるように咲いていて。その姿は強く美しく思わず目を奪われてしまう。
彼女のこちらを見る紫色の瞳は、まだルーウェンの魔力を多く残しているためか光を失い濁っていた。それでも、真剣で嘘偽りのない彼女の強い意思が籠っていて。今目の前で咲いているこの花たちと同じ様に、思わず目を奪われてしまったことを思い出す。
でも、だから…信じることができたと思う。彼女の瞳とそこから伝う涙をみて、彼女の言葉を信じたいと思ったから。
そう。彼女は…ソフィリア嬢は、僕にこう言ったんだよね。
友人として僕を愛してくれていると。そして、愛は1つではなく、いろんな形があるということを。だから、焦らなくていい。ゆっくり一緒に探していこう。ってね。
本当に感謝している。
それを知らないままだったら、今頃僕は変わらず最低な事を繰り返していただろう。
僕はもう人を傷つけたくはないし、自分自身を傷つけたくもない。その行為がとても辛くしんどいことだとわかっているから。それにさっきも言った通り、ソフィリア嬢がゆっくりでいいと言ってくれたから。だから、僕は…。
そんなことを考えながら一息ついていると、急に後ろから声をかけられた。
声の主はすぐにわかった。探しているブレスレットに込めた魔力の主でもあるから。
僕はゆっくりと振り返る。
その主は、少し遠いところに立っていて、紅く鋭い双眸をこちらに向けていた。表情は無表情。だが、眉間に力が…
って、うわっ!?
いきなり目の前に何かが飛んできた。
慌てて飛んできたそれを手に掴んだ。
一体なんだ!?
手を開いて確認すると、なんと僕の手の中には探し求めていたものがあった。
そう、そこにはあったのだ。僕が投げ捨て、そして今まさに探していたブレスレットが。
何故これが!?そしてどうしてルーウェンが持っていたの!?そしてなぜ僕に!?
いろんな疑問が頭に浮かび、混乱しながらも理由を聞こうと顔を上げる。だけど、さっきまでそこにいたはずのルーウェンは既に姿を消していた。
どこに行っちゃったの?
それに、一体どういうこと!?
暫く手中におさまっているブレスレットを眺めていると、また声を掛けられた。
でもそれは、先ほどとは違う声だった。
とても久しぶりの投稿となりました。
読んでる方は少ないかもしれませんが、少しずつまた書いていけたらと思います。




