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傾国の美男子  作者: 空乃明
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ブレスレット2【ハルムート視点】

声がした方向を見ると、そこにはこの庭園の主…いや正確には主ではないが、僕がここに入る許可をくれた人物、そうエリーが立っていた。



「ハルムート様、探し物は見つかりまして?」


「え?あ、ああ…。」



見つかった…というか、何というか…。

僕が微妙な表情をしていたからだろうか。エリーの方から盛大な溜息が聞こえてきた。



「はぁ。まったく。どうしてこう男達は言葉が少ないというか、自分の内に秘めたがるのでしょう?」

「え?」



いきなりどうしたのだろう。



「あれですわ。貴族である以上、ある程度の感情や思惑は隠さなければいけないことだと当然わかっております。それでも、思っていることは言葉に出さないと相手には伝わらないことがあるということも知っておくべきでしてよ。相手の考えが読めるのなら別ですけれど。そうじゃないでしょう?そもそも、相手の考えが読めていたらこんなことになっていなかったはずでしょうしね?」



そうニコリと笑うエリーは息を呑むほど美しく、そして恐ろしかった。



「はぁ。まぁいいですわ。どうせルーウェン様も何も言わずそれを貴方に渡したのでしょう?」


「ああ。いきなり渡されて(正確には投げられて)、いつの間にかいなくなってたよ。」


「全く…。ルーウェン様はソフィが目覚めた次の日にこの屋敷に訪れて、さっさと見つけて帰っていかれましたわよ。」


「え!?じゃあ既にここにはなかったってこと!?」


「その通りですわ。」



ええ…。それって骨折り損ってやつでは…?

エリーは知ってて僕に探させていたの…?



「ふふ、罰ですわ。わたくしからハルムート様への。だって、わたくしの友人であるソフィに怪我をさせたのですもの。理由が何であれ、女性を傷つけるなんて許せる行為ではありませんから。それに、わたくしたちの愛にも気づいていらっしゃらなかったようでしたしね?」



う…確かにそうだ。

僕の心を読んだかのような返答にシュンとなる。



「ふぅ。時期を見て言いに来るつもりでしたわ。そもそも、今日ハルムート様がいらっしゃるのは想定外でしたし。それに、あのブレスレットは既にソフィに返ってるものだと思っていましたから。

…なぜルーウェン様は早々に見つけておいて、彼女にすぐに渡さなかったのでしょうね?」


「…。」



確かに。エリーの言うとおりだ。

早々に見つけていたのであれば、既に返していても何ら不思議ではない。

それを渡さずとって置いて、何故今日僕に渡したのだろうか…?


僕から返すべきだとルーウェンは考えているのだろうか…?だけどどうして…?

ルーウェンから渡せば、ソフィリア嬢はルーウェンへ好意を抱くかもしれないのに。その好機をふいにして、僕に渡したというの…?



僕は戸惑いを隠せず、掌に置かれているブレスレットをじっと眺めた。


ゆったりと光るルビーが、まるで魔力の揺らめきのように見える。だが、ルーウェンの表情と同様に何も計り知ることは出来なかった。



「これはわたくしの憶測ですけれど。」

と、僕の考えを感じ取ったかのように大きく溜息をついた後、そう言ってエリーが話し始めた。


「ルーウェン様はハルムート様からソフィへそのブレスレットを返すべきだとお考えになっているのではないかと思います。友人となったお二方の間に蟠りができないようにと。

ルーウェン様は…その、ソフィから奪ったものを返せない苦しみや辛さを一番理解しているでしょうから。ですからきっと…。友人なら、相手に負い目を感じたくないでしょうし。

…まぁ、あくまでもわたくしの考えですから実際ハルムート様がどうお考えなのかは知りませんけどね。


それにしても、届けるなら早い方がいいですわよ。ほら、もう手元にあるのですし。

では、わたくしはブレスレットの件についてお伝えしに来ただけですので、これで失礼いたしますわ。」


そう言って、美しく整った礼をしてスタスタと屋敷の方へ戻っていった。



なるほど…、そういうことなのだろうか。


それにしては、ルーウェンの眉間にはきつい皺が刻まれていたけどね。本当は僕に渡すの嫌だったのかな?嫌々ながらも僕にこれを託してくれた…というわけか。その気遣いには感謝しなければならないなぁ。

といっても、僕のことというよりはソフィリア嬢のことを考えての行動だとは思うけどね。



でも、そんなに嫌なら渡さなければいいのにとも思ってしまう。

ルーウェンのあの眉間の皺の深さ。

ふふ、思い出すとどうしても笑ってしまう。


…本当にソフィリア嬢のこと想っているんだね。



さて、エリーに怒られないうちにお詫びの品を買ってからこのブレスレットを返しに行くことにしよう。

それからルーウェンにも感謝と、それから謝罪を伝えないとな。




ふふ。いい友人が僕の周りにいるではないか。


表面上の関係でなく、本気で泣いたり怒ったり心配してくれる相手が。ソフィリア嬢によれば、泣いたり笑ったり怒ったりしながら愛は出来上がっていくんだろう?あれ、違うかったっけ?まぁ、でももう焦らないって決めたから。少なくとも、僕を愛してくれている人はいるとわかったから。


それに、ゆっくりと周りを見ることが出来るようになって、以前のような焦りや焦燥感はとても少なくなった気がする。勿論ふとした時に、どこからかやってはくるけどね。


これからは焦らず生きようと思う。僕にとって大切だと思える人たちのためにも。

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