勉強
さて家庭教師の件だけど、あれは事実なのだ。
今日は確かシュルンゼ先生がいらっしゃる日。
そろそろ行くか…と思い自室から出て応接間に入ると、すでにシュルンゼ先生はいらしていた。
ありゃ、遅れてしまったかな…?
「遅くなって申し訳ございません。お待たせいたしました。」
此方に気づいた先生はニコリと笑って、優しい声と仕草で椅子へと案内される。
「いえ、私が少し早く来てしまったものですから。こちらへどうぞ。早速、始めていきましょう。」
応接間の窓際にある机と椅子2脚は、私の勉強のために用意されたものだ。
私はひかれた椅子にストンと座り、ほっと息を吐いた。机を挟んだ向かいにシュルンゼ先生が座ると、再び目が合ってお互いにニコリと笑った。なぜかシュルンゼ先生の笑顔はつられるというか連鎖するというか…とても不思議な雰囲気を纏った人なのだ。
シュルンゼ先生は普段優しいが怒ると怖いらしい。らしいと言うのは、そういう噂を聞いたから。でも雰囲気的にはいつも穏やかで笑っている印象がある。でもそういう穏やかな人ほど起こると怖いっていうし、やはり怒らせるようなことはしないほうがいいだろう。
それに、シュルンゼ先生は先ほども言った通り不思議な人だ。雰囲気も不思議だが、年齢も不詳なのだ。見た目はとても整っていて若々しいけど、実はかなりお歳を召しているとか…。何故ならソフィリアの母も同様に教えを乞うていたらしい。それを考えると…いや、正直全然わからない。
今日も麗しくつるんとした肌に柳色のやや白みがかった長い髪を緩く一つに結んでいる。
…本当にいったい何歳なのだろう。後光がさすように窓から入る陽の光が、より神秘的に見せる。
「ソフィリア嬢。聞いていますか?」
少し問い詰められるような声色でそう言われ、慌てて意識をこちらに戻す。
おっと、危ない危ない。
「も、もちろんです、シュルンゼ先生。」
因みにシュルンゼからはこの国の成り立ちや貴族について教えてもらっている。
「ふむ。では続きを。この国は頂点に王族が、それを支える4公爵家があるのは以前お教えいたしましたね?」
「はい。」
「4公爵というのは、かつてこの国を創った初代の国王とその側近たちが始祖と言われています。そのため4公爵家は王族というより王に仕える貴族と言えるでしょう。ご存じかとは思いますが、フォントラス家・ディスティーア家・ダンウォール家・デュテローム家が4公爵家です。それぞれの家は今でも王国の中枢を担っております。」
フォントラス家は騎士として、ダンウォール家は魔術師として国を守っているし、ディスティーア家は国の宰相でとして中枢を支えている。確か、デュテローム家は外交だっけ?詳しくは覚えてないけど。だけど、シュルンゼ先生がそのように言っているからそうなのだろう。
「けれども最近は4公爵家が力を持ちすぎていることや、王家に干渉していると囁かれるようになってきました。そして、4公爵その存在そのものに異を唱える貴族が現れています。」
「4公爵に異を唱える貴族?」
「そうです。権力が4公爵家に集まりすぎていると訴えるバ…貴族がいます。」
今バカって言おうとした?まさかね?
それに、これはまだあまり表立って話すことができるものではありませんが…って言っているけれど、それをたかが伯爵家の引籠令嬢に話をしていいことなの?
「4公爵家はもちろん権力はありますが、それにより縛られることも多いのです。4公爵家は、全てもの貴族に平等でなければいけません。勿論例外はありませうが。それに、多くは知られていませんが、国王と4公爵家はとある誓約で結ばれています。そのため国王と4公爵はお互いを監視していると言っても過言ではありません。
それなのに、それをご存じではないどこぞの誰かが地方の貴族たちを唆し、反権威派と称して勢力を強めてきているようです。現在は実質的な被害はありません。ですが今後どのようなことが生じるかわかりませんし、まだどの貴族がその反権威派と言われる勢力に所属しているのかわかっていません。
今回、私がわざわざ貴方にこの話をしたのは、今後社交で外に出られることが多くなることを踏まえて注意していただきたいと思ってのことです。噂によるとソフィリア嬢、貴方は些か何かに巻き込まれるということが多いと伺いましたので。ですから、十分にご注意くださいね?」
「なるほど…。わかりました。」
その噂、だれからどのように聞いたのだろう。気になる。
まぁつまりは、変なのに巻き込まれるなってことかな?
それにしても、そんな設定ゲームにあったかしら?うーん…。全く記憶にない。
「では、次に国王の選定についてお話しします。」




