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傾国の美男子  作者: 空乃明
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願い事

私のお願い事。



まず1つめは情報収集である。

もともとエリー様の誕生日会の1番の目的はテルノミナ男爵とその娘であるヒロインの情報収集だったはずだ。



それが何故かあのような事になり、情報収集どころではなくなってしまった。だからハルムート様には、テルノミナ男爵とその娘について知っていることを聞きたい。

顔の広いハルムート様なら、私より知っていることが多いだろう。きっと女性同士の噂話も耳にしているはずだ。寧ろ、ハルムート様が知らないとなればどうやって今後、情報収集をしていけばいいのかわからなくなりそうだ。



それから2つ目はフェルナンド王子の侍従であるフェニルラン侯爵の監視。

いつフェルナンド王子を裏切るのかわからない。なぜ裏切ったのか理由もわからない。だから、常に近くにいても怪しまれないだろう側近候補のハルムート様がフェニルラン侯爵を監視するのはとても効率がいいと思ったのだ。



だけど…。

なぜ男爵とその娘の情報が欲しいのか?

なぜフェニルラン侯爵を監視する必要があるのか?

そう理由を聞かれると上手く説明できない。そういう未来をゲームで知ってるからとも言えないし、全くもって躱せるきがしないのである。



…特にルーウェン様に。



すると。



「何故黙っている?そんなに言いにくいことなのか?それとも私に聞かれたくないのかな?」

と言われ、心臓がぎゅっとなった。

だって全くその通りだから。



でも、正直に『はいそうです』なんて言えるはずもなく。

「い、いえ。決してそのようなことは…(ありまくるんですが)。」

とお茶を濁すことしかできなかった。

正直怪しいと自分でも思う。



そしてやはりルーウェン様には誤魔化しは通用しなかった。



そう言った瞬間、逃がさないよ?と言わんばかりの猛禽類のような鋭く紅い瞳で私を捕え、ニコリと笑ってパシャリと言った。

「じゃあ、思いついたことを今ここで話して構わないのでは?ハルムートも証人がいたほうがいいでしょう。」と。



その声色は若干苛ついているようにも聞こえ、普段は絶対に見ないニコリと作られた笑顔は底冷えがする程に恐ろしい。

チラリとハルムート様の方を見るが、ハルムート様の表情は全く変わらない。涼しくにこやかな優しい雰囲気のままだ。ルーウェン様のこの恐ろしい雰囲気に気づいているのかいないのかさえわからない。

けれど、ただルーウェン様の言葉に大きく頷いていた。

「確かにその通りだ。ソフィリア嬢。」と。



あー…。

これは逃げられないかも…。

しかもやはり流れ的に、2人共に私のお願い事を話さなければならないと…。



「えっと、その…。」

「本当に何でもかまわないよ。」

言葉を詰まらせる私に被せるその優しいが有無を言わせないその声に、ゴクリと喉が鳴る。



「えーと、そうですね…。考え付くお願事は2つありまして。どちらにしようかかと迷うのですが…。」

「勿論どちらも聞くよ。」

間髪入れずそう言ってニコリと柔らかく微笑むその青と緑が混じった瞳に吸い込まれてしまいそうだ。いや、もういっそ吸い込まれてしまいたい。



はぁ…。

どうしよう。

やはり、逃げ場はなさそう…。



なんて考えてながら右往左往している私の視線とルーウェン様の深い紅に染まった不機嫌な目がかち合った。

どちらからもはやく言えと言われているようで、焦る。



うぅー…。

しかたない。ここまできたなら、泥船に乗っかる気持ちでいこう。

いや、乗るのは目の前の2人だけどね?



大きく息を吸い、ゆっくりと吐き出す。諦めとともに。

そして私は話すことにした。



「その…。1つは、とある方のことをお聞きしたいんです。」

考えてもいなかったことなのか、意表を突かれたような表情のハルムート様。

少し間を置いた後、ゆっくりと私に聞いてきた。


「…とある方とは?」

「ご存じかどうかわからないのですが、テルノミナ男爵という方のことです。ご存知ですか?」

「テルノミナ男爵…ですか?」

そう言ってハルムート様は何やら思案し始めた。きっと思い出そうとしてくれているのだろう。



「聞かない名前だな…。」

「僕も知らない名だ。」



え…そうなの?ハルムート様もましてやルーウェン様も知らないなんて。

全くの想定外だ。どうしよう。



「そ、そうですか、なら…いいのです。」

私の声は動揺から震えていたかもしれない。でもそんなことが気にならないくらいに今後どうしよう、そうなるのだろう?という漠然とした不安が広がっていた。



「…何故テルノミナ男爵のことを知りたいのだ?」



そう言って、ギラリとまた紅い瞳が光った。

その鋭い光に少し我に返る。



ああ…やっぱり聞かれるよね。そう思ってました。

私は漠然とした不安を振り払うように大きく咳払いをしてから、その問いに答えた。

テルノミナ男爵の方については言い訳を考えていたのだ。

…ちょっと強引なのは気にしない、気にしない。



「ちょっとした噂を聞きまして。でも、お二方が知らいないということは、その噂も結局は噂だということでしょう。」



…え?言い訳になってないって?

いいのいいの。多少強引でも。



「その噂の内容を聞いても?」

「いえ、それはやめておきます。噂を広めることはあまり好まないので。もしその噂が本当ならきっとお二方とも今後耳にしますでしょうし。」



私が噂を広めることが好きではないということはわかってくれるだろう。私自身、引籠令嬢だと散々噂されていたことを知っているだろうから。



「ふむ。もし何かわかれば知らせればいいのかな?」

「はい。でも無理して調べたりしなくて大丈夫ですよ。」



本当は調べて欲しいけど、無理して調べると噂なんて存在しないことが知られてしまう。それに、ルーウェン様やハルムート様がこれまで生活してきた上で聞いたことがない貴族。とても怪しい気がするし、調べる過程の何かのきっかけで不意に攻略対象とヒロインが出会ったりしてほしくない。本当はテルノミナ男爵のことについて知りたいけども、あまり首を突っ込んでほしくないのも事実。



だから。

何か耳にすればそれを教えてもらえるぐらいで構わないと思っている。それに強く知りたいと主張してしまうと、逆に私が怪しまれるかもしれないしね。



「わかった。ではもう1つは?」

気温の変化が激しくなり、体調が狂いやすい季節になりましたね。

皆様もどうかご自愛ください。

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