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傾国の美男子  作者: 空乃明
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興味【ハルムート視点】

ソフィリアという女性の本音と本性を暴きたい。



ちょっとした興味本位だった。

だからあの時、体調が悪いふりをして彼女に近づいてみようと試みた。



いや、実際に体調が悪くなってしまったのは予定外だった。



あれはフェルナンド殿下の誕生日会だった。

側近候補の僕は常に殿下から見える場所で待機していた。勿論ソフィリア嬢たちが殿下への挨拶の為に並んでいるのも知っていた。殿下への挨拶を終えた後、隙を見て僕は彼女と話してみようと思っていたのだ。


だが彼女は、挨拶を終えると気づかぬうちにどこかへ行ってしまった。そこで活躍するのが目の前の女性たちである。ソフィリア嬢を見失ったのも彼女たちのせいではあるが。きつい香水の匂いをぷんぷんさせてペチャクチャと会話をしている御令嬢たち。キーキー聞こえる声とその熱を孕んだ瞳に吐き気がする。



僕はユリウスに話があるというていで、僕の左腕を掴んでいる女性にユリウスの居場所を聞いた。きっとソフィリア嬢の傍にはユリウスがついていると思ったからだ。

案の定、情報はすぐにやってきた。どうやらソフィリア嬢とユリウスは休憩室へと向かったようだ。



ちょうどよかった。

昨日はあまり眠れておらず、この恐ろしく混沌とした匂いに酔ったのか気分が悪くなっていた。静かになれるところに行きたい。

僕は彼女たちに休憩室に向かうことを伝え、ホールを後にした。



それでも何人かのご令嬢は付いてきていた。

正直鬱陶しいことこの上ない。

僕は丁重に休憩室への付き添いを断ると、漸くホールへと帰っていた。

少し怒っていたかもしれないが、正直どうでもいい。



休憩室へ向かっていると、遠くの方からユリウスがこちらの方へやってきているのが見えた。ユリウスは一旦ホールへ戻るのだろう。僕は近くの部屋に一旦身を隠し、ユリウスが通り過ぎたのを見計らって休憩室の方へと歩いた。



情報によると、左から3つ目の休憩室だったか。



どうやって部屋に入れてもらおうかと考える。

体調が悪いことにして入れてもらうか?幸い今絶不調だ。

だが、男を簡単に部屋に入れるだろうか。普通なら他の休憩室を勧められるだろうな。だが、相手は僕だ。今まで女性に何かを頼んで断られたことはない。嫌がられはしないだろう。

それに今は本当に体調が悪い。頭を使うのも辛いぐらいに。



ソフィリア嬢がいるだろう休憩室の扉の前に立ち、扉をノックする。

すると返答ではなく、なぜか彼女自身が満面の笑みで出てきた。

そしてそのまま固まっている。



きっと家族がやってきたのだと思ったのだろう。

少し面白い表情だ。思わず笑いそうになった。



僕はそれを誤魔化すように少し語気を強めて体調が悪いと訴えると、彼女はすんなり僕を受け入れてくれた。

それは彼女がお人好しなのか、相手が僕だったからかどうかはわからない。



特に害を与えるつもりはなかった。

だが、すんなり受け入れられたことにやはり今までの女性と一緒か…とも感じた。

ペチャクチャと話すわけでなく黙ってくれているのは有難いが、チラチラとこちらを見る視線が今は鬱陶しく感じた。ここに来るまでにいろんな視線に晒され、気持ち悪い女共に付きまとわれ疲れていたのもあるだろうが。

そして、ブローチではなく彼女の左手首に飾られてあるブレスレットから漂うルーウェンの魔力の気配がいやに気にくわなかった。



暫くすると頭痛が少しマシになった気がした。その頃には視線は気にならなくなっていた。

ふとまた視線を感じて前を見ると、此方を見ているソフィリア嬢と目が合った。僕がニコリと笑うと彼女がぎこちなく笑う。



いつもの女性たちと反応が違うことに少し戸惑った。

いつもは僕が笑いかけるとその何倍もの笑顔が返ってくるのに。



僕はソフィリア嬢のことをここで初めて知ったかのように振舞った。それは彼女にあまり警戒されたくなかったからだ。


本音を聞きたいとはいえ、「ルーウェンを恨んでないのか?」なんて初対面で聞かれても警戒され答えてはもらえないだろう。本音を聞くにはある程度僕のことを信頼して心を開いてもらう必要があるはずだ。


だからお礼と称して、デートに誘うことにした。そうして彼女の本心を聞き出し本性を暴いてみせようと思ったのだ。



だが、彼女は僕がお礼をすることをやんわりと拒否した。

何もしてないから、と。



僕はやはり反応が違うことに戸惑った。

いつもなら頬を染め上げて喜ぶ女性しかいなかった。嬉々として瞳を輝かせ、その後の会話は上の空になるような頭の空っぽな女性しか会ったことがなかった。それだけに、やんわりとであるが断られたのは衝撃だった。



僕の誘いを断った女性は初めてだったのだ。

彼女は変わっている。

何を考えているのだろうか。



僕は彼女に興味が湧いた。



だからほぼ強制的にデートに漕ぎつけた。

断られないよう手を回しもした。



こんなことをするのは初めての経験だった。

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