王子の誕生日会2
そんなことを考えていると、ようやく挨拶の順番が回ってきたようだ。
挨拶は一家を代表して父が行うことになっている。私は黙って跪くだけである。
「フェルナンド殿下、本日はこのような素晴らしいご生誕祭にお招きいただいたこと、並びに拝謁の悦びに与れたこと、恐悦至極に存じます。恙なく15という年月を過ごされたことに感謝を申し上げます。」
「楽に。こちらこそ急な誘いであったにも拘らず来ていただき感謝しています。デンパール家から質の良い葡萄酒等が届けられていると聞きました。」
「はい、今年は葡萄が豊作で質もよく、いいものができたと自負しております。」
どうやらデンパール家からはデンパール領特産の葡萄酒と葡萄ジュースを奉献したらしい。
殿下と父が話している間、私はじっくりとフェルナンド殿下を観察する。こんなに近くで見ることができるのももうないかもしれない。この機会に見ておかないと。そのために来たのだから。
私は凝視した。やはり1番に入ってきたのは眩いばかりの黄金の髪。そして整ったご尊顔。はい、イケメン~~!はい、語彙力低下~~。
はぁはぁ。
ずっと見続けるには心臓がもたないので、ばれないよういったん深呼吸をして再度ご尊顔を拝見する。
シャンデリアに照らされたその金色の髪は真夏の太陽のように輝いていて。碧の双眸は同じ太陽に照らされた海のように青く煌めいている。鼻梁は高く通っており、整った麗しい唇から紡がれる言葉は低く聞き取りやすい。
勿論顔だけではない。傾国の美男子だ。手足は長く肩幅は広い。身体も引き締まっており、無駄なところが何一つない。
こりゃ国の全女子が一度はときめくだろう。うむ。
ほぅっと見入っていると、いきなり横から肘打ちされた。
なんだ?せっかく楽しんでいるのに!と横をみるとユリウスが笑顔だが怒っているような雰囲気を醸し出していた。
とても器用である。
そして周りはなぜかみんな時が止まっているようにシーンとしているし、両親はやや青ざめている気がしないでもない。
クスっとどこかで聞こえた気がしたが、こんな状況では誰が笑ったのか探すこともできない。
「すみません、娘はちょっと体調が良くないようでして…。」
父はどうやらこの場をどうにかしようと、私を病人扱いし始めた。
「ああ、そうでしたか。それなら休憩室を使うといいですよ。案内をつけましょう。リスター。」
「は。」
そう言って左斜め後ろにたっていたおでこ広めの彼は、素早く後ろに控えていた使用人に声をかけている。
リスター…?リスター…。
あ、思い出した!リスター・ル・フェニルラン侯爵!この人だ!この人が殿下を裏切った人だったはずだ。今はまだ殿下の隣にいるってことは、まだ裏切っていないということだよね?いつそれが起こったのかわからないけど、まだ起こってないなら裏切りを知る前にどうにかできないだろうか…。
ソフィリアはまた自分の世界に入っていく。それを感じたソフィリアの父は早々にユリウスにソフィリアを託したのであった。
「ユリウス、頼めるか?」
「はい、大丈夫です。」
と手を引かれたときにまたソフィリアの意識が浮上する。
何がなんだかわからないうちに私はどこかに連れていかれるらしい。案内人とユリウスと共に会場を後にする。
ああ…私のイケメン観察と御馳走が…。
項垂れた私をみて、ユリウスの方から大きな溜息が聞こえた。
「あとで食べ物は持ってきますから、大人しくしといてください。」
と、案内人に聞こえないようこっそり言われれば、従うしかない。
私は知らないうちに案内された休憩室で休むことになった。
でもよく考えれば、あの視線から逃れられてゆっくり食事を楽しむことができると考えれば最高かもしれない。一応、時間は短いがイケメン観察もできたし。これからのことを考えないといけないし。
あぁ、でもエリー様やマリーちゃんに挨拶できなかったのは残念だなぁ。
ユリウスは私をソファに座らせた後、真剣に私を見ると、
「すぐ戻ってきますから。絶対この部屋で大人しくしておくこと。絶対部屋から出ないでくださいね?」と言い残して一旦会場へと戻っていった。
さすがに私も恐ろしい王城でうろうろしたりしない。
だが、しばらく待っていてもなかなかユリウスが戻ってこない。すぐ戻ると言っていたのに…。お腹はもうペコペコだ。もしかして何かあったのだろうか…?
するとトントンとノックが聞こえた。
私はユリウス(食事)が戻ってきた!と思って満面の笑みで扉を開く。
「おかえり。遅かった…」わね?と言おうとしたが、扉の前に立っている人物を見てソフィリアは言葉を失った。
なぜなら…扉の前には思いもよらぬ人物が立っていたからだ。




