箱2
この箱なんか見覚えがある気がするんだけど…気のせい?
…。ラッピングなんてどれも似たようなものだよね?そう思うも、なぜか違和感を覚えた。
私は息を呑んでゆっくりとリボンを引き、箱を開けた。
すると、箱の中には可愛らしいブレスレットが入っていた。
繊細なチェーンは二重になっており、等間隔にキラキラと光る小さな赤い石が並んでいる。とても可愛い。可愛いが上品でもあるブレスレットだ。
あれ?やっぱりこれなんとなく見たことあるかも。この箱もブレスレットも。
たしかこれはルーウェンルートで、ある一定以上仲良くなれば貰えるプレゼントだったはずだ。違和感はゲームの時と同じ箱だったからだ。いや、でもゲームの時と箱は一緒でもブレスレットの形が違う。
ゲームではチェーンが2重ではなかったし、もっと大きな赤い宝石であるルビーがついていたはずだ。似ているが違う。うん、違う。
違うと言うことはそう言うことだよね?別に仲良くなったわけではなくて、ブローチの代わりとして貸していただいたということだよね?
きっとブローチが帰ってきたらお返しするんだよね…?そうよね…?
「気に入らないか…?」
反応なくまじまじとブレスレットを見つめていた私にヤキモキしたのか、ちょっと眉を下げてしゅんとした表情で言うその姿に、心臓が止まりそうになりました!はい、死ぬかと思いました!
「そ、そんなわけがありません!」
辛うじて返事をした私は箱を閉じようとする。混乱している私はとりあえずそのブレスレットを視界から遠ざけて落ち着こうとしたのだ。
だけどすぐにその手は止められた。
はぁ、なんて綺麗な指の節。長い指に整えられた綺麗な爪。だけど、剣を握っているからか少し硬くなった掌の感触。
って、え!?ええ!?まって、私今、ルーウェン様に手を握られているわ!
固まっていると、すぐに手は離された。
あら、ちょっと残念。だけど私の心臓がもたないので良かったと思う心も半分。
すると何も言わずにルーウェン様がそのブレスレットを取り出し私の左手首に着け始めた。
そして。
「よかった、サイズも大丈夫そうだ。」
と微笑んだように見えたのだ。
いや、顔が近い!ご尊顔が近い!しかも、本当に本当に僅かであったが笑った感じがした。いや、見間違いかもしれないけど。
心臓が爆発して遠いどこかへ行ってしまいそうだ。
私はもう何も言うことができずに固まっていた。
だって仕方ないでしょう?いろいろなことがいろいろでいろいろなのよおお。
しばらく放心状態だったのは言うまでもないだろう。
ユリウスが「タルト食べないなら僕が食べちゃいますよ?」と言ったことで、我に返ることができたが。
この言葉がなかったら、私はもうしばらく石化していただろう。呼吸するのを忘れて天に召されていたかもしれない。危ない危ない。
急いで私はナイフで一口大にしたタルトを頬張る。甘酸っぱい中に濃厚なカスタードクリームがとても美味しい。おいしいのはおいしいが、どうも左手が気になる。手を動かすとシャランと擦れるチェーンが存在を主張し、嬉しいようなくすぐったいような気持になった。
それから数日間、私は何度も左手首を見たり、軽く手を振ったりして確認したのは言うまでもない。
私は思考停止したままデンパール家の屋敷に帰ってきた。どうやって帰ってきたのかはあまり覚えていない。そりゃ馬車だけども。馬車の中での会話も何もあまり覚えてないのだ。今思えば勿体ないのである。
因みにユリウスは騎士寮に戻ったらしい。
気が付くと私はベッドの前にいた。まだ頭はぼーっと惚けた状態だ。
ベッドに大の字で寝転がる。こんな姿をメリーに見られると怒られるけども今は誰もいない。
私は左手首を見る。小さな赤い石がキラリと光る。たぶんこれもルビーだろう。ルーウェン様の瞳の色…。ルーウェン様を想い出す。宝石の色に深い意味はないだろうけど…心臓の辺りが痛い。
…ユリウスを思い出してもこうはならないのに。
はぁ…。
ソフィリアはしばらくの間、今日のことを思い出しては楽しかったなぁと笑顔になったり心臓が痛くなったりしながら、ゆっくりと眠りについたのだった。




