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傾国の美男子  作者: 空乃明
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まだ帰りたくはないなぁ…。

…この店の向かいにあるカフェに行きたいとか言ったら怒られるだろうか。



だってとても甘くいい匂いがするんだもの…。絶対おいしいお菓子とかあると思うんだよね。

うーん。でも今日は誕生日プレゼントを買いに来たのだから…ダメよね。ルーウェン様もいらっしゃるし、ご迷惑はかけられないわ。

諦めて帰ろう。帰ろうと言いながらもチラチラと見てしまう。



いいなぁ。こういうところでお茶してみたい。



そう思っていると、大きな溜息が聞こえてきた。

『はぁ。』

1人にしては大きすぎるだろう。



「仕方ありませんね。行きましょうか。」



そういうと、ユリウスが荷物を持ってくれた。

ユリウスは立派な紳士にもなりつつあるのか。

姉さんはそんな成長を見るのも楽しいわけですよ。うふふ。



それにしてもどこに行くのだろうか?と思うと、甘い匂いのする方へ歩いていく。



え?え?まさか?



カランカランとドアの鐘がなる。

目の前のルーウェン様がドアを開けて「どうぞ。」と待っていてくれる。



あれ、私お姫様だっけ?と錯覚しそうだ。



それにしてもどうして私がここに行きたがっていると分かったのだろう?そんなにわかりやすかったのだろうか?

不思議に思いながらもお店の中に入る。



ああ。こんなカッコいい騎士様に囲まれて幸せすぎるし、しかも甘くいい匂いもするしここはもう天国だわ。天に召されそう。



いや、まだ天に召されてはいけない。目の前の美味しそうなタルトを食べなければ。

そう、ここはフルーツタルトのお店だった。店内でも食べることができるらしく、2階にある個室へと案内される。それにしても周りの皆様の表情よ。


この店にいたお客は勿論のこと、店員さんまでもが顔をバラ色に染めている。その瞳には熱が籠っており、その視線は2人に注がれているのがわかる。


わかる、わかるよぉ。そりゃこんな男前達が急に来たら皆ざわつくでしょうよ。けど、そのざわつきには明らかに私も一役買っていて。

彼らを見た後に私が目に移り込んできたものだから、皆が眉を寄せながらヒソヒソ話が始まったのだ。大変わかりやすい反応である。内容は聞かなくてもわかる。要約すると『何だあれは?』と言ったところだろう。別にいいのだ。なぜなら私もまだ戸惑っている。一緒にいてくださるのは大変眼福であるが、なぜ…?という疑問だけが今も抜けきらないからだ。



「姉さん?何にするの?」

「え?ええ、私はイチゴのタルトにするわ。」



危ない、また意識が飛ぶところだったわ。



「じゃあ、このアフタヌーンティーセットを3つ。タルトはイチゴのタルトとおすすめのタルトをあと2つお願いしてもいいですか?」

「かしこまりました。」と頭を下げて店員さんが下がっていく。

その顔は勿論いい色に染まっている。


そうよね、そうよね。わかるわぁ。ユリウスは成長期でどんどん大人っぽくなっていっている途中だけど、その途中の成長過程が良いというか…。前は可愛いが全面押しだったけど、今は頼もしさが出てきてかっこいい割合が増えてきているのよ。わかる人いるかしら?


それに、ルーウェン様からはもう大人の色気が漂い始めているんですもの。表情はほとんどないけども、それがちょっとミステリアスでいいのよ。そう、いいのよ。


はぁ、眼鏡かけてきてよかったわ。本当に、逆に頬を染めない人がいたら見てみたいものだ。うんうん。



「ソフィリア嬢、薔薇のブローチを見たいのだが一度外してもらえるか?」


店員さんたちの気持ちを考えていたら、いきなりルーウェン様の声がして吃驚した。

「!?え、ええ。もちろんです。」



今日ももちろんルーウェン様にいただいた薔薇のブローチを着けてきている。ユリウスにも念を押されているしね。



私は左胸の辺りに着けていたブローチを外し、机の上に置いた。

いったいなにがあるのだろうか。



ルーウェン様の表情は変わらないものの、奇怪なものを見るような、面白いものを見るような瞳でブローチをのぞき込んでいる。右から左から真正面から裏から。いろんな角度から観察し終わった後、「ふむ。」と言ってブローチを再び机の上に置いた。



え?何?何かやっちゃった?ブローチは大切に扱っているから、壊れた…なんてことはない…と思いたい。とても高価だと聞いたし、壊れていたらどうしよう。恐る恐る私はルーウェン様に聞いた。



「あの、何かありますか…?もしかして私が何か粗相を…?」

「いや、ちょっと気になることがあって。少しの間、これを預かっていてもいいか?」

「え?ええ、もちろんです。」

「そうだ、代わりに違うものを…」

「え?いえいえ、大丈夫ですよ。」


次に外出するのは王子の誕生日会だけど、さすがに王宮で何かは起こらないだろう。それにそんな高級なもの、返品できるならしておきたい。


「いや、そうはいかないかな。」

そういって、どこに隠してあったのか小さな箱を取り出した。


「代わりにこれを身に着けていてほしい。」

目の前に小さなピンク色の箱が置かれる。その小さな箱は、綺麗な白銀のリボンで結ばれている。



え?え?状況が付いていけない。ユリウスを見るも、ユリウスはさきほど届いた紅茶を何食わぬ顔で飲んでいる。


おい、お姉さまが困っているのだからた助けてよ!へるぷみー!という心の声は届かず。ルーウェン様をみるも、ルーウェン様も何食わぬ顔で紅茶を飲んでいる。



ええ、困っているのは私だけ…?


私はその小さな箱を手に取る。



ん…?この箱なんか見覚えがある気がするんだけど…?

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