訓練
「第1試合最終戦始め!」
騎士団長による合図により戦闘が始まる。
すると左奥の方で見たことのあるご尊顔が。何故か騎士の兜をつけていない彼は、漆黒の髪がさらりと揺れていた。
ルーウェン様もいたのか…と思っていると、これまた簡単に勝ってしまった。
「さすがルーウェンね。」
エリー様がまるで当然であるかのようにおっしゃった。
「ええ。ルーウェン様は魔術も剣技も本当に素晴らしいです。剣術だけだとレオ兄さまのほうが上だと聞いたけど、魔術も組み合わさるとレオお兄様でも勝てないことがあると聞きました。」
へえ。まるでチートのような存在ね。主にお顔が。汗一つかいていないその肌は、前回お会いした時よりも健康的な色味になり、さらに男らしさが上がったというか…。はぁ、かっこいい…。
来てよかった。
それからどんどん練習試合は行われていった。途中、場外に吹っ飛ばされている人や怪我をしている人もいた。騎士達は皆真剣勝負であり、勝つために戦っているという意思が伝わってくる。こちらが息をのむほどの試合がいくつもあった。それでも、レオノール様をはじめ、ルーウェン様もユリウスも順当に勝ち進んでいた。
そして準決勝。
対戦相手は、
『ユリウス対レオノール、ファスゴット対ルーウェン』
さっきまで戦う檀上が4つあったのに、今は中央に大きな檀上が1つになっている。これも魔法なのだろう。本当にすごい。
まずはユリウス対レオノール様の対戦から始まった。
レオノール様はだいぶ余裕の表情ね。それに対してユリウスは少し焦っているみたい。なぜならさっきからユリウスの攻撃はすべて躱されているからだ。彼らの打ち合いは私の眼では追いきれないが、マリーちゃんやエリー様は見えているみたい。マリーちゃんは騎士一家の娘だから慣れているにしても、エリー様は相当目がいいのかしら?それともやはり慣れている…?
「今のおしかったわ。」
「ええ、でもレオノール様はまだまだ余裕綽々ですわね。」
2人がそう話しているが、私には全然わかりせん!だけどユリウスのほうが焦っているのはわかる。止まったときに見えるレノナール様は汗一つかいていないのに対して、ユリウスは肩で息をしているように見える。
滴る汗がなんともいえない…。ごくり。どちらも…どちらも…眼福でございます。ありがとう、ありがとう。
『ドォン!』
訓練場に轟く大きな音。
え!?え!?何が起こったの!?
土埃が舞う中、目を凝らしてみると、ユリウスは訓練場の端に飛ばされていた。
「勝者、レオノール様!」
周りで観戦していた騎士達から歓声が上がる。ユリウスが立ち上がると、レオノール様に対して礼をしてから去っていった。レオノール様は何やら声をかけていたみただが、何を話しているのかこちらからはわからない。少し足を引きずっている感じはしたが、歩けるなら大丈夫だろう。そう思っていたら突然マリーちゃんが立ち上がり、走ってどこかに行ってしまった。ユリウスのところに行ったのかもしれない。後で怪我の具合を聞いてみよう。邪魔してはいけないものね。
次はファスゴット様対ルーウェン様だ。ファスゴット様はエリー様曰く、フォンラトス家騎士団副団長らしい。群青色の髪が兜から少し見えている。
対戦始め!の合図とともに激しい剣の打ち合いが始まる。素人目で申し訳ないが、圧倒的な差があるように感じる。これほどまでにルーウェン様はお強いのか。
「勝者、ルーウェン!」
ルーウェン様はあっという間に勝ってしまった。
「それでは決勝戦、レオノール対ルーウェン 始め!」
訓練場の真ん中で二人が睨み合う。緊迫している雰囲気が周りにまで伝わり、誰一人動かない。息を呑む音さえも聴こえそうなほどシーンとしている。すると、レオナール様が動いた。というのも目で追えない速さで動いたので、先ほど立っていた位置で土煙が舞っているのがわかるだけだ。気づいた時にはルーウェン様と剣を交えていた。鈍い音がいくつも聴こえる。どっちが優勢なのか私にはさっぱりだ。それでもこの目で見ておきたいと必死になって見学する。正直、2人が止まったときにしか顔は見ることができなかった。だが、その時に見た興奮しきった楽しそうな顔を見れただけでも儲けものである。ぐへへ。2人の汗が何とも美しい…。
すると突然声が降ってきた。
「やぁ。どっちが勝っているのかな?」




