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傾国の美男子  作者: 空乃明
36/93

攻略対象1

さて。この前の続きから…。



4人目はハルムート・フォン・ディスティーア。

この前のレオノール様のパーティーでちらっと見た彼はとてもかっこよかった。あの時はやらなければいけないことがあってあまり拝見することができなかったけれど、キラキラと輝く水色の長い髪と蒼と緑が混ざった瞳はとても神秘的で美しかった。


ニコリと周りに笑いかけている姿はとても可愛く、けれど既に色気があった。ご令嬢に周りを囲まれている姿は、愛に飢えている人物だとは到底思えなかった。



①愛されなかった幼少期

男好きの母と家庭を顧みない父。

彼の父親はこの国の宰相でありとても忙しかった。重い責務を全うする為、ほとんど屋敷にいなかった。それをいいことに、毎日のように屋敷に訪れる知らない男。そしてその男に寄り添っている母。両親ともにハルムートへの愛情はなく、まるで存在していないかのような振舞いだった。


いつも大きな屋敷にはハルムート一人。使用人はいるが、みな遠巻きに必要最低限のお世話をしているだけだったのだろう。周りから愛されることなく育った彼は、自分自身を愛する方法も他人を愛する方法もわからないまま成長し、歪んでしまったと考えられる。



②女性が嫌い

ゲーム内では、彼はその甘いマスクを利用して女性を誘惑し女好きだと浮名を流していた。だが実際の彼はそうではなく、女性を心から憎んでいた。


その原因は彼の母親にある。

前述の通り彼の母は結婚しているにも関わらず、時には屋敷で時には外で、多くの男性と関係を持っていた。ハルムートはそれをいつも見ていたのである。金使いは荒く、夫のいないところで多くの男達を傅かせ、侍らせ、楽しんでいた。中には既婚男性もいた。夫以外の男性を熱の籠った瞳で見つめている母親。ハルムートはそんな母親を見て、女という存在に辟易したのだった。


そして、母親が沢山の男を見つめていたあの熱っぽい瞳。その瞳を自分へ向けられることへの嫌悪感と、その瞳で自分を見つめる女性を見るたびに女性という存在が嫌いになっていった。



③カップルクラッシャー

少し垂れ目の整った甘いマスクの彼は、主に婚約者や恋人がいる女性にちょっかいをかけては、愛を試していた。自分の甘い容姿と甘い言葉で女性を誘惑し、その女性が自分に好意を向けると手酷く振るという行為を繰り返していたのだ。

何組ものカップルが犠牲になっていたと書かれていたはず。詳しくは知らないが。けれどあの容姿に甘い言葉をかけられると、ぐらつくかもしれない…と私も思ってしまう。それぐらい彼は魅力的であるのだ。



だが、そういう行動をするのにも彼なりの理由があったはずだ。

ハルムートはもしかしたら彼らの愛を試したかったのではないのかなと思う。


彼はずっと『愛なんて存在しない』という考えだった。『愛とはなにか?』いくら考えても愛されてこなかった彼自身には答えが出なかったのだろう。愛されずに育った彼は『愛は存在する』という証明が欲しかったのではないかと思う。

だから彼は、婚約者や恋人がいる女性にちょっかいをかけていたのかもしれない。


もし本当に『愛』というものが存在するのであれば、好き合っている者同士に横やりが入っても続いていくだろう。寧ろそれを彼は見たかった。そうすれば本当に『愛』というものが存在していることになるのではないかと単純に考えたのだろう。


だが期待とは裏腹に、そのようなカップルは1組たりともいなかった。

結局彼は、やはり愛なんて、ましてや「愛してる」なんて言葉はまやかしだと、戯言だと、存在しないと、カップルが壊れていく度に心から信じるようになっていったのかもしれない。あくまで推測の域に過ぎないけども。



なんにせよゲームでのハルムートは、大人になるにつれ『愛なんて存在しない』という思いが強くなっていく。

けれど心の奥底では人を愛したいという想いが燻っていて。



彼は一人で苦しんでいた。そこでヒロインである。

ヒロインははそんな彼を救いだす。真っすぐな言葉とその行動力で愛を伝え、彼に愛を教えていくのだ。

彼自身もはじめは頑なにヒロインを拒んでいたが、彼女の直向きな言動に心を動かされていく。そして彼女は自分の母親とは違うと、自分のことだけを愛してくれているのだと思えるようになっていくのだ。


そうして心を満たされたハルムートは人を愛するということを知る。

両想いとなった2人はエンディングへと入るのだ。




両想いでエンディングだと普通はハッピーエンドなのだが、このゲームのエンディングは前にも云った通りなぜか10年後の未来までみせるのだ。その未来では、他の美男子同様に彼は死んでいた。10年後ソニタリア王国は戦禍の中にいる。彼は敵国の兵から彼女を守って死んで逝く。宰相であり参謀でもあるハルムートの死はソニタリア王国にとっても致命傷であった。

そうして王国も滅んでいったのだった。恐ろしい話である。



いや、殺すなよ!

と心の底から思うのだけれど。





ふむ。




彼の心の闇を取り除くには、彼を本気で愛してくれる人が必要だと思う。それは私にはできない。私はあくまで彼の顔が好きなだけなただのファンである。しかも彼はカップルクラッシャー。私には婚約者も恋人もいない。興味を持ってもらうような美人でもない。


鏡を見る。ぼやけていて見えないが、まぁ無理だろう。私にユリウスほどの美貌があれば別かもしれないが…。



溜息が出る。



ハルムートルートのフラグにヒビを入れる方法はまた今度考えることにしよう。



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