馬鹿
あ、あれ?助かった?私たち生きている…?
一人の騎士兵がさっと私とマーガレット様の手足の紐を斬ってくれる。
私はその場でへたり込んだ。緊張が解け、身体に力が入らなくなったのだ。
「…さま!…えさま!姉さま!!」
右斜め上から知っている声が聞こえた。
「ユリウス…?」
とそちらの方へ向くとホッとした表情とともに泣きそうな顔でユリウスが抱き着いてきた。珍しい。いつも私がすると嫌がるのに。
「大丈夫?」
「大丈夫?じゃないですよ!!絶対危ないマネはするなって約束したのに!!姉さまの馬鹿!!あほ!!どれだけ心配したと…!!」
「ご…ごめんね…?」
よしよしとユリウスの頭を撫でる。撫で心地のいい銀色の髪を堪能していると、前からルーウェン様がやってきた。
でもなんだか少し怖いような…?
「ダ…ダンウォール様までいらっしゃっているのね…。」
「何を言ってるの!ダンウォール様のおかげでこの場所が分かったんだよ!」
「え…?」
「それは帰ってから話す。それよりも…怪我はない?」
「え、ええ、大丈夫です。」
ルーウェン様にもお礼を言わなければ…と立ち上がろうとするが、足に力が入らない。がくがくして上手く立ち上がれないのだ。ユリウスに肩を貸してもらおうと声をかけようとすると、いきなり体が浮いた感覚に襲われる。
気づいた時には、私はルーウェン様に横抱きにされていた。
「ダ…ダ、ダダ、ダ、ダンウォール様…!」
余りの驚きに噛みまくった。恥ずかしい。
けれどそれに意に介さず、ルーウェン様は言った。
「黙ってて。」と。
冷ややかに言われた短いその言葉に冷汗が…。これは大人しくしといたほうがいいだろう。
それにしても…うぎゃあ!近い!近いよぉ!さらさら髪が近い!綺麗なお顔が近い!筋肉が近い!
それに、それに!きっと重い!!重いから!!!降ろして!いや、降ろさないで!ああ…本音がぁ…!こんな時でも本音が出るのね!!私の欲望って恐ろしいわ…!
なんて考えながらチラッと周りを見ると、絶望の表情をした人間が4人。フォンラトス家の者達だ。
とても気になったけど、ルーウェン様がスタスタと倉庫から出てしまったものだからどうなったのかわからない。そしてすぐにフォンラトス家の馬車がやってきて、その馬車にのせられた。
その後が気になる。どうなったのだろうか?
だけど、あの状況に後ろ髪を引かれながらも、馬車の中はそんなことを尋ねることができるような雰囲気ではなかった。
とりあえず、生きて帰ることができた。
マーガレット様も私も。本当によかった。良かった…のよね?
不安になりながらも、今生きていることにほっと息を吐いた。




