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傾国の美男子  作者: 空乃明
19/93

姉4【ユリウス視点】

「あなたの侍女としてついていくから!!」



自信満々にそう言う姉に、僕は開いた口が塞がらなくなってしまいました。

姉は一体何を言っているのでしょう?僕が姉を侍女として連れて行くような人間だと思っているのでしょうか?この人は本当は馬鹿なのでしょうか?



久しぶりに本気で頭に血が上ったかもしれません。いや、逆に頭は冷えている感じがしますね。僕はあまり感情の起伏が激しくないほうだと思っていましたが、さすがにこれは許せませんでした。だからほんの少しばかり大きな声を出してしまったことは反省しております。


「はぁ?何を言っているのですかあなたは!いくら姉さまでも言っていいことと悪いことがあります!」

「でも…、だって…、あなたにこれ以上迷惑かけるわけにはいかないし…。なら侍女としてついていったほうが…。」

「ダメです!これ以上ってなんですか!僕は姉さまを迷惑だと感じたことはありません!!」


確かに迷惑だと感じたことは何度もありますが、それが嫌だと思ったことはありません。特に最近は。むしろどちらかというと姉といると飽きないし楽しいと思える瞬間も多いのです。そのフワフワと柔らかい雰囲気は一緒にいて落ち着くようになってしまいました。


「…私を恨んだりしてないの?」


は?また何か斜め上の思考をしてるのでしょうか?何を恨む必要があるというのでしょう?

確かに昔、意地悪をされたことはありますが子どもの浅知恵みたいなものですし。最近はそんなことがあったことさえすっかり忘れていました。



けれど、姉は僕が恨んでいると思っていたようです。納得がいきません。

なんだか心が重たくなった気がします。姉はいつも僕をそんなふうに思ってみていたのかと思うと。



「そんなことで僕が姉さまを恨むとでも?寝言は寝て言ってください。」

そういうと、なぜか姉は涙を流しながら抱き着いてきました。なぜ泣いているのですか!?いやいやいや、ダンウォール様の目の前ですよ!


「ちょ、ちょっと!ねえさま!離れてくださいよ!」

僕は焦って離れてといっても一向に姉は離れようとはしません。


まぁ、別に悪い気はしないんですけど。誤解も解けたみたいですし。けれど完全にダンウォール様を置いてきぼりにしています。正直気まずいのです。

そしてなぜか、速く泣き止んでほしいと姉の背中をポンポンとすると余計に泣かれてしまいました。何で!?


「ちょっと!もう…。ダンウォール様、申し訳ありません。」

「いやいや、微笑ましいよ。君たちは仲がいいね。」


その低い声にゾワッとする何かを感じた。ダンウォール様の方を見ると表情は全くといっていいほど変わっていませんでした。ですがその深紅の瞳だけが僅かに怒りと焦りを含んでいるいるようにも見えました。勿論勘違いの可能性のほうが高いでしょう。ですが、姉の涙より背中を流れる冷たい汗の方が僕の服を濡らしたのは言うまでもありません。



そうして僕と姉はフォンラトス家のガーデンパーティーに一緒に参加することとなりました。




ダンウォール様がご帰宅された後、僕は姉に聞いてみました。何故いきなりパーティーに参加したいと言ったのかということを。なぜ急に心変わりをしたのかということを。

けれど、姉はとても言いにくそうに考え込んでしまいました。いくらたっても答えは返ってきそうにありません。僕はそれを見て、姉は姉なりに何かを打破しようとしているのだろうと思うことにしました。それが何かはわからないけれど。


けれど今回は僕も一緒に参加できます。何かあればフォローぐらいはできるでしょう。ただ、フォローするにも近くにいないとできないのはあきらかです。あの時…魔力暴走に巻き込まれた時のように一人にさせないようにしないといけません。きっと義両親たちもそのように考えるでしょう。


「…。何を考えているのかわからないけれど、言いたくないなら言わなくてもいいです。だけど絶対に危ないことをしないでください。あと、僕から絶対離れないでください。これだけは約束してほしいのです。了承していただけますか?」

と言うと、笑顔で礼をいいながら私の頭を撫でてきました。


僕はもう小さな子どもではありません。こんなことをされても喜びません…。

それでも姉はにこにこと笑顔でこちらを見てくるので、自室に戻ることにしました。


自室のソファに腰を下ろし、真っ白な天井を見上げながら今日のことを思い出していました。

つい頭を撫でられたあの感触を反芻してしまったことは内緒です。


それにしてもダンウォール様のあの表情や言動は…。まさか、まさかね?あのダンウォール様が姉を…。否定したいですが、否定する材料がないのは確かです。


これからどうなるのでしょうか。誰かにご助力願いたいぐらいに混乱している自分がいます。


僕が不安一杯でパーティーを迎えることは言わないでもわかってもらえるのではないでしょうか。兎に角、姉を一人にしないこと。必ず一緒にいるように行動しましょう。


誤字報告ありがとうございます。

とても助かります。

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