43章 世界のエピローグ
そして――。
世界中の人々が、プログラム通りに死を歓待していく。
かつて人類の生きた街は、彼らの身体から溢れた血によって浄化されていった。
血の海が押し寄せる、世界の全てを飲み込んでいく。
ディストピアは紅海に飲まれ、人の生きた証を沈没させ続ける。
世界の全てが鮮血のアトランティスと化して、もう、蘇らない。
それが、この世界の終わりで、人類の終わりだった。
さようなら、人類。
……おやすみなさい、人類。
人類の想像の範疇に収まりきらない地震が、大陸ではなくこの地球自体を揺らしていた。
世界が罅割れて、マントルにまで届くかのような地割れが広がっていく。
かつて街と呼ばれた赤き海が割れ目に呑み込まれて、地球の内側へと消えていった。
空を覆い隠すような巨大津波が全てを洗い流していく。
全てを飲み込みかねないほどの水が世界を埋めていき、数多くの大陸が水没していった。
大陸そのものをアトランティスと化していくその津波は、地球を一周してもまだ勢いを弱めることはない。
神の怒りを思わせるような落雷が空から降り注ぐ。
それは流星群のように、ありとあらゆる場所を砕き、破壊していく雷の鏃。
黒雲の中からは雷だけではなく雪や雹、豪雨など、ありとあらゆるものが降り注ぎ続けていた。
寒波と熱波が交互に現れ、全てを凍らせ、全てを焼き尽くす。
氷河と灼熱の世界が何度も繰り返され、全てのものが消失していく。
……人類が抑え込んできた大災害は、あまりにもあっけなく、人類の生きた歴史を破壊し尽くしていく。
地上に生きる動物は全て死に絶え、人工物は呑み込まれ、火山の噴火によって星の光すら失い、闇の世界が訪れる。
だがオゾン層にまで達するような竜巻が火山灰を吹き飛ばし、再び光が世界に差していく。
一度は津波で沈んだ大地も、地殻のうねりによって再び浮上し、何一つない煤けた大地を露呈させていった。
何時間も、何日も、何ヶ月も――。
この星のリセットは続いていく。
全てが初期化されてゼロになる。
……だから、全てが終わった時。
地球に遺されたものは、荒廃した大地と、かつて日本と呼ばれていた場所に存在する地下シェルターだけになっていた――。
これが、世界の終わり。
そして、世界の始まり。
異世界転生が存在する世界の終わり。
異世界転生が存在しない世界の始まり。
虚構の終わり。
現実の始まり。
僕の世界の終わり。
君の世界の始まり。




